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長い会議

ものすごく長い会議に出たことがある。

いや、時間がではなく別のものが長いのだ。たぶん意味がわからない。さすがに最近は長時間の会議は「いつの時代だよ」ってなるので減っている。

あと、あれになってからそもそも密な空間に人が物理で集まることも好ましいことではない。

リアルでもオンラインでも会議は30分以内というところも増えてるし、もちろんアジェンダは事前に共有される。

会議の中身も、最新状況の共有と課題についてのディスカッションに何分、そこから具体的な意思決定に何分というように構造化されてるので、無駄にだらだら長い会議はしない。

そう思って油断していたら、とあるところで呼ばれた会議が長かった。

うちの会議は長いですよ、とは事前に聞いていたのだけど、そういうことではどうやらなかったらしい。

そもそも指定されたオフィスに会議室が見当たらない。それでも会議時間になるとどこからともなく人が集まってきて、あっという間に長い行列ができた。

吹き抜けのあるビルの廊下をぐるっと1周してエントランスを抜け、さらにビルの周りの緑地にも人の列がつながっている。もちろんソーシャル・ディスタンシングを保って。

行列のできる会議。あまり聞いたことがないけれど、そういうのもあるのだ。

仕方なく僕も最後尾につく。行列の先は消失点になって、ただの模様にしか見えず行列は一向に進まない。

どうするんだろうと思ってたら、列の前の方からざわざわと何かが伝わってきた。

どうやら、この状態で会議が始まるらしい。会議の先頭はどうなっているのか。もちろん何もわからない。けれどたしかに会議は始まり、行列の人たちも真剣に何かにうなづいたり、器用に立ったままパソコンに何か打ち込んだりしている。

とりあえず僕も何かしないとわざわざ呼ばれて来た意味がない。他の人たちはとくにこの会議スタイルに疑問も持たず慣れた感じで会議に参加している。

仕方がないので、僕のひとつ前にいる人に「この会議、どれぐらい長いんですか?」と聞いてみると「4kmぐらいじゃないですか。きょうは短いほうです」とマスク越しに教えてくれた。

そうか。短いのか。そう言われればそうかもしれない。

僕は気を取り直して、自分のパソコンを背負ったバッグから取り出し《きょうの会議は4km》とメモした。


※昔のnoteのリライト再放送です


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