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中銀カプセルタワービル見学レポート

Facebookに久しぶりに長文を投稿したので、こちらにも。
写真を途中に織り交ぜるので、若干加筆修正があります。

ネット記事などで見かけて気になっていたこのビル。
二人でコレを見ていたら奥方が激しく反応。「見に行こう!」と。
即その場でネット予約して、なんとか11/6の16時の会が取れたのでした。

https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/smp/backnumber/index.html?trgt=20210821

クルマで行って首都高汐留地下駐車場に停めて、2番の出口を出たら目の前に!

まさしくここの為にある出口でした。
下手すりゃ地下通路で繋がっててもおかしくないレベル。

時間になり主催者と入口前で集合。
2人ずつの3組6人で、われわれ夫婦の他、2組はどちらも女性同士でした。
入口の切り文字は濁点と半濁点が欠落しており、時の流れを感じます。


まずは12階の連絡通路へ。エレベーターで4人と3人の2回に分けて上がりました。
竣工当初のままの東芝エレベーターが懐かしいです。
近年保守部品打ち切りでメンテナンスは独立系の会社に移行したとか。

そもそもこのビル、東西のツインタワーで連絡通路は12階、9階、6階にあります。
エレベーターシャフトの周りに螺旋状に階段の付いたところに、下から巻貝のように螺旋状にカプセルを取り付けて行くと言う建て方をしたそうです。
黒川紀章氏は25年でカプセルを交換する設計だったようですが、カプセルは個別に外すことが不可能なので全所有者の同意が必要になり、それは望むべくもなく竣工後約50年の時間が経過し、今に至ってしまったそうです。



12階の連絡通路からはカプセルの外観がよくわかりました。


カプセルは取り付け方で種類があり、見学したものは入口に対して縦長のものでしたが側面に入口が付いて横長になっているタイプもあります。
竣工前に募集用に作られたパンフレットの中の配置図を見ると、カプセルの取り付け方による違いがよくわかります。


職業柄鉄の角パイプで作られた手すりのなかなか凝った意匠にも目が行きました。



各カプセルの上下の隙間は最小30cmしかなく、そこには配管が通っているだけなのでカプセルの更新は上から螺旋状に全てを取り外す他になく、そのこともカプセル更新を伴う大規模修繕が出来なかった理由のようです。


この連絡通路で見た半ば荒廃した50年の歳月に、かつてこっそり見に行った九段下ビル屋上の光景を思い起こしました。

その後螺旋状の階段を降り、カプセル内の見学に移りました。

エレベーターシャフトの周りを降りて行きましたが、階段と廊下を兼ねた作りになっています。


竣工当時は壁の色がピンクで、電気メーター部分はオレンジ色をしていたそうですが、後年の改修でグレーに塗られたものの年月で一部竣工当時の色が出ている部分がありました。
A棟を降りましたがB棟は色が違ったそうです。
玄関先に箱の置いてある区画が多く見受けられましたが、カプセルとの接合部からの雨漏りを受けるための物だと言うことでした。
この辺りに著しい老朽化を感じました。

いよいよ9階の公開用の部屋に案内されました。写真や映像で見た光景が広がります。


カプセル内はさすがの狭さで、必要最低限の空間です。
首都高に面した部屋なので、オプションの二重窓が付いていましたが内窓は部屋の幅が狭すぎて窓を反対側に開くことは出来ません。
窓際にベッドを置くケースが多かったようですが、寝ていて内窓を開けたら薙ぎ払われること確定ですw。



そしてこの部屋には唯一残された竣工当時のままのブラインドがありました。
円形の扇子のように下からぐるりと開きますが、ブラインドはもはやボロボロになって穴だらけでした。



部屋の左手には壁に埋め込まれたパタパタ式のデジタル時計、指針が水平に動くラジオチューナーを持ったレシーバー、それにオープンリールデッキが。


その上に小さいテレビが埋め込まれています。
テレビの上の棚にはレゴで出来たカプセルタワーが。
建物全体を把握するのには最適でした。


テレビはアナログなのでもはや映りませんが、ラジオはアンテナの状態が悪く幽けき音ですが一応鳴りました。
スピーカーの劣化もありそうです。


左手真ん中あたりを開くとデスクが出てきますが、ものすごく低いです。床に直接座っては使えないものの、椅子では椅子が高すぎてしまいそうなあまりにも実用性のないデスクでした。


部屋によっては更に入口側にミニキッチンを設置したところもあったそうですが、基本的にキッチンはありません。
水道はバスルームだけです。
そのバスルームは部屋の広さを確保する為斜めにカットされており、まるで船内のようなドアから出入りします。


バスルームにはきちんと浴槽もありますが、ユニットの小ささは昭和のビジネスホテルよりも狭いかもしれません。


この辺りのサイズ感は写真の通りですが、比較対象が参考にならないのは言うまでもありません。ここは爆笑するところですww。



カプセルには取り付け方法で種類があると述べましたが、横出入口のタイプだとまあ印象が違うだろうと感じました。

各戸の入り口の上には斜めに三つ並んだ丸蓋があります。
これは配管を通す時に使う穴で、通した後は蓋をしてあるとのこと。



その後各グループごとに撮影タイムになり、見学費用をお支払いする段になって主催者からお土産のご案内が。
建設中に入居募集用に制作されたパンフレットが存在するのですが、完全なものは残っていなかったものの断片を寄せ集めて完全なものになったため、精密なスキャンをして印刷したものを一部1000円で頒布しているとのこと。
一も二もなく買い求めました。

エレベーターで一階に降り、17時で管理業務が終了して正面が施錠されるため通用口から出て終了、解散となりました。
一階フロアはポストに個人情報があるため撮影不可でしたが、小さい正方形に区切られたポストにはそれぞれ斜めに長円形の差し入れ口が開けられているこの建物らしい意匠のポストでした。
ただし容量は非常に小さく、現代では全く実用的でないことと施錠の意味がないほど開口部が大きく、あまり盗難防止の意味がない感じでもありました。

通用口の扉も丸窓で、外構は床にびっしりと細かいタイルが貼られており、当時ならではの雰囲気を醸し出しています。

最後に正面から見上げた光景。


以下、主催者から聞いた話です。

・カプセルタワーを保存すべく、全140個のうち15個?を取得して管理組合の議決権を得た。

・2年程前に海外の企業が建物全体を取得して保存する話が出て来たが、借地権の建物であるため地主の意向で海外の買主はやめてほしいとのことに。

・解体は決定したがカプセルは取り外して保存することが決まっており、国内外から相当数の引き合いがある。

・カプセルのサイズは道路輸送可能なサイズで設定されており、当初の構想には平日は都心に置き、週末は郊外やリゾート地に移動させて使うと言うものがあった。

・「新美の巨人たち」放送後に見学予約が700件ほど入り、12月以降は抽選とした。

大変貴重な経験でした。

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