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丁寧な1日

珍しく、”あり得ん”早起きが2日続いたからか、丁寧な1日を過ごしてみようと思った。

でも、丁寧な1日って何だろう。
というか、丁寧な1日を送ってる人は普段何をしているんだろう。

ダメだ。無印良品で全身を固めた人が無印良品以外の家具や服を断捨離してる映像しか浮かんでこない。

キーワードは「清貧」、なのだろうか。

歯茎から血がでるほど激しく歯を磨きながら、頭のなかでいろいろ「清貧」の持つイメージやワードを結びつけた僕は、2年ほど放置してある汚れきった消しゴムを真っ白にしてみることにした。

しかも公園の芝生に寝そべってだ。
更には、外だというのに消しカスをちゃんと持って帰る丁寧さを大事にすること決めた。BGMもドビュッシーだ。凄いぞ、なんだか丁寧のお節箱みたいじゃないか。

丁寧な人の消しゴムは常に真っ白に決まっているのだからやるしかない。

ノートの白紙にある程度消しゴムを擦り付けると、ページの表面層が削れるからか、消しゴムの減りがとたんに悪くなることに気がついたあたりで腕が痛くなってきた。

コレは、予想をはるか上回る面倒くささだぞ。時給が発生してもおかしくないレベルだ。1,100円。いや、1,500円は欲しい。

なにか建設業にも同じくらいの疲労が腕にたまる仕事や作業もあるのだろうか……。
ダメだ、辛い。親方、帰らせてくれ。熱が37度ありそうなんだ。借りてたアパートも返す。

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常に真っ白な親方の消しゴムにリスペクトを感じながら僕は施工をストップした。消しカスも、風に吹かれていった分はしょうがない。諦めることにする。とはいえ、上画像の通り、僕のなかでの及第点はクリアした。満足だ。

ともかく、沖縄と言えど11月だ。
半袖短パンで風にさらされては寒い、とりあえず歩こう。

さて、丁寧な人のご褒美とはなんだろうか。時給1,500円は下らないと書いた通り、僕にも500円くらい自分に丁寧なご褒美があっていいはずだ。

「丁寧な人の家には『よつばと!』全巻が揃えて無印良品で買った棚に置いてあるに決まっている」。

マクドナルドで買ったポケナゲ大をパクつきながら「『よつばと!』の最新刊を買おう」と、ピンときた僕は那覇のジュンク堂に舵を取ることにした。

ついたはいいものの、コミックコーナーの場所が見当たらなかったことにふてくされていた僕が児童書コーナーに置いてあった昆虫図鑑を立ち読みしていたときのことだ。
「カマキリの目は夜に黒くなる」ことを学んだあたり、通りがかった書店員さんがマンガコーナーに案内してくれることになった。

確かに見たことない。うん、この表紙は見たことない。たぶん。

『よつばと!』の表紙イラストと内容が全く噛み合ってない僕は、この巻の表紙の『よつばと!』が最新刊かどうかこそ不安だったが、値段が410円ではないことは知っていた。

そう、『よつばと!』は700円(税別)。
僕は、マンガの相場を昔のジャンプコミックスの単行本に設定している節があり、未だに抜け出せずにいる。
32歳になっても、ついマンガをジャンプコミックスより高いマンガとそうでないマンガとに分けてしまう癖が治らない大人だ。

コレでは心的時給を上回ってしまうが購入。
丁寧な人はきっと、おおらかなのだ。

帰り道、宗教勧誘(?)の方と、モヒカンが口論している光景が横目に入る。おいおい、路上に荒れたがスレがたってるじゃんか。めんどうごとは嫌いだぜ。

僕は「相手の正義を奪うことを正義だと思っている同士のバトルだ!」なんてカッコいいことを考えているうち、いろいろと大袈裟なことまで考えてみたりなどした。
さまざまあって、いわゆる幸せとは催眠術のようなモノだな。と、思いついた。

今日の話ではないのだけれども、僕は催眠術にかけられことがある。
正確には、かけられにいったから、かかったのだ。

「ハイライトのパッケージを見ると条件反射で大爆笑するようにな〜れ〜!お〜れ〜!」と、強く念じたから筆記体でプリントされた「h」のウェーブがツボに入ったのである。

催眠術とか、お化けとか、異次元とかなんでもいいのだけれど、ジャンプコミックスのテーマになりそうな類の怪奇現象は、多ければ多いほどあった方が楽しいに決まっている。
だって意味もわからずハイライトに爆笑できるなら儲けものじゃないか。

催眠術はあると思えばある、ないと思えばない。不思議なものなのだ。

ともかく、キッカケがあって、そこに触覚を向けるからこそなのではないのではないか。

幸せなことなど普段は質問されない。
失って初めて気が付く。なんて言われる通り、感じるキッカケは…普段ピントが合わない解像度で、生活のなかに実は眠っているモノなのではないだろうか。

はなまるうどんで、かけ(小)をすすっている僕に天啓めいたモノが落ちてきたと思ったら、途端に満たされた気持ちになってきた。

僕の場合は丁寧な生活であっただけで、普段取らない選択肢を取り続けることは、普段は振り返らないポイントを発見する”いとぐち”になるかもしれない。

そうなら、とても簡単だ。今日のいろいろな発見は、僕が普段とても満たされていることを再認識させてくれるモノでもあった。
特別なことしなくたっていいし、ましてやお金だってかけなくていい。

思えば『よつばと!』だって、毎日新しい体験をしてるからこそ日常のなかに幸せを見つけている。
5歳児の視線の解像度でなければ、日常のなかにおもしろなど発見できないようになっているだけなのかもしれない。

久しぶりのサウナ後の多幸感も手伝って、僕はコレまで以上、更に適当に生きることもできるはず。と、調子の良いことまでを考えはじめた。

僕の毎日は普段思っている以上にずっと満たされている。

2日締め切りを遅らせてある仕事は進まなかったものの、お釣りがくる大発見だ。丁寧な人はきっと、セコセコなどしていないだろう。

今夜はまた歯茎から血が出る勢いで歯を磨いてゆっくり寝ることにする。
丁寧な人は、今日買った『よつばと!』を明日読む余裕があるからだ。

それに、今日使ったお金の総額など明日どうせ覚えていない。
明日の僕は何かタダで『よつばと!』を読めることに、お得な気持ちになれるかもしれない。おわり。


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