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怒られそうな話

一応、こんなご時世でもそうじゃなくても基本的にちゃんと生きてるし、生きたいと思ってる。

だけど、やっぱり「ちゃんとしてない」ことも考える。考えようと思って考えるわけでもなくて無意識レベルでもうひとつの自分が勝手に考えたりしてる。

そいつがたまに僕の代わりに何か話したり書いたりする。といっても、周りからみたら同一人物なので厄介だ。この人、こんなときに何言ってるんだろう。何考えてんだろう。そう思われても仕方ない。僕以外僕じゃない。

距離をあけないといけない。密はダメだ。いや、ほんとに。

コンビニに行く。必要最低限度のものを必要最低限度に買いに。コンビニでは自主的に入店規制っぽいことが始まっている。

コンビニといってもあまり知られてないタイプのコンビニだ。それでもお客の姿は少なくない。店舗に沿ってほぼ等間隔で列が出来ている。僕も大人しく列の最後尾に間隔をあけて並ぶ。

もちろんみんなマスク姿で無言。ほとんどがスマホをいじっている。

黙って入店を待っていると、自分がレゴブロックでつくられた《コンビニに並ぶ人》のような気がしてくる。

こんなことになってレゴブロックって売れてるのだろうかとか、どうでもいいことを考えていると、不意に僕の背後が騒がしくなる。

黒っぽい服を着てヘルメットを被った3人組の男たちが走ってきて僕らの列を追い越し、そのまま店内に入ろうとする。

は? と思っていたら店内から「ダメです!!」という女性の大声が聞こえてくる。換気対策で自動ドアは開けっ放しになっているのだ。

さすがにこの期に及んで大胆な割り込みは怒られるだろう。

「いいから、早く出せ!」

少し上ずった感じの男の声もする。

「ダメです!! ちゃんと並んでください!!」

何やらもめてる声がしばらく聞こえてきたけれど、列に並ぶ誰も確かめようとはしない。相変わらず無言でスマホをいじったり、ときどきスマホから目を離して宙を見つめたりしている。

気圧されたみたいに、3人組の男たちがコンビニの入り口から吐き出される。相変わらずヘルメットはみんな被ったままだ。

男たちは小走りに僕の横をすりぬけると、僕の後ろに3人で並んだ。

「密もダメです!!」

入り口から顔だけ出して店長らしき女性がさらに叫ぶ。

弾かれるように男たちが間隔をあける。

僕はいったい何を買いに来たんだろう。