佐藤文孝

佐藤文孝

最近の記事

2022年、大谷翔平の脅威、再び

昨年、日米の野球界においての主役ともいえる活躍を見せたのが、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平です。投打の「二刀流」がメジャーリーグを席巻し、先発投手として9勝、打者としても46本塁打でタイトルを最後まで争いました。オールスターへの出場や、極めつけは満票での選出となったアメリカンリーグMVPなど、米球界に、近年にないインパクトを与えたシーズンとなったと言っても過言ではないでしょう。 また、プレーはもちろん、大谷選手のキャラクターがこれまで以上にフォーカスされた一年だったこと

    • サッカー日本人選手の海外移籍について

      新年早々、欧州で活躍する日本人選手のビッグニュースが飛び込んできました。イングランドプレミアリーグ、ウォルバーハンプトンに、日本人プレーヤー、川辺駿選手の加入が発表されました。先日までスイス1部リーグ、グラスホッパーの一員だった26歳の川辺選手、ウルブスの愛称で知られるイングランドの古豪へと見事なステップアップを果たしたのです。 今後は、5月のスイスリーグが終了まで、期限付き移籍の形でグラスホッパー所属となるものの、来シーズンからはウルブスで本格的に現世界最高峰リーグである

      • 北京冬季五輪を「平和の祭典」実現のための大会に

        2月4日に開幕する北京オリンピックまで1カ月となった。 中国国内での人権問題により、米国をはじめ数カ国が「外交的ボイコット」を表明、また一昨年より続く新型コロナウイルスの影響もあり、開催中止などを求める声も少なくない。観客に関しても海外客を受け入れないことは昨年までに発表されており、また開会式を一カ月後に控えた現在、国内在住者向けの観戦チケットの販売方法も発表されていないという。基本的に無観客となった昨夏の東京同様、通常通りの観客受け入れも行われない可能性も残っており、再び

        • 令和3年名古屋場所 失われた土俵上の風景

          最後まで異様な雰囲気に包まれた場所となった。そして、その「異様さ」は、唯一人、綱の重みを背負う力士から発せられていた。 大相撲名古屋場所千秋楽、結びの一番は9年振りの全勝相星決戦となった。横綱白鵬対大関照ノ富士。今場所、6場所ぶりに千秋楽まで土俵に登り続けることとなった白鵬。対する照ノ富士は3場所連続での賜杯が目の前だ。負傷明けで進退を懸けていた満身創痍の横綱と、番付最高位昇進も確実となり、勢いに乗る大関。多くのファンは勝負の結果を想像するのは容易かったかもしれない。 し

        2022年、大谷翔平の脅威、再び

          25年前の五輪での衝撃 伝説のチャンピオン、モハメド・アリ

          1996年7月19日。アトランタ五輪の開会式、聖火最終点火者として、聖火台最上段の暗闇の中から、一人の黒人男性が姿を現した。 「モハメド・アリです」 右手に聖火のトーチを持ち、左手が揺れ続けている。最終点火者の名前を伝えるNHK山本浩アナウンサー(当時)の実況の声からは、異様な重みが感じられたような気がした。 通算61戦56勝37KO、5敗。後年、偉大なるヘヴィー級ボクサーの軌跡を辿るVTRなどをみる限り、どこでどんな負け方をしたのかと思えるほど、「5敗」の文字から違和

          25年前の五輪での衝撃 伝説のチャンピオン、モハメド・アリ

          名将たちの英断 人間としての「決断」はこれからも。

          EURO2020の開幕が今月12日に迫っている。すでに各国とも代表メンバーが発表されており、熱戦に向け、想像が膨らみ続けているファンも多いだろう。 先月末に発表され、「サプライズ」として伝えられたのが、フランス代表デシャン監督の『決断』だった。今回のEUROでも優勝候補のフランスを率いるデディエ・デシャンは、2015年にチームメイトを恐喝し逮捕され、代表を追放されていたカリム・ベンゼマをEUROのメンバーに招集した。キリアン・ムバッペなど豊富なタレントを擁し、2018年ロシア

          名将たちの英断 人間としての「決断」はこれからも。

          止まらない新潟、オレンジと青の躍進

          8勝2分け。開幕から10節を終えて未だ負けなし。今シーズンのアルビレックス新潟の序盤での成績を予想できたファンはどれほどいただろうか。初めてJリーグに参入した1999年以降、大型連休を前に、ここまでの躍進を続けているシーズンは初めてだ。 これまでの戦いの中で各ポジション、ほぼレギュラーが固定されてきており、その中でもチームの「核」として戦術の中心を担う選手が何人もいることが頼もしい。 今季から新潟に復帰した千葉和彦の存在感は絶大だ。DFラインに位置し、チーム全体をコントロ

          止まらない新潟、オレンジと青の躍進

          プロ野球 開幕から1週間後の先発マウンド。

          開幕から1週間が経過したプロ野球。4月3日の金曜日のナイトゲーム6試合は、各チーム先発投手に興味深い名前が並んだ日となった。 九つの球団がローテーションを一回りして、開幕マウンドに登ったエースの登板となった。二度目の先発登板となった各チームの『顔』は、それぞれが好投を繰り広げた。 ヤクルトの小川、広島の大瀬良は共に試合終盤まで相手打線を0に抑え、ゲームを作りチーム、そして自身の勝利に結びつけている。また、両投手とも、打線の援護がままならない中で接戦を投げ抜いた、エースらし

          プロ野球 開幕から1週間後の先発マウンド。

          サッカー日韓戦 日本の快勝も、「次戦」に向け、眠れる虎は牙を磨く

          日韓戦。久しぶりに、その言葉の響きがサッカーファンの心を揺らした。 3月25日、日産スタジアムで国際親善試合、日本代表対韓国代表の試合が行われ、ホームの日本がおよそ10年ぶりとなったベスト(海外勢を含んだ)メンバー同士のAマッチを制した。 前半17分、フル代表初出場となった山根のゴールで先制すると、その10分後には鎌田大地、さらに後半38分にはセットプレーで遠藤航がゴールを決め、3-0で日本が勝利を手にした。 今回のゲームでキャプテンを務めた吉田麻也は「日韓戦はある意味、W

          サッカー日韓戦 日本の快勝も、「次戦」に向け、眠れる虎は牙を磨く

          二年目の飛躍へ、奥川恭伸に求められる勇気

          「悔いが残り納得が行かない」 3月14日、オープン戦で初先発した東京ヤクルトスワローズ奥川恭伸の試合後のコメントだ。予定していた3回を投げ切る前にマウンドを降りたことへの、正直すぎる感想を吐露している。 初回の立ち上がりで3失点、その後は2回を3人で打ち取るも、3回は安打と四球でランナーをためたところで交代を告げられている。あとアウト一つがとれず、本人のみならず観ている我々ももどかしさが残る結果となった。 この日浮き彫りとなった課題は、ボールのキレやコントロールではなかっ

          二年目の飛躍へ、奥川恭伸に求められる勇気

          チケットと熱狂を求めて。2008年真夏の北京(後編)

          北京滞在3日目、お昼頃。「我欲棒球 券」そう書かれた紙を掲げ、野球競技会場周辺に立っていた自分に、大会スタッフと思われる女性が歩み寄ってきた。「すぐに紙をしまい、立ち去るように」そう、声をかけられるものだと身構えていたが、英語で発せられた言葉は、意外な内容だった。 「あなたは日本人ですよね。(転売屋は)きっと、あなたに対して、高い値段で売ろうとします。今はまだ、チケットを買わないほうが良い。夕方、試合開始前に来れば、より安くチケットを購入出来ますよ」 聞き取れた内容は、こん

          チケットと熱狂を求めて。2008年真夏の北京(後編)

          チケットと熱狂を求めて。2008年、真夏の北京(中編)

          メインスタジアム、北京国家体育場は、「近寄ることも有料」と、宿の女主人から聞いていた。大会の目玉の一つでもあった『鳥の巣』を目の当たりにすることはあきらめ、野球競技観戦へ照準を絞る。 宿では、日本人男性二人と同部屋となり、それぞれと五輪への想いなどを話した。年下の大学生の男性は既にサッカー日本代表のチケットを入手したと聞いた。自分も野球を観たいと伝えると、学生さんも野球好きらしく、しばらく野球談議に花が咲いた。もう一人の男性は、自身も水泳選手で鳴らしており、競泳を観に行くと

          チケットと熱狂を求めて。2008年、真夏の北京(中編)

          チケットと熱狂を求めて。2008年、真夏の北京。

          夏に開催予定となっている東京五輪2020。それ以前に、同じアジアで行われた夏季五輪は2008年の北京。「Beigin 2008」が、自分にとって、初めて現地で観たオリンピックだった。 北京への航空券は6月頃に購入していたものの、競技の観戦チケットは持たずに、現地へと向かった。当初は、街中で感じるであろう大会の雰囲気を味わえるだけでも、と思いつつも、心のどこかで観戦への淡い期待も持ちつづけていた。 大会が開幕して間もなく、北京国際空港に降り立つ。巨大、という言葉でも足りない

          チケットと熱狂を求めて。2008年、真夏の北京。

          10年ぶりに復帰の千葉和彦。2021年アルビを導く「光」として。

          今季より、アルビレックス新潟に一人のベテランDFが加入した。背番号35の千葉和彦だ。名古屋グランパスより昨シーズンオフに移籍、実に10年ぶりの新潟復帰となる。 すでに、その陽気なキャラクターでメディアに頻繁に取り上げられており、キャンプ中のチーム内でもムードメーカーとしての役割を全うしている様子。これまで、長年にわたっても某サッカー番組において、ピッチ外の表情やチームメイトとのコミュニケーションが、名物コーナーの中心として話題となっていたほどの、J屈指の「エンターテイナー」

          10年ぶりに復帰の千葉和彦。2021年アルビを導く「光」として。

          レジェンドの足跡 木村和司と日本サッカー。

          某スポーツ紙で連載が行われている、木村和司のエッセイが面白い。 これまでの半生を本人の言葉で回想する内容だ。サッカー好きとして、中身の濃さもさることながら、文章の中で自身を「わし」と呼んでいることも、引き込まれる要因の一つだろうか。 日産横浜マリノス(当時)の背番号10。Jリーグ発足時には既にベテランとして知られ、それでも屈指の強豪クラブの主力という認識が強かった。他に、井原正巳、松永成立、水沼貴史、勝矢寿延等も名を連ねていて、ユニフォームのデザインも魅力的だったこともあ

          レジェンドの足跡 木村和司と日本サッカー。

          天才・武藤敬司、薄れぬ存在感と、団体の未来。

          入場時に流れた『HOLD OUT』が、ビッグマッチの雰囲気をさらに際立たせていた。 2月12日のプロレスリングNOAH日本武道館大会で、武藤敬司が潮崎豪を降し、三大メジャー団体のタイトル制覇となるGHCヘビー級王座を獲得した。試合時間は29分32秒、フランケンシュタイナーで3カウントを奪っている。団体の至宝でもあるベルトを手にしたことで、華々しいキャリアに、新たに勲章が加わったことになる。 さらにサプライズが続く。その3日後、新チャンピオン・武藤敬司のNOAH入団が発表さ

          天才・武藤敬司、薄れぬ存在感と、団体の未来。