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読書note

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2014年8月の記事一覧

さいはての彼女/原田マハ

旅がテーマの短編集。たぶん、あまり合わなかった。小説なのだから、物語そのものにリアリティーがないのはかまわないのだけど、登場人物、とくに主人公の言動の端々にリアリティーを感じず、なかなか入り込めないまま、何か共有したい大事な部分をすっ飛ばされたような感覚が拭えないまま、短い物語はあっという間に着地してしまったなあ。その予定調和な結末も然り。ほかの作品はどうなんだろう。そして今知ったけど原田宗典の妹

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ポースケ/津村記久子

なぜか迷いもせず借りたくせに読み渋っていて、返却期限に尻叩かれながら読み始め、途中から妙にしっくりときて、最後には、ああ、この作品好きだわ、というところに着地した。二章が始まったときに気付いたのだけどまたも連作形式の物語。意識的にも無意識的にもこういう作品を選ぶことが多いので、いろんな人の人生を覗き見しているようなお得感を感じているのだろうか?とも思ったけど、この小説に関しては結果まったくそこを意

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想い雲/高田郁

というわけで(どんなわけだ)立て続けにシリーズ3弾読了。いつからか小松原が佐々木蔵之介で再生されるようになりました。ほかの登場人物をとくにアテ読みするわけではないし(あ、種市は笹野さんだな)、蔵之介のことが超絶好きとかでもないんだけど、小松原が蔵之介だと思うと自分が澪に組み込まれていくんだよなあ。澪の気持ちに寄り添うというよりは、澪の気持ちに混じり入るという感じ。蔵之介は口は悪いけど優しい浪士風情

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花散らしの雨/高田郁

みをつくし料理帖シリーズ第2弾。数冊借りている文庫のなかでもすっと手が伸びてしまう読みやすさとおもしろさ、安定感。今回もひとつひとつの出来事が人情味と季節感たっぷりに描かれていて満足です。登場人物とともにその出来事に一喜一憂しながら、前作よりずっとシリーズ全体というひとつの大きな物語を感じられる内容。巻頭に地図が入っているのもその一端かな。このたくさんの伏線(まあ別に伏せてないけど)がどんな風に回

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ひなた/吉田修一

吉田修一の小説は肌に合うなあと思うのは母校が同じだからかなあ。一定のリズムで淡々と描かれる凡々とした日々、けれど誰にでもある自分だけの小さなドラマとして拾い上げる要素に、ごく自然に溶け込める感覚がある。登場人物の誰かに共感できるかといったらけっしてそういうわけではないし、「誰にでも秘密がある」(これ、なんのコピーだっけ)みたいな不幸で暗い雰囲気はないものの実際みんなどこか暗い日陰のような部分もある

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ハードボイルド・エッグ/荻原浩

昔、会社を辞めて大阪に帰る先輩が「本ならええやろ」とくれた餞別が「神様からひと言」で。そこから一作くらい読んだかな? すっかり情けないけど憎めない中年男性の奮闘を描く人というイメージになっていて、この作品もそういうテイストだった。うーん。背表紙に書かれている煽りほどのスリルも涙もなく、最終的にいい話なんだけど、ちょっと、長かったかなあ。ハードボイルド小説ってこういう感じなのかな? ふふ、と笑いたく

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三人暮らし/群ようこ

一人暮らしの長い女なら一度はルームシェアくらいしてみたいと思っているような気がする。一人に飽きて、けれど結婚や同棲の予定もなくて、何かしらの変化がほしくて。本を読みながら、自分もこのなかの一員だったらな〜と少しだけ思って、それだけでもとても楽しかった。まあこの本の三人暮らしは、嫌々とか成り行きとかのものもあったんだけど。それもまた一興。どのお話も気軽に読めて、くすりと笑えて、ちょっとふやけた気持ち

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きのうの神様/西川美和

脚本家の書く小説。読む前はそんな風に思わなかったけれど、読み始めると描写がそのまま映像化され入ってくるシーンがいくつもあった。その一方でもう自分の書き方が確立している人の文章というか、読ませる気概があるというか。読む物語としてきちんと届きました。田舎独特の閉鎖的な空気感も淡々と、でも生々しく表現されていたなあ。ただ、どういう気持ちになればよかったのかな?と読後感は微妙。あとがきで僻地医療を取り上げ

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八朔の雪/高田郁

澪つくし料理帖シリーズの第一弾。周囲にファンが多いと逆に手を出しにくくなってしまうのだけど、シリーズもフィナーレを迎えたらしくいよいよ読むかー!てことで図書館で探したら運良く第一弾発見したのでした。時代小説なのに、わからない言葉も時折出てくるのに、まったく読みづらくない。何故。主人公である澪の人間としてのまっとうな美しさや、あらゆる面を慈しむような物語のていねいさがそうさせるのかな? ほろほろと涙

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ふがいない僕は空を見た/窪美澄

R-18文学賞大賞受賞作品だそうです。ぱら〜、とめくったときに目にした卑猥な言葉に、わ、外で読みづらい、と思い室内で読んだ。が、別に電車のなかで読んでも平気だったな。しっかりと読み手の想像を構築させてくれるけど、生々しすぎてうへえというわけでもなく、ただ真っ当に痛さを味わわせられた。「セイタカアワダチソウの空」という章がいちばんしんどくていちばん好きなのだけど、このあたりからどうか希望の見える終わ

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本日は大安なり/辻村深月

めずらしく本屋の文庫棚で手に取ってそのままレジに向かった本。読むのは「凍りのクジラ」以来2作目(たぶん)。結婚がテーマのおもしろそうな小説を無意識に探している節がありますね。なぜでしょうね。ひとつの舞台で起こる出来事を語り手を変えながら綴る連作なのだけど、この形式もまた私の好物でして、しかもとてもよくできてる。勢いがあるので引き込まれるし読んでいて楽しいし、最後がしっかりハッピーエンドなのも満足。

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週末カミング/柴崎友香

芥川賞受賞記念読書。昔読んだ「きょうのできごと」で何も起きない話を味わっているので、何も…起きないぞ…は想定内でしたが。ねむかったなあ。一人称が「おれ」になる「地上のパーティー」と、あと「ハムツールにわたしはいない」はわりとよかったです。

今日もごちそうさまでした/角田光代

わたしの好物、食べ物エッセイ。このエッセイは、春夏秋冬の食べ物と特別編と章だてされ、それぞれ旬の食べ物についての徒然なのだけど、何がいいって小うるさいとこがいい。あはは。偏食なのに食にこだわりがあり自分で料理もするっつう著者の食べ物に対する小うるささ。一言申したさ。めんどくさいひとだな〜!黙って食べてなよ!と明るくdisらせていただきたいレベル(そういう人ですしそういう仕事です)。いや、おもしろい

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こんなの、はじめて?/酒井順子

週刊現代の連載をまとめたエッセイ。酒井さんて「負け犬の遠吠え」の人、てイメージだったけど、最近彼女がマーガレット酒井だということを知ってなんか興奮して図書館で借りた。マーガレット酒井って、オリーブに連載持ってた女子高生ですよ!って、すみませんオンタイムじゃないです。私が知ってるオリーブは市川姉妹、オザケン、しまおまほです。まあいいや。初めて読んだけど、思っていたほど個性的ではなく、淡々とでも確実に

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