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「クレーヴの奥方」 ラファイエット夫人

青柳瑞穂 訳  新潮文庫  新潮社


今日からラファイエット夫人の「クレーヴの奥方」を。まだ話の前段階みたいなところ。作者ラファイエット夫人は、ロシュフーコーやセヴィニエ夫人(失われた時を求めてでやったらめったら出てくる(笑))と親交のあった人らしい…けど、そうした人々の記録にラファイエット夫人の夫のことが出てきてなかったことから、結婚後すぐに亡くなった、というのが定説だったらしい…ほんとはずっと生きていたのだが…まさにピランデッロの短編そのものの構図…

 あなたは世間体にしばられているのではなくて、あなたのしているようなことが、いわゆる世間体なんですよ。
(p32)


なんか、社会学の本の扉にでも飾られそうな言葉(笑)。
まさに箴言集のロシュフーコーの友達?が書いた作品だけある。で、夜通し、ロシュフーコー・セヴィニエ夫人・ラファイエット夫人の三人で文学等について語り明かした、というから、この作品もそうした中で育まれてきたのだろうと、訳者青柳氏。主人公クレーヴ夫人はラファイエット夫人に、ヌムール公はロシュフーコーに多くを負っている。と考えると、自分達の実在の大きな三角形を、文学作品という小さな三角形と戯れさせていた、とも想像してしまう。かなりなお遊び・・・
(「大きな」と「小さな」は、ひょっとしたら逆?)
第一巻読み終え。
(2013 01/30)

 大きな悲しみと、烈しい恋と、この二つは人間の心に大きな変化をあたえるものですよ。
(p83)


ヌムール公の言葉から。この前に別の事例(恋人の死の翌日にその恋人が別の男の方に恋していたことがわかった男の話など)が置かれていて、それを参照するような仕掛け。こういう合わせ鏡のような構図と、それから精緻で内省的な心理描写(これまでの何らかの徳の象徴みたいなのと違って…デカルト的懐疑がここでも生かされている)とで、なんだかウシトキ(「失われた時を求めて」)のダイジェスト読んでいるみたい…
(2013 01/13)

「クレーヴの奥方」は第二巻まで終了。また違う方向から今度は手紙が舞い込んできて、合わせ鏡はまた拡散化。これ近代小説の始め…としてかなり斬新。当時なかなか評価されなかったのもよくわかる…
(2013 02/01)

「クレーヴの奥方」は3巻へ。自分の妻が他の男への恋心を告白する、という有名な告白と、それがまた回り回って皇太子妃(ちなみにこの皇太子妃というのがあのメリースチュアートらしい)から奥方に伝わる、という筋だけ見ると昼間1時半のドラマ?ってな感じもしてきた…言うまでもなく、読みどころはそこではなく、微妙なちょっと意外な心理描写。
(2013 02/02)

昨夜「クレーヴの奥方」読み終えた。 
語り口などはちょっと登場人物を突き放したような感覚なのだが、最後に意固地にもヌムール公の告白を拒否するところなどは、作者ラファイエット夫人の母親の再婚の思い出が影響しているのかも。 
(2013 02/05)

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