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石灰岩のスクリーン(映画エッセー3)

2019年に日本公開された映画のベスト10。
今になって記録用のノートを見返すと、もはや鑑賞条件的に見ることの叶わなそうなものも入っていたりして、この歯痒さにこそ小さな快感を得る。
続けるってなーんて素敵、続けるってなーんて大変と歌ってたのはファースト・アルバムを出したばかりのおとぎ話だったか。

1.恋するふたり(監督:稲葉雄介、2018年製作)
2.ワイルドツアー(三宅唱、2018)
3.さらば愛しきアウトロー(デヴィッド・ロウリー、2018)
4.ドント・ウォーリー(ガス・ヴァン・サント、2018)
5.マーウェン(ロバート・ゼメキス、2018)
6.アド・アストラ(ジェームズ・グレイ、2019)
7.月夜釜合戦[16mm上映](佐藤零郎、2017)
8.7月の物語(ギヨーム・ブラック、2017)
9.嵐電(鈴木卓爾、2019)
10.喜望峰の風に乗せて(ジェームズ・マーシュ、2017)

1位に選んだ『恋するふたり』は理屈抜きにお気に入り。よく考えると切実な内容で、主演二人の関係も決して甘くない。稲葉監督と染谷氏はおそらく運命的な出逢いを果たした。ゼメキスの『マーウェン』は海外版の予告が発表された時点から鑑賞終了後まで感動しっぱなし。冗談に非ず。ゼメキスは師のスピルバーグよりも、ちゃんと勝負しながら年を取っている。『フライト』以降実写に戻ってきてから『ピノキオ』に至るまで一本も抜かりなく探究されていて、全部面白い。『月夜釜合戦』は上映前に監督が挨拶で「フィルム切れても怒らないで」とセーフティネットを張った記憶あり。劇場に久しぶりに一体感があった。
マルケルの『不思議なクミコ』、ソクーロフの『チェチェンへ』がどちらもユーロスペースだったか、35mmフィルムで見られたのが本当に嬉しい。メカスやユスターシュ、ヤスミン・アフマドの特集上映があった上半期は毎月のように幸せだった。
『ダンボ』、『テッド・バンディ』、『半世界』、『さよならくちびる』も好きだった。『オーファンズ・ブルース』見逃したのが悔しくて後にソフトを購入。工藤監督は長編2作目におそるべき作品を撮る。

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