見出し画像

「アフリカ・レポート-壊れる国、生きる人々」 松本仁一

岩波新書  岩波書店

第1-4章まで。
ジンバブエの基幹産業で実績のある(1980年代の飢饉で餓死者を出さなかった)農業を見捨てた独裁制、南アの治安悪化、フランス領西アフリカで独立後もフランスから派遣された調整役人、南アでの中国個人商人の殺人事件とアンゴラやスーダンでの中国支援プロジェクトでの現地との接触の無さ、パリのアパートのマリ人や歌舞伎町のナイジェリア人の「外人バー」呼び込み。など。

ここまで暗かったので、第5、6章は少しでも明るくしようか…と、地道な成功例。ジンバブエORAPという農村経営、南アソウェトのレストラン、シエラレオネのバイクタクシー。ここからは日本人編でケニアのケニアナッツ、ウガンダのヤマト・フェニックス服、セネガルのカキ屋台。ここでの成功例の共通点は、与えないで自分たちで考えさせる、外国人は口を出さず労使交渉や管理職も現地人に任せる、給料日は厳守(逆に言えばアフリカでは多くの場合給料の遅配は当たり前)。

 彼らが伝統的に帰属感を持ち、よりどころとしてきたのは、部族共同体なのである。
 いい車を持って大きな家に住み、部族の若者を多く居候させて食べさせてやる。それは有力な指導者に求められる「優れた資質」なのだ。
 もうひとつは(なぜアフリカの指導者は腐敗するのか)、アフリカの独立政府指導者に強い危機感がなかったことだ。
(p74)


アフリカの中で、松本氏が「危機感をいだいていた」人物として挙げているのは、ガーナのローリングス元国家元首のみ。

この本は2008年の刊行(前年、松本氏は朝日新聞社を退職)。現在ではアフリカの情勢は、ここに描かれていた人たちは、どうなっているだろうか。
(2022 06/26)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?