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「多神教と一神教 ー古代地中海世界の宗教ドラマー」 本村凌二

岩波新書

メソポタミア、エジプト


「多神教と一神教」のメソポタミアとエジプトの章のまとめ・・・というか、もっと雑多なメモ。 

メソポタミアとエジプトの比較。メソポタミアでは人々はこの世を楽しめ的な姿勢でいて、その為にハンムラビ法典などの法令が出された。信仰としては様々あるが、後の東地中海沿岸で重要となったのがイシュタル神、これがアフロディテ→ヴィーナスへと変化する。

一方エジプトでは人々の間に「マアト」という秩序を大切にする姿勢があり、この点メソポタミアより心理・倫理的かな。そんな中前14世紀のサントリーニ島火山爆発などで太陽が陰り、それが唯一神アテン神を産んだとされる。またフロイトなどの説も引きつつ、そのような「唯一神に目覚めた?人々」が後にユダヤ民族となる(あるいはユダヤ教の唯一神に影響を与える人々となる)というシナリオを描いている。

まあ、史料も少ないしいろいろ考えてみるのは楽しいと思う。大切なのは、その時代には本当に何が起こったのかということではなく(というかそれを特定するのは不可能)、人類の歩いて来た古代という時代を考えることによって、何を得られるか?の方だと思うから。 
(2011 08/01) 

一神教とアルファベットとシステム化


「多神教と一神教」の第3章。
この本のミソである一神教革命とアルファベット発明を、世界把握の簡素化というシステム化が働いたのでは、と見る見方。

古代の豊穣の神信仰による供儀と享楽(例えばカナンのバアル神信仰)に対し、エジプトやバビロンで「苦難の日々」を経たヘブライ人や、ペルシャのゾロアスターなどは、新たな視線で世の中を見ることによって唯一の神という地点に立つ。周囲の大国でも神の数の整理?は進みつつあったのだが、その動きは群雄割拠というべき狭間の小国で顕著だった(ペルシャもゾロアスターの頃はまだ戦国時代的)。 

それから、この時代(2000年前より以降)は、インドのウパニシャッド哲学や、中国の諸子百家など世界各地で革命的思想や発明があった時期。そこで何があったのか。
(2011 08/02) 

ギリシャ、ヘレニズム


自然・社会・個人それぞれに神々の力を見て、来世には関心を寄せず人間としてのわきまえ(モイラ)を越えないことを重要視していた古代ギリシャ人社会。

そんな中の片隅にオルペウス教やピュタゴラス教?など神秘宗教が入り来世信仰も増えてくる。 そして、ソクラテス。今まで先程挙げたオルペウスやピュタゴラスなどの人々が秘密裏に信じてきた来世…魂(これらを認めることは、共同社会から離れた個人そのものを最重要とすること)を民衆に教えていく、ということ。魂の発見とも、個人化の一段階とも言える出来事。 

捕捉その1…それをソクラテスは実際の対話で、プラトンは対話篇という形式の文字による作品で行ったわけだけど、その差は大きい? 

捕捉その2…こう考えていくと、ソクラテス・プラトンの線は案外普通?アリストテレスの線の方が革新的…なのか? 

次のヘレニズム時代には、宗教融合(シンクレティズム)というものが起きる。オリエントにギリシャの宗教が、ギリシャにオリエントの宗教が…エリアーデなどはこの時代のシンクレティズムは最大級と述べている。 
また、アレキサンドロスがかき混ぜたせいで、古代各共同体が弱体化して、それに付随する神々も影響力を弱めた。それに対する一般の人々の対処策が魂の宗教…密儀宗教だったわけ。個人内面に語りかける神。そんな密儀宗教の一つの異種として成立したのがキリスト教…という、こういう把握の仕方か? 
(2011 08/03) 

「多神教と一神教」読み終え…だが… 


やっと夏らしい1日… そんな中、標題通り「多神教と一神教」を読み終えた。
けど、興味引かれることが多すぎて、突っ込みたいこと多すぎて、その列挙しかここではできない…
二分法の衰退と意識の誕生
一神教が世界宗教となる前の普遍神とも言える信仰(イシス信仰など)
男性における「女性原理」の対処方法と宗教への応用
危機と抑圧による個人救済欲望
そしてソクラテスの書き言葉に対する批判

最初の項目は、ひょっとしたら前千年期以前の人間の世界把握・認知は現代と違ったのでは、という大胆な仮説。人は行動する前に神の声を聞く? で、声が聞き取りにくくなって、自分達が迫害されている理由(原因ではなく)を知ろうとした時、原罪とか倫理とか産まれてくる…
(2011 08/04) 

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