激しく、華々しいグランプリの記憶と未来への期待
某無料動画サイトで、過去のスポーツのシーンなどを観る機会が多い。
その中で、フォーミュラワン(F1)の1992年モナコグランプリの動画をみつけた。これまで、同レースのダイジェストやハイライト映像はあったものの、フジテレビの当時の中継そのものの動画は初めて。ラスト数週の「セナvsマンセル」で永遠に語り継がれるであろうグランプリを、改めて番組オープニングから観ることに。
当時のグランプリ中継は番組冒頭に、担当アナウンサーの短いコメント共に、そのサーキットの周辺の景色や街並みなどの映像が映し出されるところから始まっていた。さながら、「旅番組」の雰囲気も味わうことが出来、中学生時の自分にとって、海外の情報などに接することが出来る貴重な機会だったように思える。この時のモナコGPでは、グランプリ50回記念レースだったこともあり、モナコという国の歴史の紹介も行われている。
中継でお馴染み、柔らかな語り口で知られた名解説者の今宮純さんはレース前、J・アレジの優勝への期待をコメントしている。まだ、「若手」とも称されていたフェラーリのエースドライバーは、予選4位の好ポジションを獲得していたこともあり、このレースの優勝候補の一人として伝えられていた。
そして、レース。そのアレジは、中盤、もう一人の若武者であり「怪物」M・シューマッハとヘアピンで接触する程の接近戦を繰り広げ、壮絶にリタイアしている。ただ、それ以外は、驚くほどオーバーテイク(追い越し)といったバトルのシーンが無かったことに気づく。あの、終盤のセナとマンセルによるデッドヒートが始まるまでは極めて「退屈な」レースだったことが改めて解った。
テレビ中継そのものの動画であり、実況や解説、リポートの一言一言も聞けたため、レースの雰囲気や、この年あまりにも明確となったウイリアムズルノーとマクラーレンホンダの力関係も振り返ることが出来た。
当時は真夜中の中継を録画し、翌朝、登校前にVTRを観た。
この年のモナコGPで、この時代の主役が誰であるか、はっきりと決定付けられたと感じたことを憶えている。
現在では、動画配信サービスで観ることが出来るが、未だにレースそのものをスタートからゴールまでをみたことはない。ここ、数年はレース結果やチャンピオンなども興味の範囲から外れてしまっている。ただ、来年は現在下部カテゴリーで活躍している日本人ドライバー、角田裕毅の参戦の可能性が高く、そして事実上ホンダのF1最後のシーズンとなりそうだ。また、既に来年のグランプリカレンダーが発表されており、はじめてサウジアラビアでの開催が決まっている。
1990年代とはチームやマシン、そしてレースそのものも大きく変わっているが、競技の本質は変わることはない。豪華なグランプリのエッセンスや「旅行気分」を味わうべく、現代のフォーミュラワンのレースもPCのモニターを通じて、触れてみようと思う。(佐藤文孝)
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