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「続審問」 ホルヘ・ルイス・ボルヘス

中村健二 訳  岩波文庫

読みかけの棚から
読みかけポイント:「コウルリッジの花」と「コウルリッジの夢」、それから「時間とJ・W・ダン」、「天地創造とP・H・ゴス」のみ(だと思う)。

「コウルリッジの花」と「コウルリッジの夢」

今日は少しずつボルヘスの「続審問」読んでいる。「コウルリッジの花」と「コウルリッジの夢」。コウルリッジはイギリスロマン主義の詩人。
「花」ではコウルリッジが夢の中で訪れた楽園で花をもらい、夢から醒めたらその花を手に持っていたといい、「夢」では「クブラ・カーン」(フビライ・ハンのこと)という代表作も、また夢の中で見た、というか体感した宮殿を、夢から醒めてからなんとか詩にした(途中で来客があって中断されてしまったというが)と語る。
面白いことにフビライ・ハン自身も宮殿を夢見て作ったという説もあり、フビライは宮殿を作り、コウルリッジは詩を作り、オランダ人はオランダを作った(笑)・・・ということかもしれない。同じ源泉から。コウルリッジの夢がフビライ・ハンの要請だった、というボルヘスの夢想も面白いのだが。

コウルリッジ補足。「老水夫の詩」(抜粋)を見てみる。アホウドリ(アルバトロス)を殺したことで呪いにかかった老水夫は、海の中に見えたウミヘビを祝福する。すると、アホウドリの呪縛が解ける・・・という詩。
不気味なのは、呪縛が解けたはずの老水夫が陸に上がると周りの人々は彼を避けている、ということ。解釈はさまざま成り立つが、単に老水夫の足がなかっただけなのかも(笑)。
(2009 10/12)

「時間とJ・W・ダン」


ここでのテーマ「無限後退」はこの「続審問」を貫くテーマの一つらしい。ダン(詩人ではなく、時間論も書いた英国陸軍大尉)の論は、ベルクソンが非難する「時間を空間の第四次元」にしてしまう傾向の最たるものだと述べたあと、

 夢のなかでは、極めて厖大な領域を一気に飛び越える。夢を見るとは、覚醒時に見たものを整理し、そこから一つの物語または物語群を紡ぎだすことである。
(p38)


最後にボルヘスらしい皮肉も交えた文が来る。

 このような素晴らしい議論に接するとき、著者の犯す誤りなど問題ではない。
(p39)


(この本、既読は上記コウルリッジ2作品のみにして、その前のはもう一度読もう…)
(2021 11/18)

「天地創造とP・H・ゴス」


ゴスではなく(ゴスの思想はよくわからない)、ジョン・スチュアート・ミルの思想から。

 状態sは状態tを生じさせるであろう(ラプラスの悪魔的に)と主張するが、t以前に、神意による大災害-たとえば《世の終わり》-が地球を滅亡させてしまうこともあり得ることを認める。未来は厳として確実に存在するけれども、現実には生起しないかもしれない。神が中途で待伏せしていることもあるから。
(p42)


神が時間という数直線の上にいて身構えてる、というような絵(というか影絵)がすぐ目に浮かぶ…
(2021 12/10)

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