きのうの神様/西川美和

脚本家の書く小説。読む前はそんな風に思わなかったけれど、読み始めると描写がそのまま映像化され入ってくるシーンがいくつもあった。その一方でもう自分の書き方が確立している人の文章というか、読ませる気概があるというか。読む物語としてきちんと届きました。田舎独特の閉鎖的な空気感も淡々と、でも生々しく表現されていたなあ。ただ、どういう気持ちになればよかったのかな?と読後感は微妙。あとがきで僻地医療を取り上げたかったと綴ってあったので、僻地医療に対するメッセージではなく、僻地医療の存在そのものを描きたかったみたいです。映画の「ディア・ドクター」を観ていないので小説とどれくらいつながっているのかわからないし、この短編ひとつひとつを連作として捉えるには難しいんだけど、「1983年の海ほたる」と「ディア・ドクター」がいちばん好きかなあ。

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