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なぜひとの顔をおぼえられないのか

名刺交換をする。「はじめまして、古賀と申します」と挨拶をする。はぁー、麹町のオフィスなんですねー、なんて受けとった名刺を眺めながら顔を上げると、相手が怪訝そうな表情をしている。そして言われる。「以前、お会いしましたよね?」

ぼくはけっこう重度の顔面健忘症だ。3回は会わないと、顔と名前が一致しない。それどころか、5回10回会ってるのにお名前を失念したりする。なぜだろう、なぜかしら。いろいろ考えた結果、「作用・反作用の法則」ではないかと思い至るようになった。

どういうことか。もともとぼくは、「こんなわたしですみません」的な、よくいえば謙虚、わるくいえば卑屈な自己認識をもっている。パーティー的な場にお呼ばれしても、「いやいやもう、あっしのことなんてどうでもいいですから、ほら。みなさんぜひご歓談ください」と車海老のように腰をかがめ、後ずさりする人間だ。これは小学生時代の、幾度にもわたる転校生活が身につけさせた処世術なんだと思っている。

そんな性格もあり、初対面のかたと名刺交換しても、「いやいやもう、あっしのことなんてどうでもいいですから、ほら。みなさんぜひご歓談ください」になる。自分のことを覚えてもらおう、記憶に焼きつけてもらおう、そのためいろいろアピールしよう、という気持ちが皆無に等しいのだ。

そしてこの「覚えてもらおう欲求」の希薄さが、けっきょく他者についての「このひとのことを覚えよう欲求」の希薄さに結びついているのではないか。つまりぼくが「わたし」を3の力でしか押し出さないから、インプットの量も3になってしまうのではないか。作用・反作用の法則ではないか。

なんてことを考え、最近すこしずつ「わたし」を表に出した社交をこころがけるようになりました。

エビちゃんをやめ、タツノオトシゴになるのだ。