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140 物語が詰まった食器棚

晴れた日が続いて、心も澄んだ空色のような気分です。

祖母の夢を見ました。
ふわりと広がるしあわせとじわりと染み出るようなかなしさが共存する静かな夢でした。

祖母の形見としてもらったティーポットは、欠けている部分があるものの、ほぼ毎日現役で使用しています。今朝もこのティーポットでお茶をいれましょうか。

お湯を沸かしている間、食器棚をながめます。
私が持っている食器棚は、ガラス戸の部分と木戸の部分があり、ガラス戸と木戸の間が作業台になっているものです。

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作業台の部分に電気ケトルを置いていて、そこでお茶を入れています。
ガラス戸の部分にはティーカップやプレートを収納しています。
こうして見食器たちをながめていると、一人暮らしを始めたころから活躍しているものや、つい最近一目惚れをして購入したもの、人からプレゼントでもらったものなど、ひとつひとつに思い出があることに気づきます。

購入した食器たちは、使う時のことはもちろんですが、購入したときのことをよく覚えています。主に作家さんのものや雑貨屋さんで出合ったもの。100円ショップで購入したものもあります。

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* ひとめぼれディナープレート

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その時の私のお給料では購入を躊躇するような価格のプレートは、何度もお店に足を運んで悩みました。このお皿を買ったら、なにをのせようかな。オムレツでも鮭でもいけそう。少し深さがあるからパスタも受け止めてくれそう…。模様が素敵だからりんごやぶどうも…とどこまでも妄想を膨らませて。

購入したとき、お店の方に「いつも見に来てくださっていましたよね。お迎えしてくださってうれしいです」と声をかけていただきました。うれしくて、自宅に帰るとすぐに洗って果物をのせました。その姿を見て「やっぱりかわいい…!」と幸せな気持ちになったことを覚えています。
(一人でいる時って、うれしいことがあるとどうしてにこにこというよりにやにやしてしまうのでしょうね)

今朝のようにきれいに晴れた秋の午後のことでした。

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*しあわせデザートプレート

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友人からもらった小さなお皿は、白くて周りがレースの模様になっています。
誕生日の朝、大学で友人に渡されました。
「見つけたときに、ぱっとあなたの顔が浮かんだの。誕生日まであと3ヶ月もあるけど…買ってずっと家に置いていたのよ。」
それはまさに私の好みにぴったりで、友人には何度も「ありがとう」と言いました。
友人は「渡すのが、ずっと楽しみだったの」と言いました。

その愛らしいお皿は小ぶりなので、ティータイムのお供を載せるのにぴったりです。
素朴なクッキーやスコーンもこのお皿にのせたら、ぱっと華やかになります。
週末のワインタイムのときにチーズやナッツをのせても素敵です。

3ヶ月も友人の家でねむっていたお皿。
3ヶ月の間、私にプレゼントするのを楽しみにしてくれていた友人。
その気持ちがうれしくて、なんだか私にはもったいないような気もして、少しくすぐったかった20歳の誕生日のことです。

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*思い出ティーポット

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そして祖母のティーポット。
母から渡されたとき、こんなお話を聞きました。
このティーポットは、母が高校生のころに祖母がデパートで購入したものだそうです。
大きなものと小さなもののふたつ。祖母は自分のものを買うことはめったになく、デパートにも行かない人だったので、家族は相当驚いたそうです。
「よっぽど気に入って買ったのね」
母は目元をほころばせて言います。

その後祖父が事故で急逝し、家計は苦しくなりましたが、祖母はいつも気丈に仕事と家事をこなしていたそうです。大学に合格していながらも進学を断念した伯父は、働きながら英語を勉強していました。その甲斐あってか、海外での仕事が増え収入が上がりました。
ボーナスで祖母にプレゼントを購入しようとしたそうですが、祖母は
「宝物はもう持っているのよ。」
と言ったそうです。

祖母は、ティーポットを毎日使っていて、いつも食卓に出していました。
私もそのティーポットで入れた玄米茶をたくさん飲みました。
洋風のデザインですが、薄緑色のお茶とティーポットのやわらかな白色がよく合っていました。

大きなティーポットは母が小さなティーポットは私がもらいました。
欠けている部分はもらったときから欠けていたので、なんだか直す気にはなれません。


欠けている部分ですら、宝物に見えるのです。


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いただいた食器も自分で購入した食器も。
私と過ごした時間がしっかりと染みついています。
それだけでなく、その食器をくれた相手の時間も、仕入れたお店の人の時間も持っています。

食器棚だけど、ひとつひとつにその食器だけがもつ時間があるので、なんだか本棚のようです。こうやって、私は物語を集めているのかもしれません。

そう思うと、これまでの時間を愛おしく思え、またこれからの時間も
あなたはどんな物語を集めていますか。


今回も最後読んでくださって、ありがとうございました。


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