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3を買いに行く

「お客さん、すみませんね。売り切れなんです」

なんとなくそうだろうなとは薄っすら思っていた。そういうことがたまにある。たぶん「ない」とわかっていながら足を運んでみたり、ネットを探してみたり。

きょうもそうだった。

ないだろうなと思いながら、べつに期待するのでもなく、むしろ「ない」ことを確かめるぐらいのつもりで店に入ったら、店主にすげなく言われた。

「あ、大丈夫です」

僕はちょこんと頭を下げて店を出ようとすると、店主がやおら「しかし、必要なら6はありますよ」と勧めてくる。

半分に割ればいいと言いたげな顔をしている店主に僕は、重ねてお礼を言って「3のほうがいいんで」と告げる。

そうですか、という顔で店主は僕を見送る。

最近、やっぱり3が人気なのだ。入荷してもすぐに売り切れてしまう。

ネットでも買えないこともないのだけど、こればかりは直接確かめて買いたい。というか、Amazonの箱を開けてとかではなく、店に並んでるのを手に取ってその感触も含めて買いたいのだ。

4や8や9もお店にはふつうに並んでいる。でも3はない。

もう世界中の人に3が行き渡ってしまったから3だけが存在しないのか、それとも3は不人気でそれほど需要がないからなのか。

だけど僕が3を手に入れてないことは確かで割り切れない自分を持て余してしまう。

帰り道。コンビニに寄って13を買う。駄目ではないんだけど自分のものだなという気がしない。やっぱり3がいいんだ