見出し画像

「トゥバ紀行」 メンヒェン=ヘルフェン

田中克彦 訳  岩波文庫  岩波書店

トゥバ紀行


昨日朝のことで記憶の彼方といった感じだが、とにかく「トゥバ紀行」読み始めた。岩波文庫。一昨年暮れに下関古本屋で買ってしまった?もの。

トゥバはモンゴルの北、この当時はソ連領、今は無論ロシア領。この1920年代は半ばソ連の保護国的に独立国となっていたという。そしてロシア人以外は滅多に入れない場所だった。そこへ、当時モスクワにいた民族学者の著者(たぶんドイツ人?)が調査に同行する…今のところ、トゥバに入る前なので、スターリン支配下のロシア、それも地方都市がどうなっていたかがよくわかるところの方が印象的(笑)。
スターリンはよく研究されていると思うけど、こういった観点からはなかなかされてない…のでは?
(2010 09/25)

日本人起源説とトゥバ


「トゥバ紀行」の中の「トナカイ」の章。トナカイは意外?にも家畜化が早かった動物の一つなのだそう。そのトナカイの原始的牧畜が始まったのが、この(おおざっぱに言うと)バイカル湖周辺。原始的牧畜の特徴の一つとして去勢技術を知らないことがあるが、そこが江上氏と佐原氏の「日本騎馬民族到来説」の論点と関係があるのでは、と注にあって興味を惹かれた。 
あんまり日本とは関係がなさそうなこの地域であるが、実は起源の重要な一つなのでは。この人々が大陸と地続きになった時にナウマン象を追って野尻湖へ?? 

「ウジャ」は世界の合言葉


「トゥバ紀行」の続き。「狩猟」の章の最後になかなか興味深い「ウジャ」という話がある。これは何かというと、狩猟のみの生活をしていた頃、獲物を捕った人に出会うと「ウジャ」と言えばその獲物の半分をもらえた…という掟?のこと。食糧が不安定な原始狩猟社会ではこうした共産制?ができていたのか。その名残がトゥバには残っていたのだが、この「トゥバ紀行」が書かれる1920年代後半には急速になくなってきている…とすぐ続けている。
マルクスが想像したのとは逆に、共産制から資産の偏在に時代が進むにつれて移行しているのかしらん。資本主義の大元の原理である「交換」は唯一絶対なものではなく、モースの「贈与」とかいろいろあるということか。
(2010/09/26)

昨夜「トゥバ紀行」を読み終え。なんか近代史は中国・ロシア・白軍・赤軍入れ替わり立ち代わりでよくわからない…その中で汎モンゴル主義のような思想も出てくるけど…
(2010 09/27)

補足その1

「ファインマンさん最後の冒険」なる本が岩波現代文庫にあって、これが書名では全くわからないのだけれど、今週頭に読んだ「トゥバ紀行」の1980年バージョン(笑)。っても、実際にトゥバに行く前の苦労?談らしいけど。この本の中でも当然メンヒェン=ヘルフェンの「トゥバ紀行」は取り上げられていて、「あまりに面白いから(もともとはドイツ語)英訳を友人に頼んだ」とある。そもそも、なんだかお茶目な、しかし批判的でもある悪戯好きの物理学者ファインマン氏がトゥバに行きたいと思ったのは、これまた悪戯好きな友人の誘いから。とかなんとかが書いてある一冊。 
(2010 10/01)

補足その2


この本の訳者田中克彦氏の「ことばとは何か」(ちくま新書)に、汎モンゴル主義の話(結局、粛正されてしまう)が出てくる。
(2021 06/10)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?