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「栽培植物と農耕の起源」 中尾佐助

岩波新書  岩波書店


「栽培植物と農耕の起源」

高田馬場、芳林堂へ。岩波新書の「栽培植物と農耕の起源」中尾佐助著を購入。
ちょっとだけイントロダクションを読むと、野生種と栽培種の見分けやすい違いは粒の脱落性にあるという。これは穂に触っただけで実が落ちるか否かで、野生種はすぐ落ちてしまい収穫しにくいという。これを収穫しやすいように脱落性を人間の品種改良でなくしていったわけだが、一方でこうした野生種を工夫して収穫しているところもあるという。少なくともこの本が書かれた1966年の時点では。
(2013 08/17)

農業の様々な側面のうち基本的な栽培・調理のいろいろを基本複合と呼び、これらは農業の基本的ではないもの(宗教とか社会形態とか云々)が隣接民族でかなり違いがあるのに比べて、互いに似通っている。この本では世界の農業を4つに分けて説明している。

根菜農耕文化…バナナ・イモ・サトウキビ、豆類なし、最古の農耕。栄養が農耕だけでは偏るので狩猟等と合わせる必要性有。マレー半島中心にポリネシアから中央アフリカまで。アフリカではバントゥーの人々がコイサンの人々を駆逐するきっかけとなった。照葉樹林文化はこの根菜農耕文化の温帯版。

サバンナ雑穀農耕文化…ゴマ・ヒョウタン・ヒエ、豆類、果菜類(ナス、キュウリ等)有。一年草を選択・品種改良する。夏栽培、雑草は駆逐すべきもので、その雑草の中から二次的に栽培植物になるものはなかった。イネもここに入る。よってアフリカから日本まで。

地中海式農耕文化…ムギ、家畜。こちらは冬栽培。二次的に栽培植物となる雑草多い。家畜と組み合わせて発展。ウシはここからアジアやアフリカへ広まった。ローマ期くらいまではサバンナ雑穀農耕文化とは均衡状態だったが、その後2回の農業革命があって差をつける。

新大陸農耕文化…ジャガイモ、トーモロコシ、トマト。新大陸の独自の発展。根菜・雑穀それぞれが短い期間に急速に発展。伝播力は弱く相互交流も不活発だったが、栽培植物としては非常に優れているものが多い。ワイルドライスはも少しコロンブスが来るのが遅かったら、アメリカに一大水田地帯ができていた…のかも?
この本が書かれてから最近までの研究成果も知りたいな。
(2013 08/18)

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