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黒と白と、ときどき朱(あか)

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世界で一番大好きで大切で、私を我が子のように愛情を注いでくれた。私も、結婚式には特等席に座って欲しかったし、子供が産まれたら「ほら初孫だよ!」って言って抱いて欲しかった。なのに…。
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黒と白と、ときどき朱(あか)~プロローグ~

 目の前には、白い箱が置かれていた。そして、その周りには親戚と思われる人がたくさん集まっ…

ふみ
3年前
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第1話~習字の「先生」ではなく、習字の「おばちゃん…

 幼稚園の頃、宮崎県日向市に住んでいた。  姉が習字教室に通っていて、いつもそれについて…

ふみ
3年前
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第2話~大キライな名前の練習

 自分の席ができたのは良かったけど、まったく面白くなかったし、楽しくもなかった。文字を書…

ふみ
3年前
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第3話~夏の小エビ捕りと、冬の書初め

 おばちゃんちの向かいには小さな池があった。山の上流の水が池に流れてくるように、水路がコ…

ふみ
3年前
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第4話~おばちゃん初の「鑑賞欄」

 中学2年生の頃。  部活から帰り、晩ごはんを食べ、リビングでパソコンをいじっていると、…

ふみ
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第5話~おばちゃんと目指した完全制覇

 中学3年生。この頃になると、いかにたくさん、誰よりも良い賞を、一番良い賞を取るかに必死…

ふみ
3年前

黒と白と、ときどき朱(あか)~第6話~橋名板

 宮崎市から中学校へ橋名のプレートを生徒に書いてもらえないかと依頼がきた。新しく宮崎に開通する高速道路から一般道路に繋がるIC橋のプレートらしい。  職員室では、とりあえず3年生全員に書かせ、その中から上手い人を選ぼうかと考えていた。と同時に、当時作品展でいつも入賞していた私と河野さんの名前が挙がり、全員に書かせることなく2人で手分けして書かないかと話がきた。  橋名の漢字とひらがな、竣立年月日の漢字とひらがなで4つ。2人で相談し、それぞれの得意分野である私が漢字を河野さ

黒と白と、ときどき朱(あか)~第7話~おばちゃんからの卒業

 高校に進学した後も、部活はソフトテニスを続けた。中学の時は特に強豪校というわけではなく…

ふみ
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第8話~準師範と師範

 おばちゃんの元を離れ、高校の書道部での練習が始まった。しかし、おばちゃんも長友先生も、…

ふみ
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第9話~初めておばちゃんが感情を出した日

 美容師はずっと前からの夢だった。記憶が正しければ、明確になりたいと思い始めたのは小学5…

ふみ
3年前

黒と白と、ときどき朱(あか)~第10話~お願いだからウソだと言って

 2012年1月31日火曜日。  その日入っていた予約が全て終わったのは夕方頃だった。最後のお…

ふみ
3年前

黒と白と、ときどき朱(あか)~第11話~突然の別れ

 現実を突きつけられた…。泣くしかなかった…。というか、まだどこにこんなに涙が残っていた…

ふみ
3年前

黒と白と、ときどき朱(あか)~第12話~私の中の壊れていく音

 本当だったら、私はもう習字なんて辞めているはずだった。仕事との両立も大変だし、ただでさ…

ふみ
3年前
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黒と白と、ときどき朱(あか)~第13話~葬式

 10時くらいに目が覚めた。 ―――いつの間に眠ったんだろう…。  昨日泣きすぎたせいか、瞼が重く、鈍器で殴られたように痛かった。頭もボーっとしている。体はコンクリートみたいに固まっているようだった。目だけ開けてボーっとしていると、寝心地が悪かった。 ―――そういえば、昨日はお風呂も入らず、着の身着のまま寝てしまったんだ…。コートも着たままだ。  寝返りをうった。コートが邪魔をして動きづらい。昨日のことを思い出し、また涙が一筋流れた。しばらくの間、そのままにし