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「服従の心理 アイヒマン実験」 スタンレー・ミルグラム

岸田秀 訳  河出・現代の名著  河出書房新社

山形浩生氏の新訳も同じ河出書房新社で出ている(文庫化もされたが、自分はハードカバーで購入、ちなみにこの岸田訳は図書館で借りたもの)。
新訳には、実験から40年経った時点でこの結果を「疑ってみる」という「蛇足」付。

恐いほどの意志力…ミルグラムのアイヒマン実験


ミルグラムの実験は社会心理学の古典的研究とされている。サクラの回答者が間違うごとに、被験者は電気ショックを15ボルトずつ上げて回答者にかけなければならない…という状況下で人間はどこまで電気ショックをかけ続けるのか?驚くことに最大の450ボルトまで半数以上の人が上げ続けた、という(実際にはサクラの回答者には電気ショックは与えられてなく、苦しんでいる演技をしていた)。

さて、この実験結果もかなり恐いものですが、本を読んでいて恐いほど感じられるのはミルグラムの実験に対する貫徹している意志。様々な実験環境を探り出していくところ。実験終了後の被験者へのフォローと対話の姿勢。そして社会的考察。この本の訳者である、有名な岸田秀氏も唖然とするほどの難しい実験を行っていく…そして読みやすい…
この本部屋に閉じこもって読み終わったら、外出するのが恐くなりそう。
(2010 05/02)

民族間の差異は?


今朝、早く起きたので、「服従の心理」を読了する。ちなみに「アイヒマン実験」と名付けたのは、「人格」の定義でも出てきたゴードン・オルポート。
ここに何か書いて、記憶に留めようとするより、一家に一冊くらい常備させた方がいいくらいの内容だけど、とりあえず一つだけ。この実験参加者で後日のレポートに「権威に無意識に服従する恐ろしさをこの実験は教えてくれました。兵役が回ってきた時は、「良心的兵役拒否」を宣言しようと思っています」と書いてきた人がいて、実際兵役拒否できたらしい。

もし、今の日本でこの実験やったらも少し服従の割合が高いのかな?ともちょっと思ってしまうが、ミルグラムによると、この服従の割合はどの民族でも出自でも変化が見られない普遍的なもの・・・らしい。ふむ。
(2010 05/05)

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