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バレンシア伝統の堅守とは?(バレンシアに見た、プレッシングとブロック守備)

20/21 ラ・リーガ 第4節
レアル ソシエダ vs バレンシア

~バレンシアに見た、堅守のスタイル~

 バレンシアの伝統的な堅守速攻のスタイルは、個人的に好きなサッカーでもあります。特に、マルセリーノの時代のバレンシアのサッカーには一目置いていました。そして、今シーズンのバレンシアは特にその堅守の部分がかなり安定してきたという印象です。
 今回は、第4節に行われた対レアル・ソシエダにて、バレンシアのプレッシング(ハイプレス)とブロック守備が非常に素晴らしいと思ったので分析していきます。


スタメン(home : レアル ソシエダ)

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(away : バレンシア)

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結果 : レアル ソシエダ 0 - 1 バレンシア
( 前半 0 - 0、後半 0 - 1 )


バレンシアの守備
(プレッシング)

① 開始点
 バレンシアはプレッシング時、ハイプレス(超攻撃的プレッシング)とミドルプレス(守備的プレッシング)を使い分けていた。
 今回は、下図のエリアが開始点となる超攻撃的プレッシングについて分析する。

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② 陣形
 陣形としては、下図のように中盤がダイヤモンド型の4-4-2の配置となる。
 具体的には、ボランチのヴァスが相手アンカーをマークするためにトップ下の位置に上がり、DFラインの前のスペースをもう一方のボランチのコンドグビアがゾーンでカバーする。また、SHのムサ(右)とブランコ(左)は、相手SBと相手インサイドMFの間に立つ。

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③ スイッチと追い込み方
 プレッシングのスイッチとなる選手はSHのムサ(右)とブランコ(左)で、大外に立つ相手SBにボールが入ったところをアプローチする。
 このとき、FWのイ・カンインとマキシ・ゴメスは相手アンカーへのパスコースを消すように立ち、サイドにボールを誘導する。
 その後、ボールサイドに全体がスライドし、ボールサイドでマンマークとなる。マークの仕方としては、後方の中央の位置に立っていたコンドグビアが相手インサイドMFをマークし、SB(ガヤ、コレイラ)が相手ウイングをマークする。また、あらかじめ相手アンカーをマークしていたヴァスが後方に下りて中央のエリアをカバーし、代わりにボールサイドとは逆のFW(イ・カンイン、マキシ・ゴメス)が相手アンカーをマークする。

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④ ロングボールへの対応
 相手がロングボールによるダイレクトなビルドアップを行うとき、特にソシエダは前線の大外に立つウイングを狙っていたため、競ったSBに対してボールサイドのSH(ムサorブランコ)とアンカーの位置に立つコンドグビアがセカンドボールを拾うために密集し、ボールサイド側のCBが裏をカバーする。

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バレンシアの守備
(ブロック守備)

① 陣形
 バレンシアは自陣でのブロック守備時、下図のようにコンパクトな「4-4-2」あるいは「4-4-1」のブロックを形成する。
 このとき、基準点はボールと味方(ゾーンディフェンス)で、ブロックの縦の幅は約10~15m、横の幅はペナルティーエリアよりも狭く設定する。

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② サイド
 サイドのエリアでは、大外のボールホルダーに対して原則はSHのブランコ(左)、ムサ(右)がアプローチする。そのため、SBはあらかじめニアゾーンとなるエリアをカバーする。
 また、全体として陣形をコンパクトに保ちながらボールサイドにスライドする。

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 上記のように原則は大外の相手に対してSHがアプローチをするが、状況に応じては下図のようにSBのガヤ(左)、コレイラ(右)がアプローチすることもあった。
 このときは、相手SBのインナーラップに対してはSHのコレイラ(左)、ムサ(右)がニアゾーン(SBとCBの間のスペース)をカバーし、中央からの相手インサイドMFのハーフスペースからの飛び出しに対してはボランチのヴァスorコンドグビアがニアゾーンをカバーする。

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③ ライン間
 相手の縦パスにより、MFとDFのライン間にボールが入った時は、ボランチのヴァスあるいはコンドグビア、CB(ギジャモンorディアカビ)、SB(ガヤ左、コレイラ右)ですぐにボールホルダーを囲い込む。このとき、シュートコースをすべて消すように囲い込む。

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 ソシエダのビルドアップはリーガの中でのトップだと個人的には思います。その中で、バレンシアのハイプレスは、ソシエダの攻撃のタイミングや方向付けを行うアンカーのスビメンディを守備力のあるヴァスがあらかじめマンマークし、かつFWのイ・カンイン、マキシ・ゴメスも相手アンカーへのパスコースを消しながらプレスすることで、ボールを上手く外に誘導できていました。そして、サイドのエリアでは、それぞれがそれぞれのタスクをしっかりと遂行できていた思います。非常に効果的なプレッシングでした。
 また、ブロック守備の局面ですが、バレンシアのブロックはあのアトレティコと並ぶレベルにあると私は思います。バレンシアのブロック守備の素晴らしいところは、危険なエリアのカバーリングやペルムータ(カバーリングのカバーリング)が非常にしっかりとチームに浸透しているところだと思います。
 今シーズンのバレンシアのサッカーには注目すべきかもしれません。

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