見出し画像

「謎の古代都市アレクサンドリア」 野町啓

講談社現代新書  講談社

中央公論社版哲学の歴史第3巻中世の第1章、アレクサンドリアのフィロン経由でこちらへ。
(2016 06/19)

アレキサンダー大王以後のヘレニズム時代、分裂した各王朝は一方で哲学者・科学者いろいろのパトロンとなる。マケドニアではストア派中心、ベルガモンでは判断停止の懐疑主義中心、そしてエジプトプトレマイオス王朝ではありとあらゆる…主に文献学者から地球の外周計算した人はたまたユートピア物語作者まで…それから図書。旧約聖書の七十人訳というのもこの時代の翻訳。古代ギリシャのギリシャ人対野蛮人(バルバロス)という図式から、世界市民へ。

クレオパトラでプトレマイオス王朝が滅びた後、アレクサンドリアは哲学者・思想家が活躍する。その代表格フィロンは名門のユダヤ人。当時のユダヤ人は街人口の3割を越えていたとか。フィロンは周りのギリシャ人やエジプト人達と関わり合う一方、思想は旧約聖書にギリシャ哲学(主にプラトン)の解釈を取り入れるという方向。古代の人にしては主著がかなり残っているという。

そんなアレクサンドリアも古代の街は現在は地震や海岸侵食で海の底らしい。謎たる所以。

さて、アレクサンドリアのフィロンの補足。
フィロンが創世記を解釈(アレゴリー的に)する時参照したのが、プラトンの「ティマイオス」。そこで出てくるのがデーミウールゴス。プラトンではこれから作る世界のイデアは何らかの形で先行して存在していたのに対し、フィロンでは世界のイデアは神が第一日目に考えついた…ただそうすると、神に思考能力と思考の結果という分裂が生まれ、一なる神ではなくなってしまう恐れがある…という。この辺はやはり正直ピンと来ない。人間の魂だけが遍歴し、そして天に至るという道筋は、新プラトン主義の図式を先取りしている。
(2016 06/20)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?