天を仰いだ福藤豊。現役最高ゴーリー、連覇を逃す。



一年に一度、NHK・BSの電波で試合中継を見ることが出来るアイスホッケーが全日本選手権だ。12月12日、準決勝の2試合をテレビ画面の前で堪能する。今年の開催地は青森県八戸市のリンク、8年振りだそうだ。

15時より放送されたのはH.C日光アイスバックス対ひがし北海道クレインズのゲーム。2連覇を狙うアイスバックスのゴールを守るのはベテラン福藤豊だ。日本人で唯一、北米プロアイスホッケーリーグ・NHLでのプレー経験を持ち、今なお、日本アイスホッケー界のシンボル的存在。その福藤をテレビで観られることに、贅沢さを感じる土曜日午後だ。

2000年代初め、「Number」誌においてその存在を知る。当時、オリンピック特別強化指定選手としても紹介されていたことで、プレイヤーとしての能力がどれほどのものか、想像を膨らませた。確か、アイスホッケーを題材にしたTVドラマが放送されていたのもこの頃であり、少しばかりこの競技にもスポットライトが当てられていたころだった。

実際にプレーを観たこともある。2012年秋、日光で行われたソチオリンピック予選。日本代表のゴールマウスに立った福藤は初戦のポーランドを完封、日本は2-0で勝利した。守備を支える存在感の重みは、別格だった。アイスホッケーにはゴーリーの「ビッグセーブ」が、試合の流れを引き寄せる大きな要素を持つと言われる。この時の予選では、福藤が多くのビッグセーブを披露し、代表チームを牽引した。

それでも日本代表は次戦の韓国には辛勝したものの最後のイギリス戦に敗れ、地元開催の2次予選で、敗退という、屈辱的な結末を迎えている。

2017年の平昌五輪予選、昨年の北京五輪予選も、日本代表の守護神は福藤だった。五輪本選には届かなくとも、元NHLゴーリーは日の丸を背負い続けた。世界では強国とは呼べず、日本国内でもマイナー競技の域から外れることのない日本のアイスホッケーの象徴である福藤豊に、ファンは喝采を送る。

市民クラブチーム同士となった2020日本選手権準決勝は、拮抗した試合展開が続いた。この試合でも、再三に渡り鮮やかなセーブを繰り広げるも、1対1で迎えたオーバータイム、ラトビア代表・ゾルマニスが福藤からゴールを奪い、クレインズが勝利。

この試合の解説を務めた現日本代表監督、岩本裕司は「今季最高のゲームだった」と感想を語っている。だが、アイスバックスは連覇の夢が消え、日本人現役最高のゴーリーはまた一つ、敗北を味わった。(佐藤文孝)

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