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「ロシア異界幻想」 栗原成郎

岩波新書  岩波書店

今日は第1章、「あの世」と「この世」のしきい。

死への準備と、死者が40日の間は悪さをするという話。2つとも1990年代辺りに実施されたロシアの民俗聞き取り調査を元にしている。実にナイスな時期かつ、調査に至った経過自体も面白そう(この本では殆ど書いてないけど)。
死への準備については、フロイトの喪の仕事を、死者の悪さについては「断食芸人」も40日だったなあとか(これは聖書記述から来ている)。あんまり悲しみ過ぎていても、放っておかれ過ぎでも悪さ(生きている人を引きずり込んだり)する、困った存在。でも、それを過ぎれば見守る存在になる。
(2011 05/12)

第2章、家の構造

(ロシアだけでなくウクライナやベラルーシなど東スラブ人社会全体について)
入って右手(もともとは東)にうるわしの隅と呼ばれる「光」の角、要するにイコンおいたりとかする日本で言うと神棚みたいなところ。で、対する左手(もともとは西)はペチカの角、女性の角、原始宗教の角、という構造。もちろんペチカはパンを焼く釜であるわけだが、昔はなんと病弱な赤ちゃんも焼いた?らしい。間引きの意味合いもあったのだが、パンを焼くペチカが再生の象徴でもあったのだ。そういう言い伝えが多くある。
垂直方向には、屋根裏、住居空間、地下室の三部構成。屋根裏と地下室はこれまた異界の場所。ドストエフスキーの「地下室の手記」はこうした文化から産まれたのだろう。人間の表象は、人間精神の現れなのだろう。
(2011 05/16)

第2章から第4章まで。

第2章の後半は家の守り神にて異教時代の名残も見られるドモヴォイという妖精?のお話。ドモヴォイを見たものは死ぬとか、新たに家を建てるときはお伺いを立てる、とか。

第3章は「死」についての民俗学。「生と死の対話」という物語はドイツから流入していたものもあったらしい。それが、ロシア化して民衆のフォークロアになる。振り向くと大鎌を持った老婆がいて、死すべき者の身体を切り刻んで「霊」を「生」(身体)から切り離す。それを「解放」として目指すのだという。こういう場合は死はゆっくりと訪れる。だが、悪い場合は急に時間を与えずに訪れてしまう。

第4章は民族宗教詩と呼ばれる詩について。ここでは「鳩の書」という作品から。この手の詩は15・16世紀に多いに栄え、それ以降特にソ連時代には無視された。民族宗教詩は古儀式派というところに残っていたという。それを語る放浪詩人達は盲目など身体の不自由な人がなることが多かった。これは今で言うセーフティネットでもある?
(2011 05/17)

ロシア異界幻想読了


標題通り「ロシア異界幻想」をつい先程読み終えた。
最後の方はロシアにおける天国と地獄のイメージを聖書外伝から探る。ロシアでは天国は手に届かないところにあるのではなく、選ばれた人ならたどり着けるのだという。地獄はまあ想定範囲内?というところなのだが、ロシアにはカトリックのような煉獄という場所は存在しない。
どうやらロシアにおいては、天国は東(或いは右)、地獄は西(或いは左)にあるとされているようだ。これで第2章の家の中の空間構造の話に繋がったわけだ…
で、結局、反キリストは来たの?
(2011 05/19)

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