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道草を太陽に捧げた男

突然、料理がしたくなる。ほんと気まぐれに。

けど、そういうの料理って呼ぶのは憚られる。なぜなら、思いつきレベルだからだ。

基本的に料理は逆算でつくられる。

最終的にこんな仕上がり(味、食感、見た目、いつ食べるか等々)にしたいがあって、そこから逆算でレシピ、手順が設計されていく。食材でも硬いものと柔らかいものがあったら、固いものから先に火を通す。これも逆算。

忙しい日常で何時までにこれとあれの料理つくらないといけない、なんて逆算がないと無理だ。

まあ、人生もそうかもしれない。こうなりたい、これを実現させたいがあれば、そこに必要な要素、プロセスを逆算で導き出してちゃんと辿っていく。

正直、あまり得意じゃない。

いや、あんたそれじゃ本なんてつくれないでしょ? という話もある。そのとおりだ。本の編集、制作過程なんてまさに逆算。

もちろん仕事として何百冊もそれをやってきてるから、できなくはない。

だけど、得意か? と言われたら自信を持って「うん」とは言えない。だいたいのところは逆算で決められるけど、それ以上にわりと「感覚」の部分が強いから。

なので料理も、ちゃんとこういうメニューにしたいみたいなのはできる気がしない。つくりながら、どんなふうに味や見た目が着地するかわからんけど、まあ方向性は間違ってないくらいのものならできる。たぶん。

行き先のわからない食のミステリートレイン。

あ、もし本当にすべてのメニューが「?」になってて、どんな料理がどんなふうに出てくるかさっぱりわからない店があったら食べてみたい。最低限、お腹こわさない前提で。ヤギは道草を食む。

そんなやつがスペイン在住HARCOさんが企画した『#トルティージャ100』に、うっかり乗っかってしまった。

これ、第1回は世界が禍の空気に重たく覆われた2020年4月『オンライン・トルティージャ祭』として開催。みんなで元気を分け合おう! を合言葉に8カ国からたくさんのトルティージャがUPされました。お皿の上の太陽。

で、今回は2回目。テーマは一緒。シンプルに、黄色いアイツ=トルティージャをつくって食べて、なんか知らんけどわくわくしよう。

みんなそれぞれ自分の食べたいつくりたいトルティージャをUP(Twitterでもnoteでも)。そもそも本家スペインでも「これが正式」なんてなくて、それぞれの人生にそれぞれのトルティージャがあるからOK。

だから今回は『アタシんちのアイツ』ってこと。


要は自由に「食べて生きる」ことを楽しむ象徴としてのトルティージャなんだ。

なので早速、感覚的フリースタイルなのが好きなヤギもつくってみました。

《用意した食材》

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どん! なんだろうね。特別、変わったものもなく。ベーシックに思うじゃないですか。けど、これだけは試してみたかった食材があって。

これです。はい、再びどーん!

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え、なにこの巨人の足みたいなのは。これが信州特産の「足芋」。じゃがいもじゃなくてね。というフェイク情報をしれっとお伝えしたところで(怒られる)本当は長芋。

長芋がじゃがいもの代わりになるの? と思われそうだけど、なるんですよ。ただし、信州山形村産の長芋に限る(個人の感想です)。

これね、ふつうの長芋じゃないやつ。長芋ってちょっと水っぽいというか、ネバネバしてるけどさらっとしてるイメージありますよね。けど、山形村特産の長芋はどろっとした強い粘りと、焼いたときのホクホク感が特徴。

ほんとにね、ここのは焼いたり揚げたりしたら、言われなければじゃがいもと信じる。

この時期に生産者さんから直接買える市が開かれて、そこで毎年箱買いしてるのだけど。

今年は特に人気で(贈答用リンゴが春先の霜被害にあって出荷がないのもあって)かたちがいびつなのしか残ってない。

んー。どうしようかなって考えてると生産者のおじさんが話しかけてくる。

「いいの全部売れちゃってさ。足りないからいま掘りに行ってるだ。夕方には持って来れるもんで、名前書いといてくれたら明日でも買い来れるように置いとくから」

明日か…遠いな。

逡巡してると、おじさんが「自家用かい?」と尋ねてくる。うん、うちで食べるやつ。そういうと「それならこれのほうがいいよ。かたちはあれだけど、このほうがうんと粘いから」

いわゆる「コブ付き」の長芋なんだけど、すらっとしたやつより更に粘りが強いのだという。生産者さんが直接教えてくれる情報は貴重だ。

で、こいつと玉ねぎをたっぷりのオリーブオイルでひたひたにしながら煮て焼く。なんていうんだろう。油で煮ながら焼く調理方法。なんか名前あるんだろうな。

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いい感じに火が通ってきたらアレを入れる。スペイン産のオイルサーディン。スペイン産と聞くだけで旨さが5割増しになる。

オイルサーディンの塩味を長芋の穏やかさが包み込んで、そこに玉子の味わいが広がっていく。あー、これはもう自分の中で優勝するやつ。早くワインと会わせたい。

あらかじめ塩も少し入れて溶いておいた玉子をじゅわーっと投入。ん? 徐々に固まっていくけど真ん中らへんの火の通りが悪いのかずっと溶き玉子状態のまま。

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これはどうしたものか。他は焼き色もついてくるから、真ん中に火が通るの待ってたら焦げる。

仕方ないので、フライパンを傾け真ん中の液状玉子を端に流し込んで焼き重ねる。オムレツみたいな技。トルティージャだけど、まあいいか。

なんとか焼けて、片面をお皿に一度オンさせてひっくり返して両面を焼く。

本場のスペインではこれにしか使えない下駄(?)みたいなトルティージャ返し専用の調理器具があるらしい。まあ、それは玉子何十個も使うレストランテ用だけど。

なんとか『ヤギんちのアイツ』、長芋とオイルサーディンのトルティージャが出来あがり!!

思ったとおり長芋がホクホクでオイルサーディンもいい仕事してる。猫野サラさんからも「なんやこのHard Rock Cafeにありそうなメニュウ…」と言ってもらえたので満足です。


はじめてトルティージャつくったけど、フリースタイルで道草してもなんかできるのでよかったらぜひ!

僕も食べに(観に)行きます!

参加方法

《テーマ》
今回のテーマは、『アタシんちのアイツ』です。
中の具はスペイン風のジャガイモにする必要はなく、あなたの家のオリジナルで結構です。フライパンで丸く太陽のように焼けていれば合格です。どんな『アタシんちのアイツ』が登場するのか楽しみです。

《投稿方法》
楽しく作って写真を撮ったら、ハッシュタグ #トルティージャ100  をつけてTwitter投稿。(さらに、noteにて投稿していただいた方の記事は、マガジンに収録し一挙公開させていただきますね)

こ・れ・だ・け!!

開催期間:2021年11月17日~12月8日 (3週間)

◎はじめてトルティージャつくるんだけど、どうするの? って人もコレを観れば大丈夫。なんだ、意外に簡単なんだねって。


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