見出し画像

ゲーム実況はゲーム業界にとって悪なのか

 昨今、YoutubeやTwitch、ニコニコなどで当たり前のように行われているゲーム実況。ストリーミング系コンテンツの一つとして、切っては切れないものとなっています。
 そんな中たびたび問題視されるのがゲーム業界への影響。より具体的に言うと、ゲームの売り上げ対する影響です。
 今回はゲーム実況がゲーム業界に及ぼす影響と、今後のゲーム実況、ゲーム業界のあり方に対する私見などを書いていこうと思います。

1.ゲーム実況とは

 ストリーミング系の動画配信サービスにて、自分の声または音声読み上げソフトなどを使って実況しつつ自分のゲームプレイ映像を配信することです。
 動画投稿、ライブ配信ともに人気のコンテンツで形態も様々。普通に実況しつつプレイするものや、RTA(リアルタイムアタック)、解説系、ネタ系(所謂クソゲーなど)、縛りプレイ系などなど、一つのゲームを取ってみても様々な楽しみ方を提供しています。

2.ゲーム実況による問題

 ストリーミング系コンテンツが当たり前となった現代において、ゲーム実況系の動画は1つのジャンルとしてもはや確立されています。
 そんな中、度々ゲーム実況の内容やゲーム実況というコンテンツそのものが問題視されることがあります。問題とされるいくつかをピックアップすると、
 ・ネタばれ
 ・著作権
 ・ゲームの売り上げへの影響
 ・ゲームの評判への影響
 ・悪意あるプレイの流布

などがあります。あくまでこれらは一部で、細かいものも含めると問題はもっとあると思います。

 最近でも以下のようなものが一部から問題視されました。
 ・あるゲームを最初からではなくエンディングの少し前からエンディングまでを配信され、ゲーム制作者が苦言を呈した
 ・あるゲーム実況配信で投げ銭による利益を配信者は得てるのに、肝心のゲームはDL数が全く伸びずなんの利も得ていないとゲーム制作者が苦言を呈した
 ・ある配信者がパブリッシャーから実況配信を禁止されているゲームの実況がしたくて、結果的にパブリッシャーへの抗議へつながりかねない扇動を自分のファンに対して行った

3.ゲーム実況はゲーム業界の毒にも薬にもなる

 一見すると、問題が多いように思えるゲーム実況ですが、必ずしもそうではないと私は思います。
 まず大前提として、著作権問題は厳守されるべきです。ゲームのパブリッシャー、ディベロッパーが実況配信OKと許可しているもの、許可を得たものに関しては、問題なく実況配信を行えます。逆にパブリッシャーや製作者が明確に実況配信などをNGとしている場合は、メジャーやインディーズに関わらずいかなる理由でも実況配信は行ってはいけません。
 それらのルールは守ったうえで、ですが、ゲームのプロモーションとしてゲーム実況はとても有用です。現に有名なYoutuberやVtuberに発売前や発売直後のゲームを実況プレイしてもらう企業案件企画の動画が多々あります。また、企業案件ではなくとも、様々な配信者から実況系動画が投稿されることは、コストをほぼかけることなくプロモーションを行える機会となり得ます。
 ただし、全てのゲームがこの恩恵を受けるわけではありません。ゲーム実況に向いているゲームと向いていないゲームがあるためです。
 例えばストーリー性の高いRPGやビジュアルノベル、アドベンチャーなどストーリーの内容にゲーム価値の比重が割かれているジャンルでは、ネタバレ=ゲーム価値の損失につながりかねないため、部分的なゲーム実況の許可もしくはゲーム実況の禁止をせざるを得ません。
 逆にプレイ自由度の高いオープンワールド系やクラフト系、遊ぶこと自体にゲーム価値が置かれているアクション系やボードゲーム、シミュレーション系など、ユーザーごとに遊び方、楽しみ方を提供できるゲームは実況配信向きといえます。

 また、ゲーム実況という文化をゲームの面白ポイントの1要素として利用したゲームなどもあります。ネタバレを防ぐため詳細は避けますが、ゲーム内のキャラクターがゲーム実況されていることに言及するメタ発言をしてプレイヤーを驚かせるといった演出などです。
 すべてのゲームに対して適応できることではありませんが、より面白いゲームを作れる可能性があるため、制作サイドはゲーム実況というものを1つのプラス要素として利用することも検討するべきだと思います。

4.ゲーム制作者はゲーム実況を念頭に置いたレギュレーションをしっかりと定めるべき

 コンテンツとして確立され、企業側もプロモーションとして利用しているゲーム実況というものを今更なくすことはほぼ不可能です。
 なので、ゲーム制作サイドはゲーム実況はされるものとして明確かつ詳細なレギュレーションを事前に定めるべきだと思います。
 先に問題の例として挙げた、「エンディング前後部分だけ実況された」などは、配信者の倫理観というか常識的に考えれば、といったものを指摘して製作者が苦言を呈していましたが、私からするとそれはゲーム制作サイドの事前の配信レギュレーション決めが甘かった、と思っています。
 ゲームを作るうえでゲームの仕様、ルール、バランスなどといったものは慎重かつ繊細に、詳細に決められています。言わばレギュレーションを決めるプロがかかわっている訳です。であれば、その延長線上としてゲーム配信に関する詳細なレギュレーションを決めるのも、もはやゲーム制作の一部といっても過言ではないと思っています。

5.今後のゲーム実況のあり方を変える?かもしれない「メタバース」

 少し前から話題に上がるようになった(気がする)メタバース。
 メタバースとは、多人数が自分の分身となるアバターを使って行動、交流できるネットワーク上で形成された仮想空間のこと、らしいです。
 あまり聞きなれないかもしれませんが、広義的には現時点でもこのメタバースは多数存在します。Apex Legendsやどうぶつの森、MMORPGといったものはこれに近いと思います。近い、と表現したのは厳密にいえば違う(かもしれない)からで、より近いのはSecond LifeやPLAYSTATION Homeなどゲームのルールという制約がない、より自由度の高い空間のことを指すらしいのですが、細かい話はまた別の機会にでもしようと思います。ここではアバターを使って遊べる仮想空間、という認識で話を進めます。

 もし、仮にこの先メタバースという文化が発展しユーザーに根付いた場合、ゲーム実況というありかたが少し変わるかもしれません。
 といっても、おそらくゲーム実況という文化自体がきれいさっぱりなくなることはないと思います。ただし、このメタバース自体の実況というのは、あまり意味をなさなくなると思います。もちろんメタバースの発展の方向性にもよるのですが、メタバースというのは自分がその空間に参加し自信で体験すること自体が最大の娯楽となるためです。では、メタバースにおけるゲーム実況とは何を指すのか。それは、メタバース内でのゲーム実況です。

 真に充実したメタバース環境が実現された場合、ストリーミングコンテンツの形態は様々なものになると思います。
 例えば現Youtubeなどがメタバース環境内で動画を視聴、投稿できるようなサービスを提供した場合は、今の現実世界とやり方はほぼ変わらないと思いますが、メタバース環境内で独自に配信されるテレビ番組やストリーミングサービスのようなものが発展した場合はどうでしょうか。メタバースの規模や環境の仕様によっては、活動の場を特定のメタバースへ移すクリエーターも出てくるかもしれません。
 また、メタバース内に独自の娯楽サービスが提供され人気を博した場合、その娯楽のプレイ映像を手軽にメタバース内で配信できたとしたら、メタバース内で享受できるゲーム実況系の娯楽の一つとなるかもしれません。娯楽サービス側がランキングなどを設け、上位ランカーのプレイ映像やインタビューなどをメタバース内の公式番組などで配信する、といったことも考えられるかも。そうした場合、特定のメタバース内で活動するプロゲーマーや有名ゲーム実況者、などといった存在が生まれるかもしれません。

 と、半分妄想で今後発展する可能性があるメタバースと絡めて、今後のゲーム実況のあり方を書いてみました。
 環境が新しくなることで、コンテンツのあり方は変わっていきます。今後どのような新しいコンテンツが生まれ、今あるコンテンツが進化していくのか。ともあれ、ゲーム実況とゲーム業界にとって、双方WinWinな発展を遂げてくれればと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?