124 深呼吸した夜
とある仕事の帰り道。
蒸し暑くて、息苦しくて、おまけに体が重たい日。
よろよろと歩きながら、次の日の仕事のことを考えていました。
明日は〇時から入っている研修の準備、会議の準備、それからあのデータは明日提出締め切りだったな。おっと、配信用のメールも出さなくちゃ…。
まるで濁った水の中を歩いているようです。
私はなんて仕事が遅いんだろう…。
段取りも下手だし、ひとつの業務に時間をかけすぎてしまう…。
私は仕事をする人として、欠陥品なのかも…。
どんどん後ろ向きな考えになります。
そして、考えれば考えるほど体が怠くなっていきます。
そんな風にのろのろと歩きながら足下を見ていたら、自分の影がくっきりとでていることに気がつきました。
月が出ている…。
そう思って上を見上げたら、明るい月が出ていました。
まん丸より、少し欠けたような月。周りは雲がほとんど出ていない空。
周りを見渡すと、きれいな夜色と月光が照らす景色が広がっていました。
ごみごみした街中でも、空はおおらかに広がっているのね。
そう思うと、息苦しさが煩わしくなりました。
周りを見ると、人は誰もいません。猫すらいません。
静かでやさしい夜。私だけの夜。
マスク、はずそうかしら。
もう一度周りに人がいないかどうかを確かめて、さっとマスクを外してみました。
いちばんに鼻に入ってきたのは、夏の夜のにおい。
濃い緑とわずかな湿気を帯びたアスファルトと少しだけほこりが混ざったようなにおい。
そうそう、夏の夜ってこんなにおい。
深く吸ったら、肺まで穏やかな紺色になるような懐かしいにおい。
マスクの外の世界は、こんなに豊かな香りがしていたんだ。
涼しい風が顔をなでます。外って、こんなに心地よかったんだ。
うれしくなって、いつのまにか微笑んでいました。
深呼吸をしながら、いちに、いちに。歩きます。
空気をたっぷり吸うごとに頭の中がクリアになります。
仕事がたくさんあるときは、優先順位をつけて組み立てれば良い。
いつもより15分だけ早く出社して、まずはメールチェックをしよう。そして、メールは先に作ってしまって、上司にチェックを依頼しよう。チェックをしてもらっている間に研修準備。一度やったことのある研修だから、20分くらいで準備できるかな。研修までに会議の準備もしてしまおう。明日締め切りのデータは研修と会議のあと、夜にじっくり取り組もう。
やることやタイムスケジュールが決まれば、うんと心が軽くなりました。
明日も忙しいけれど、がんばろう。きちんとがんばれたら、週末は家でパフェを作ろう。
狭くて息苦しいと、頭の中も狭くなって整理ができないみたい。
ときにはきちんと深呼吸するのも大切ですね。
気がついたら自宅に着いていました。
夕食をとったら、今晩はサングリアを持ってベランダに出てみようかな。
欠けている、不完全な月でもこんなにきれいなんだもの。
そんなことを思ったや夏一歩前のやさしい夜でした。
今回も最後読んでくださって、ありがとうございました。
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おまけ-最近の小さな手づくり
① しおり
最近購入した、お洋服についていたタグが素敵だったので、シールやマスキングテープを貼ってしおりにしました。
ふだんの読書タイムがさらに楽しみに。
② ポーチにお花を
巾着ポーチに布花を縫い付けてみました。
やさしい風合いがお気に入りです。
中身は、最近はまっている水彩ペンです。
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