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バタフライ会議

きょうは(きょうも)仕事しながらいろんな言葉が降ってきた。

たいてい、いま原稿を書いたり構成を考えたりしてる目の前の仕事とはまるで関係ない言葉だ。

そんなふうに言うと、ちゃんと仕事やってるのか疑惑が生まれそうだけどやってます。誰に?

ほかの人はそういうのがあるんだろうか。仕事しながら関係ない言葉が降ってくることないですか? という質問はしたことがないしする場面もそうそうないので、ちょっとした謎だ。

ここでいう「関係ない言葉」は、気がそれて別のことを考えるとか、よそ見的に他のことをしてそこで何かが目についてとかではない。それはただ気が散ってるというのだろうから。

そうではなく、本当に仕事に集中してるのに不意に頭上で半透明な楕円形の蓋が音もなくスライドして開く。そこからスッと「言葉」が降ってくるのだ。端的に言って困る。気になるから。

パソコンの前に向かって原稿を書いてても(この作業スタイルも人によっては古いんだろうな。タブレットと声でしか原稿書かない人もいるし)、降ってきた言葉を除けるのはなかなか面倒くさい。

バタフライ会議――。

この言葉もきょう降ってきたのだけど、微妙に成語として成立してそうだけに、気になってしまう。何なんだバタフライ会議って。

降ってきた言葉を追いやって仕事に戻るには、その言葉の状況を自分で自分に納得させてやるしかない。

        ***

会議室でミーティングが始まっている。スーツ姿なのに、みんな蝶の羽根が生えている。アゲハ蝶のように大きくて割合とはっきりした模様の人が多い。

アジェンダは事前に共有されているのだけど、妙に深刻そうだ。重たい議題なのかもしれない。沈黙が続く。そのとき誰かが自分の羽根を羽ばたかせる。重い空気に耐えられなくなったのだ。

最初はひとりだったのが、誰かの羽ばたきにつられるようにみんながパタパタと羽ばたきをはじめる。みんなの羽ばたきがしだいに大きくなり轟轟と音を立て、アジェンダの紙が踊り狂うように宙を舞う。

ひとしきり羽ばたいたあと、また同じように誰かが羽根を閉じてみんながそれに続き、会議室に元の静けさが戻る。

ただ、さっきと違うのはそこにスーツ姿の人はおらず、疲れ切った蝶が静かに羽根を震わせているのだ。