アイドルの顔がみんな同じに見える病
きのう、「なぜひとの顔を覚えられないのか」という話を書きました。
でもほんとうは、違うことを書こうとして、話の流れからあの話になったのでした。きのうほんとうに書こうとしたのは「アイドルの顔がみんな同じに見える病」です。
若手の女優さん、あるいはアイドルの方々。ここでもぼくの「ひとの顔の覚えられなさ」は遺憾なく発揮されていて、たとえば先日ラブレター婚が報じられた人気女優さんも、もちろん名前は存じ上げていますし、ぼんやりと「こんな感じのひと」というイメージはあったのですが、写真と名前がセットになった報道の洪水によってようやく、その相貌を記憶できたところでいたりします。
この話をするとき、いつも思い出すのが赤瀬川源平さんのエピソードです。
南 そういえば、昔、赤瀬川(原平)さんがね、
ええと、松本伊代と早見優の区別がつかなくて、
ふたりを並べて観ると
立体視ができるって言ってた。
糸井 はははははは。
南 こうして、ふたりの写真を並べて置いてさ。
「立体になってきた」って(笑)。
ほぼ日刊イトイ新聞 「黄昏放談。」より
もう、最高の笑い話なんですけど、ちなみにいうと、ぼくは松本伊代さんと早見優さんの区別はつくんですよ。むしろ、どこが似てるかわからない、というくらいはっきり違うおふたりだと思うんです。
で、年表で考えてみると、80年代から90年代のアイドルさんは、ちゃんと理解できてるし顔の判別もつく。2000年代以降くらいから、顔と名前がぼんやりしてきて、2010年代の方々は立体視レベルに近づきつつある。
最初は、ファン目線での興味が薄れたからだと思っていました。あるいは、彼女たちが登場するようなテレビ番組を見る回数の問題も大きいと思いました。しかし最近、ふと気づいたんです。
これ、メイクじゃねえのか? と。
つまり、80年代、90年代、00年代、10年代と、それぞれ流行りのメイクがあり、ヘアスタイルがある。そしてわれわれ男子は、かろうじて女性服の流行は追いかけられても、メイクの流行にまでは気づきにくい。というか、よくわからない。
そしてある日、突然のように「同じ顔」をした人たちがテレビを占拠していることに気づく。ほんとは顔の造形が同じなのではなく、同じメイク、同じヘアスタイルでしかないのに、節穴の目がそれを「同じ顔」と認識してしまう。
結果、ぼくのように「清純派のひと」「美人系のひと」「ショートカットのひと」「黒髪ロングのひと」みたいな雑な分類になって、同じ美人系なら美人系の、個体差がわからなくなる。
この「最近のアイドルの顔がみんな同じに見える病」の特効薬は、自分よりもうんと下の世代への、ファッション的な関心なのではないか。……そんなことを思ったのでした。
違うのかなあ、違うんだろうなあ。