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『また誰もいない部屋に辿りついてしまった』がバズって1年間で起こったことと、バズるためにあった方がよさそうな要素について



はじめに

 初めましての方は初めまして、2017年からボカロP活動を初めた文月フミトと申します。この記事はボカロP Advent Calendar 2023の6日目の企画に参加しています。書いていくうちに想像以上のボリュームになってしまい、念入りに添削をしていたら記事の公開がカレンダーの期日より1日遅れてしまって申し訳ありませんでした。(※1万字以上あります)

 その企画の一環なのでこれを読んでいる方はボカロPやボカロリスナーの方が多いという前提で書きます。
 その中でもボカロPをやっている方について、自分の曲がバズりたいと思ったことは活動者なら一度は思ったことがあるかと思います。

たくさんちやほやされたい(されたい)
もっとつよつよになりたい
干芋乞食もぐもぐ(おいしー)
寝て起きたら有名になってないかな
すごいつよい案件 すごいでかいコラボ
どこかでっかいピックアップ記事で紹介
コンテストで受賞採用 えへ
ななんかそういうおいしいお話ないですか?

ばずりた散歌 / きさら

 僕も実際2022年に曲がバズるまでは、活動開始から5年ほどのあいだそこまで知名度はなく、再生数は多くてもニコ動で数千再生くらいの規模のボカロPでした。そんな僕が一晩にしてバズったらその後一体どうなったのか?ということをルポルタージュ形式で、適宜Twitterの様子を引用しつつ書いていきたいと思います。
 またルポルタージュのあとは、どうやったらバズるのか?ということを自分なりに考察しましたので、主にボカロPの方向けの内容にはなりますが、そのあたり参考になりましたら幸いです。


また誰もいない部屋に辿りついてしまった

 バズったのは2022年12月19日に投稿した『また誰もいない部屋に辿りついてしまった』(文月フミト feat. 機流音・神威がくぽ)という曲です。現在ニコニコ動画では13万再生、Youtubeでは15万再生を記録しています。この曲はいろいろな経緯を経て作った曲なので、それについて順を追って書いていきます。


・2022年9月1日:ゴールデンボンバー・鬼龍院翔さんの合成音声ソフトが制作決定

 時は遡ること2022年9月1日に、合成音声ソフトCeVIO Pro(仮)がVoiSonaに改名し正式版がリリースされるともにビッグニュースが入ってきました。それは、VoiSonaでゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんのライブラリが制作されるという内容でした。

 それまでの合成音声界隈では男声ライブラリの選択肢が女声に比べて非常に少なく、特にキャラクターの知名度を考慮するとほとんどKAITOか神威がくぽの2択という状態だったので(※鏡音レンは中の人が女性のショタボイスなので男声ライブラリには数えていません)、ここで中の人の知名度が高い男声ライブラリが新たに出るということで、個人的にリリースを待ち望んでいました。

ちなみに当時から既に機流音(※まだ名称未発表)とがくぽのデュエットを考えていたようです。ツイートを掘り起こして気づきました。


・12月1日:機流音デモソング『女々しくて』が公開

 そして時は2022年12月1日、ライブラリが「機流音(きるね)」という名称であること、そしてキャラクターのビジュアルが公開されました。

そこで公開されたデモソングの『女々しくて』カバーなのですが、まずは黙って一度聞いてみてください。

ヤバくね?!?!?!?!

鬼龍院さん歌唱のゴールデンボンバー原曲も比較で聴いてみてください。(0:27~)

機流音の声質にCeVIOエンジン特有の癖は若干ありますが、鬼龍院さんの歌唱の再現度高すぎだろ!!!!

 再現度もさることながら特筆すべきは歌唱力で、これまでの合成音声ソフトにはなかった表現力…公式では「熱唱」と称されていますが、めちゃくちゃオリジナリティのある歌い方をするのが革命的だと思いました。これはデモソングの調声がすごいのか?それとも鬼龍院さんの収録とVoiSona(CeVIO AI)エンジンがすごいのか?デモソング動画ではゴリゴリに調声を書いている感じではなかったので多分ソフトがすごいんだと思います。

 機流音の完成度にめちゃくちゃテンションが上がったので、12月19日のリリース日には絶対機流音の新曲を出そうと決意しました。中の人が人なのでゴールデンボンバーの曲のような面白い曲をちゃんと作ったら絶対ウケると確信したのでネタ曲を作ることにしましたが、そこで重要な要素なのは楽曲のテーマです。

 Twitterで機流音についての世間の反応を見ていたところ、機流音と神威がくぽを関係づけた絵やツイートが複数投稿されていることに注目しました。
 鬼龍院さんはV系ボーカリストとしてGACKTさん(がくぽのCV)と師弟関係にあること、そして特にテレビ番組「芸能人格付チェック2020」で両者が非常に面白い顛末になっていたことから、キャラである機流音とがくぽにも既に強い関係性ができているのが、生まれながらにしてキャラとしての強度があるなと思いました。

これを生かさない手はない!と思い、「格付けチェック」をテーマに二人の曲を作ることにしました。

 曲のジャンルは機流音の熱唱を活かすメタル、その中でも内容の悲愴感(※笑い所)を表すためにシンフォニック要素を加えたものに決め、5日で曲のラフが完成しました。
 その後すぐにMV用のイラストを描いてくださる方を探して、6日にがくぽ好きな絵師さんで既に相互フォローになっていた紫ノ月さんという方にお願いすることができました。
 番組の内容を再現するために15枚のイラストを短期間に描いていただくという特急便の無茶振りをしたにもかかわらず、無事期限内(16日)に仕上げていただいて本当にありがとうございました。

※いろいろと息巻いていますがマジでそうなったので、人生何が起こるかわからないものですね


 そして機流音リリース前日までに曲(仮歌:KAITO)とMVを完成させ、VoiSona知声で打ち込んだデータを元に12月19日12時の機流音リリース日に機流音の調声だけ済ませて2mixを完成させ、動画をエンコーディングして、なんとか当日中に動画を投稿することができました。

※誰かが絶対先にやりそうだったので『ダンシング☆サムライ』のカバーをオリジナル曲の前、16時に投稿しました。


・12月19日 22:06:『また誰もいない部屋に辿りついてしまった』投稿

12月19日 22:06、こうして出来た『また誰もいない部屋に辿りついてしまった』(以下『誰部屋』と省略)を投稿しました。
曲を投稿して1時間程度、既に400再生と普段に比べてめっちゃ伸びてるしウケてるなと思っていたところ…(いつもは1日で1000再生も行かない)

・12月20日 0:21:鬼龍院さんに曲を紹介される

 完全に想定外だったのですが、鬼龍院さんは機流音リリース日にどんな機流音動画が投稿されていたか当日中にチェックしていたようです。ニコニコ動画には当日11件の機流音動画の投稿があったのですが、中でも僕の曲を面白く感じたのか引用RTで紹介いただけました。

※内心めっちゃ動揺しています

 フォロワー数25万人の芸能人にツイートで紹介されるとどうなるかというと…

RTといいねのつき方がヤバすぎる(12月20日20時のスクショ)

RTといいねが山のようについて、常にTwitterの通知が止まらない状態になりました。それから3日間、「毎分」ペースでRTといいねの通知が更新され続けるのは正直かなりビビりました。


 12月19日は20時にナユタン星人さんの7ヶ月ぶりの投稿作があり初動は大きくリードされていたのですが、鬼龍院さん「本人巡回済み」の効果は大きく、

12月20日1時のスクショ:6位の『ダンシング☆サムライ』カバーも僕の動画です。

12月20日1時には毎時ランキングでナユタン星人さんを抜いて1位になり…

12月20日22時のスクショ

投稿から23時間が経過したところでなんと1.4万再生を記録し、VOCALOID24時間ランキングで1位になりました。この流速はしばらく止まらず、12月20日~22日までの3日間1位をキープしました。

12月23日16時のスクショ:遼遼さんのプロセカ書き下ろし曲に抜かれて1位は終わりましたが、しばらくランキング上位にいました

これがバズ…ってコト?!


・12月20日:くりたしげたかさんに紹介される

 ニコニコ代表かつ熱心なボカロリスナーであるインフルエンサーくりたさんに紹介いただきました。


・12月20日:togetterにまとめられる

当時のTwitterの空気感がわかるまとめになっていると思います。


・12月21日:ねとらぼのネットニュースになる

 12月21日、ねとらぼのネットニュースになりました。これに関しては事前の連絡とかは特になくて記事になってから知りました。
 ここでYoutubeのリンクが貼られたことも一因なのか、Youtubeの方もグングン伸びていきましたが、鬼龍院さんに紹介されたのがニコニコ動画のURLだったので、ニコニコ動画の伸びが初動は大きかったです。12月22日にはYoutubeで1万再生を超えました。


・12月21日:ニコニコ公式Twitterに紹介される

 「ニコニコ運営のおすすめ」で紹介いただきました。


・12月23日:JOYSOUNDさんからカラオケ配信の提案を受ける

 これ本当にびっくりしました。カラオケのボカロ曲収録状況についてはDAMよりJOYSOUNDの方が強いことは認識してはいたのですが、仕事が早すぎます。当時ニコ動で5万再生、Youtubeで1.6万再生くらいの規模でした。担当者さんは普段からニコニコ動画のランキング等を細かくチェックしているのでしょうか…。
 『誰部屋』は歌詞に「機流音」「がくぽ」という商品名を使っているため、営利利用するためには(キャラクターの利用規約上)株式会社テクノスピーチさん・株式会社インターネットさんそれぞれの承諾が必要であるため、その手続きが必要であることを伝えました。

 ちなみにカラオケ収録は、そこから収益を得るか得ないかで手続きが変わってきます。カラオケで収益(著作権使用料)を得るためには、楽曲を著作権管理団体に権利信託する必要があります。収益を得なくていい配信形態であればこの手続きをスキップできます。
 著作権管理団体は大きくJASRAC、NexToneの二社があり、楽曲のすべての権利をJASRACに信託すると自分の楽曲を自ら使用する場合でも使用料を支払う必要がありますが、一部の権利をNexToneに部分信託することによってそれを避けることができます。(ちなみに楽曲の権利には11種類の項目があり、それぞれどこに権利を信託するかを選ぶことができます:これについてはかなり細かい話になるのでここでは割愛します)『誰部屋』はNexToneとJASRACに権利を分けて信託しています。

 諸々の手続きをJOYSOUNDさんにやってもらい、4月27日に『誰部屋』がカラオケ配信されました。

 その後追加で「本人映像配信」(原曲MV・原曲音源使用)についても提案があり、配信されました。

 カラオケって基本MIDIでの配信になるので、原曲MV・原曲音源で配信していただけたのは光栄です。


・12月28日:ビルボードで週間1位を取る

 たまたま集計期間と投稿日がマッチしていたこともあったのか、Billboard JAPAN”ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”で週間1位を取りました。そうそうたる有名Pを抑えて1位を取っていたのでこれまたビビりました。

他のランクイン曲が強すぎる

・2023年1月7日:CBCラジオさんから楽曲の使用許可の連絡を受ける

 1月7日に連絡があり、CBCラジオさんのボカロ番組「RADIO MIKU」1月13日の回で『誰部屋』が流れました。

 ちなみにこの回では、『強風オールバック』が大ヒットする前のゆこぴさんの曲『私の歯医者さん』も流れていました。担当者さん、先見の明、ある…?


・1月9日:ニコニコ動画で殿堂入り

2023年1月9日 23:37のスクショ

 投稿から21日後の2023年1月9日にニコニコ動画で10万再生、いわゆる「殿堂入り」を達成しました。もちろん僕としては初めてです。
 ちなみにキャラクター発売日に投稿して大ヒットしたという共通点のある『ダンシング☆サムライ』(mathru@かにみそP feat.神威がくぽ / 2008年7月31日投稿)はなんとたった3日で殿堂入りしたそうです。当時の勢いすごすぎ。


・1月13日:Youtubeの収益化が通る

 『誰部屋』投稿前はYoutubeのチャンネル登録者が800人程度の規模だったのですが、『誰部屋』でチャンネル登録者数・総再生時間数が爆増したので収益化が通る規模に成長しました。

チャンネル登録者数のグラフがすごい崖を作っている

 ちなみに当時の収益化の条件は「チャンネル登録者数1000人以上」かつ「総再生時間数4000時間以上」でした。ボカロPの視点としては、総再生時間数のノルマをクリアするのがかなり厳しいです。(現在では500人&3000時間に緩和されているようですが…。)
 音楽以外の普通のチャンネルは10分以上の動画が投稿されたりするので1動画あたりの再生時間を稼げますが、音楽チャンネルの投稿動画は1曲せいぜい2~5分程度、そのうち平均視聴時間が1分30秒くらいと仮定すると合計16万再生は必要になるからです。僕の場合それまで積み重ねていた総再生時間に加え、機流音リリースから1ヶ月ほどの間に機流音カバー曲を10曲立て続けに投稿していたので、そちらの数字も加味してこの条件をクリアした感じです。
 ちなみにYoutube収益化にあたってGoogleAdSenseの設定をあれこれして米国に税務情報を提出したり(うまくいかなくてめっちゃググった)、銀行口座の確認や現住所の確認で手紙が届いたりなんたり、プロセスがかなり面倒くさかったです。
そう思うと、ニコニコ動画のクリエイター奨励プログラムって手続きは楽なのでかなり手軽な制度ですね。


・1月26日:Youtubeで10万再生突破

1月26日 21:00のスクショ

 1月26日にニコニコ動画に次いでYoutubeでも10万再生突破しました。ニコニコ動画の伸びは初速に特化していて、1週間もすると少し収まってきたのですが(それでも普段に比べてありえんほど伸びている)、Youtubeはじわじわと着実に伸びる印象がありました。


・2月19日:ボーマス50でCDを頒布する

 2022年12月28日に、2月19日のボーマス50で機流音CDを出すことを決定しました。その時点でできていた『誰部屋』を含む機流音オリジナル曲2曲に加えて、セルフカバーを7曲入れたCDを作りました。

ボーマス当日の設営はこんな感じでした。お越しいただいた方々ありがとうございました。

BOOTHでのCD通販や、各種サブスク配信をしていますので、興味のある方はチェックしてみてください。



・4月27日:JOYSOUNDカラオケ配信

先の項目で書いたとおりに4月27日にJOYSOUNDカラオケ配信されました。

ボカロ曲のカラオケ配信情報については専用のbotがあるようでそちらからも反応いただけました。

 ちなみにDAMさんからカラオケ化のオファーはまだ来てないので、ご連絡を熱烈にお待ち申し上げております。



バズるためには

 『誰部屋』自体の大きな動きはこのあたりで終わるので、投稿から1年経ってあらためて曲を振り返った感想と、バズるためにあった方がよさそうな要素についていくつか書きます。


・いわゆる「ボカロリスナー」以外の層にリーチしたことに驚いた

 これが一番大きな感想です。『誰部屋』がバズって以降曲のエゴサを続けていたのですが、普段ボカロ曲を聴かなそうなゴールデンボンバーのファン(※主に女性)からの反響が大きかったです。鬼龍院さんのTwitterで紹介されたことも一因ですが、そもそも曲の仕上がりがめっちゃ金爆っぽいところを評価していただけていました。そのあたり頑張って"寄せて"作ったので嬉しいです。(6個後の項目でこのあたりの裏話は詳しく書きます)
 『誰部屋』に限らず、「普段鬼龍院さんが歌わなそうな曲を歌ってくれるソフト」として機流音動画をチェックしている金爆ファン(非ボカロリスナー)が一定数いて、あらためて中の人の知名度って重要だなと思いました。
 旧来のがくぽファンからの反響はもちろんあったのですが、芸能人としてのGACKTファンからの感想は見かけなかったので、機流音って結構特殊なライブラリなんだなと思いました。キャラのポテンシャルが強い。
 まあこれに関しては他のライブラリや曲には当てはめられないので特有の事情なのですが、ボカロ曲なのでキャラの力を借りるのは他の曲でも有効な手段だと思います。


・ソフトの発売日に曲を投稿することは大事

 先にも『ダンシング☆サムライ』について言及しましたが、新しいソフトの発売日は曲が一番注目されるタイミングなので、バズるには活かしたほうがいいポイントですね。他には投稿祭、ボカコレ、記念日、コンテストといったタイミングも曲が注目されるタイミングだと思います。
 機流音リリース日でなかったら鬼龍院さんは僕の曲を聴いていなかったかもしれないので本当にタイミングが良かったと思います。


・曲を投稿したら試聴動画つきの告知ツイートを出す

 イラストとは違ってTwitterで曲を聴くにはボタンを押す必要があるため、ただのリンクよりはTwitterに試聴動画がついていたほうがツイートが伸びると思います。面倒かもしれませんが毎回サビを切り取った動画を作ったほうが良いでしょう。キャラクター名のタグや「#vocaloPost」「#vocanew」あたりもチェックしている人は一定数いるようですが、文字数を食うので絶対必要ってほどではないと思います。

それにしてもヤバいインプレ数だ:本日2023年12月7日に撮ったスクショ

 フォロワー数そんなに多くないのに熱心な告知ツイート出しても意味あんのかなぁ…と思う方もいるかもしれませんが、インプレの大小にかかわらず告知はなんでもいいからしておくことに意味があるので心がけておくに越したことはないと思います。僕もいつもの告知ツイートはせいぜい1~2桁RT程度なので、まさか4000RT(+鬼龍院さんの引用先の5000RT)もされると思って書きませんでしたから…。


・Twitter以外の経路の告知も試みてみる

 Twitter以外でもYoutubeショートやTikTokなどを活用するのも一つの手です。僕はそれらを活用できているわけではないので具体的に有効なアドバイスはできないのですが、『誰部屋』に関してはなぜかTikTokでやたら伸びました。(それまでTikTokを強く運用していたわけではないのに…)

ハッシュタグを入れすぎるとだめらしいとかTikTokの運用方法がよくわかってません

 実際のところTikTokでバズったからといってYoutubeとかへの再生数の動線に繋がるのでしょうか?そのあたりの仕組みがよくわかってないので詳しい方教えて下さい。


・ネタ曲の注目度とサムネについて

 ネタ曲はなんだかんだで注目されやすいです。じゃあ注目されるにはネタ曲を書かにゃあかんのか!俺はそういう手は使いたくない!と思われる方もいるかもしれませんが、残念ながら曲のタイトルやサムネにフックがあるのとないのではクリック数が全然違うのは数多の無料コンテンツがひしめく動画サイト上に曲をアップする上での宿命です。なので、ネタ曲でなくとも曲のタイトルやサムネにフックを持たせるのは有効な手段だと思います。尖った例だと無題&目を引く不気味なサムネみたいな手法を使っている人もいますよね。

サムネの吸引力高めな当チャンネル人気動画

 どんなに曲や動画の内容が良くてもまずはサムネをクリックされなければ何も始まらないので、派手で見やすい配色にするとか文字を縁取りするとか人物の顔を大きく映してインパクトを出すとか、そのあたりは工夫の見せ所だと思います。
『誰部屋』では元ネタの動画と同じシーンをサムネにしました。

インパクトのある色と構図で、誰もいないことは一目瞭然

・曲にフックを作る

 これは曲を作るテクニックにはなってしまうのですが、タイトルやサムネ以外にも曲中にフックをたくさん作っておくことは重要です。
 さっきから書いているフックってとても抽象的な概念になってしまうのですが、例えば曲のつかみが良かったりだとか…

開始数秒で先輩から消される出オチの男の迫真のシャウト

印象的な反復フレーズを入れたりとか…

やってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったぞ

記憶に残りやすいメロディーや歌詞とか…(※めっちゃ金爆っぽくて面白いという評価多数)

そもそもネタ曲として発想やコンセプトが良い(※ネタ曲に造詣の深いボカロP・子牛さん評)だとか…

 他にも視聴者を最初から最後まで飽きさせないような作編曲上の工夫とかがあるとなおいいですね。今回ボカロ曲でよくある「サビでいきなり転調」テクニックは意図的に使いました。『誰部屋』ではやってないですが、2番でアレンジをガラリと変えたりとかの展開手法もありだと思います。
 最近の曲はイントロが短い傾向にあるとか聞きますが、歌い出しまでに30秒もあるとブラウザバックするせっかちなリスナーが少なくないらしいのも、悲しいというかなんというか…。今の時代はそういうもんならしょうがないので、受け入れるも抵抗するも作曲者のスタンス次第…という感じです。


・"金爆っぽさ"についての裏話

 『誰部屋』で高く評価されたポイントの一つである"金爆っぽさ"について、"金爆っぽいメロディー"については金爆ファンの人はみんな気づいているし、1年も経ったので時効かなと思って真実を書きますが、『誰部屋』では、金爆の『水商売をやめてくれないか』という曲のサビのメロとコード進行を、キーを変えたうえで意図的に似せて作っていました。

 パクリだ!って非難される可能性もゼロではないとは危惧していましたが、完全にパクリだとは言われないように変えている部分もあるのでおそらくリスペクトの範疇で許されるだろうと判断し、そもそも金爆自体が他の有名バンドのオマージュ・リスペクトを積極的にコミカルにやっている攻めたバンドなんで、こういうことについては本人もファンもきっと寛容だと信じて同じく攻めたことをしました。結果的には金爆ファンの方々も理解があり、「水商売」に似てることをリスペクトで面白いと笑い飛ばしてくれていたのでよかったです。

イントロから金爆っぽさ全開でお届けします

 "金爆っぽい歌詞"については、今回曲を作るに当たって参考のために金爆の曲をいろいろ聴いて分析したのですが、「女々しくて」「水商売」に代表される「自己肯定感の低い男性の情けなさが面白い」みたいなところを書いた歌詞が鬼龍院さんには特徴的に見受けられたので、『誰部屋』でもそんな雰囲気になるように"寄せて"歌詞を書いたのが要因かなと思います。
 このようにメロや歌詞が金爆っぽくなるように裏ではめっちゃ分析・研究して作ったので、そこがちゃんと評価されて嬉しかったです。


・MVは動くに越したことはないけど省エネもできる

 当たり前ですが動画として作品を投稿する以上、MVは動くに越したことはない。ですが、曲を作るだけでも忙しいのに、動画投稿のために毎回絵やMVを外注したり自分で作ったりとか、ボカロPは作曲以外でやること多すぎだろ!とお思いの方。僕もそう思います。
 
外注するには費用・手間・時間・連絡その他いろいろコストがかかりますよね(特に費用)。cosMo@暴走Pさんやピノキオピーさんやハチさんみたいに曲も絵もMVも全部自分でハイクオリティーに作っちゃうもんねみたいな超人も稀によくいますが、ボカロP全員がそんなわけはないので、どのくらいのところで折り合いをつけるかはその人次第って感じにはなってしまうとは思います。でも『グッバイ宣言』みたいにpiaproで借りたイラストに比較的シンプルな歌詞入れと編集、とかでも1.2億再生行ったりはするので、絶対ぬるぬる動くMVじゃなきゃいけない、というわけではないと思います。
 『誰部屋』に関しては、たまたま元からコネのあった絵師さんに15枚を特急便でお願いできたというので恵まれていましたが、他で自分でやったことは歌詞入れとちょっとした動きをつけるくらいのめっちゃシンプルな工程でした。ひとつ工夫したことは、1枚絵をそのまま載せ続けると画面に動きがなくなるので、わずかに拡大させていって画面が常に動いている感をつけたことです。まあ今回は元々の15枚の絵(と元になったテレビ番組)が既に面白かったというのがウケた最たる要因でしょうか。単なる1枚だけの絵の動画だったらここまで伸びなかったと思うので…。絵師さんに感謝。

機流音渾身のスライディング土下座

 俺は絶対に動画に労力をかけたくない!という人は、無色透名祭とか1枚絵動画投稿祭とかのイベントもありますので、そういう機会を活用してみるのはいかがでしょうか。


・実際いつ何がバズるかは神のみぞ知る

 ここまで書いたことはバズるために"あったほうがよさそうな要素"でありますが、"絶対に必要な要素"ではありませんし、実際いつ何がバズるかは神のみぞ知るので、すぐに伸びなくてもめげずに地道・マイペースに活動していくのが一番精神衛生上いいと思います。曲を作って必ずしもバズるとは限りませんが、曲を1曲も作らなかったら未来永劫絶対にバズりませんよ。
 ただ『誰部屋』に関してはここまで読んでいただいた方なら分かる通り、ソフト発売前から計画的かつ用意周到に狙ってバズりに行きましたので、その目論見と努力は実ったと思います。古参になりませんか?


・まずは成功体験を積み重ねる

 ガチ勢ボカロPの方は実力でボカコレで上位入賞を狙ったり、マジミラやプロセカなどの大きな公募を気合で受かるとかをするのがバズるために一番手っ取り早い気もしますが、当たり前ですがそれらは目標が高すぎて多くのボカロPにとってあまり現実的ではないので、気合を入れすぎないほうが身のためだと思います。
 公募だとマジミラやプロセカは注目度と倍率が激高なので、まずはマジミラ以外のpiapro公式コラボとかちょっとマイナー目のライブラリの公募とかの比較的倍率低めなところはちゃんとチェックすれば結構頻繁に開催されていますので、そこを狙ってみるのは一つの手です。
 自分の個人的な話にはなりますが、2022年10月にpiapro公式コラボ「一緒に作ろう!「初音ミク」新作ゲーム第4弾 みんなのBGM大募集!!」で楽曲採用となって、翌年6月に発売されたNintendo Switch用ゲーム『初音ミク 不思議なホシと願いのかけら』に自分の曲が収録されたりしました。

"初音ミク公式コンテンツ"に自分の曲が使われているのはとても感慨深かったです

2023年3月にはpiapro公式コラボ「HAC×SNOW MIKU “ポップス”楽曲」で最優秀賞こそ逃したものの、追加で制定された「社長特別賞」をいただけたりもしました。
 ここまでだとただの自慢話のように思えるかもしれませんが、それ以外にも2021~2023年はプロセカNEXT・マジミラ・ボカロ公式系公募などに積極的に応募していてて、裏では相当数落ちています。が、少しでも確実な成功体験と評価を積み重ねて自己肯定感を上げていくことは、制作のモチベーションを保つうえでとても重要だと感じています。

 ちなみに『誰部屋』以前にYoutubeチャンネル登録者数が少し伸びた転機があったのですが、それはプロセカNEXTに落選した曲がニコ動ではなくYoutubeでジワ伸びしたことがきっかけだったので、公募落選もただ悪い話ではなく、応募・投稿することだけでも注目されるので意味があると思います。

2021年4月ごろの転機:それまでチャンネル登録者200人いませんでした

ネタ曲ならニコ動の方が伸びやすそうな印象ですが、Youtube2.7万再生に対してニコ動3000再生、一晩のバズではなくジワ伸びしていった結果なので、どこで何がウケるかわからないものですね。


・最終手段としての転生について

 あまりにどうしようもなかったら転生も確かに一つの手ではありますし、転生してから有名になったボカロPの例もあるにはあるのですが、あなたの今の名義の曲を好きで聴いている人はきっと世界のどこかにいるとは思うので、個人的に転生はオススメはしません、が、止めはしません…。
 転生はあくまで最終手段だとは思います。転生してもまたバズらなかったらもっと悲しいことになりますから…。

才能がないからチェンジ またリセット
頭悪いからチェンジ またリセット
人生の攻略法 幸福の必勝法 
見境ないね 「自分」が消えちゃったの?

くりかえし くりかえし 生まれ変わり
山積みの亡骸の上でダンシング
リインカーネーション リインカーネーションの悲痛な叫び
愛して 愛して 嫌 
くりかえし くりかえし 生まれ変わり
きらめく似たり寄ったりのストーリー
リインカーネーション リインカーネーションの果てのオーバーキル
どうして どうして

転生林檎 / ピノキオピー

おわりに

 諦めずに努力していければいつかはチャンスが来る、夢が叶う…かどうかはわからないし、得てしてチャンスが来ないまま終わってしまうことも少なくないのがクリエイターに関する問題の難しいところではありますが、繰り返し言いますがマイペースにやっていくのが一番精神衛生上いいと思います

 ここまで長文を読んで頂きありがとうございました。ご意見・ご感想などありましたらTwitterなどへどうぞ。
https://twitter.com/fumito_fumizuki

 ニコ動のフォローやYoutubeのチャンネル登録等していただけますと大変喜びます!

 締めは好きな歌詞を引用して終わりにします!

死ぬんじゃねえぞ お互いにな!

ロキ / みきとP


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