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ふむもくエッセイ

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ふむふむと思ったことと、もくもくと感じたうれしいことを集めました。
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2021年7月の記事一覧

166 緑色の午後

あまりにも強い日差し。 外はすっかり夏模様で、少し歩くだけで汗がにじむ。 家で仕事をしていても、外に出なければならないこともある。 買い物や郵便や銀行。生きていくためには、あちこちに出かけなければならない。外にいるときは、日傘とハンカチを握りしめる手もうっすら汗ばんでいる。 家で仕事をするという生活になってから数ヶ月が経つ。 数日に一度メールやリモートで話をする以外、それから家族以外とはほとんど人と会っていない。一日中誰とも話さない日もざらにある。私は人と話す時間が大好きだ

165 水中キャンディ

昨晩、水の中にいる夢を見た。ときどき見る夢だ。 海の中でも川の中でもない。透明な透明な水の中。 水があまりにも澄みきっているので、水の中ではないかもしれないと思う。 そうだ。だって、水の中だったら息ができない。 でも、ときどき目の前が揺らぐから、やっぱり水の中だと思う。 息はできるけれど、身動きが取れない。水草になった気分。 水の夢から覚めたときは、いつも指先がつめたい。 ふんわりと揺れる浮遊感が心地よい夢なので、もう一度見たいと思う。 だけど、紅茶を飲んだら夢の感覚はほ

164 夏の記憶はやさしい赤、あるいは黄色

スーパーマーケットの野菜売り場にスイカがあった。 どれも半分か4分の1にカットされていて、ラップを巻かれている。 ひと玉まるまるは置いてなくて-あっても買えないのにーすこしさみしくなった。 一切れだけパックに詰められているものがあったので、それを買った。 スーパーから出ると、むわむわとどこもかしこも暑い。時刻はほとんど夕方。みんな日傘をさしたり、つばが広い帽子をかぶっていたりして、太陽を避けている。 信号を待っている間、空を見た。 太陽が大好きだったころもあったな。