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部分的な密集を活かした攻撃

20/21 セリエA 第27節
トリノ vs インテル

~トリノのブロック守備とインテルの敵陣でのポジショナルな攻撃~

 今回は、先日行われたセリエA第27節のトリノvsインテルにて見られた、トリノのブロック守備とインテルの部分的な密集を活かしたサイド攻撃の局面が非常に面白かったので、分析していきます。


スタメン(home : トリノ)

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(away : インテル)

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結果 : トリノ 1 - 2 インテル
( 前半 0 - 0、後半 1 - 2 )


トリノの守備
(ブロック守備)

① 陣形
 トリノは自陣でのブロック守備時、主に下図のようにコンパクトな「5-3」のブロックを形成していた。
 このとき、ブロックの横の幅(DFラインの幅)はペナルティエリアの幅ほどで、縦の幅(ライン間の幅)は約5m~10mだった。

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 また、下図のようにFWのヴェルディ、サナブリアもブロック守備に参加し「5-3-2」のブロックを形成することも多々あった。

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② 基準点
 守備の基準点はボールと味方で、味方との距離をコンパクトに保ちながらゾーンで構える。その後、下図のように主にMFラインの選手(バゼッリ、ルキッチ、マンドラゴラ)がボールホルダーに対して中央(ライン間)へのパスコースを連動して消すことでボールを外回りにさせる。

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③ サイド
 サイド(大外レーン)にボールが出た際には、主にWBのヴォイヴォダ(右)、ムッル(左)がボールホルダーへ寄せていた。(状況に応じてインサイドMFのルキッチ右、バゼッリ左が寄せることも)
 このとき、全体をコンパクトに保ちながらボールサイドへスライドさせ、ボール周辺またはゴール前のエリアでマークとカバーを的確に行っていた。

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インテルの攻撃
(ポジショナルな攻撃)

① 陣形
 インテルは敵陣でのポジショナルな攻撃時、基本的には下図のような配置となる。

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② プレー展開
 プレー展開としては、幅を使って敵陣内でショートパスによるポゼッションを行う。特に、この試合ではサイドのエリアから攻撃することが多かった。


③ サイド攻撃
 インテルはサイド攻撃を行う際、下図のようにインサイドMFのバレッラ(右)、ガリアルディーニ(左)が後方の3バックの外側(3バックの外側のハーフDFの位置)に下りてボールを引き出すシーンが多く見られた。このとき同時に、ハーフDFのシュクリニアル(右)、バストーニ(左)が大外の高い位置へ上がり、あらかじめ大外の高い位置に立っていたWBのハキミ(右)、ペリシッチ(左)は内側へ移動していた。
 その後、FWのルカク、ラウタロ・マルティネスもボールサイドにスライドし、ボール周辺のエリアに部分的な密集を作り出すことで効果的に相手DFラインの背後を取ろうとした。

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 また、下図のようにインサイドMFのバレッラ(右)、ガリアルディーニ(左)が大外レーンに移動したり、アンカーのブロゾビッチが3バックの外側へ下りることもあった。このときも、上記と同様にボールサイドに部分的な密集を作り出すことにより相手DFラインの背後を取ろうとしていた。

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 トリノは、ゾーンを主体としたコンパクトな「5-3」または「5-3-2」のブロック守備を形成する中で、MFラインを形成していたインサイドMFのバゼッリ、ルキッチ、アンカーのマンドラゴラの相手ボールホルダーに対する中央(ライン間)へのパスコースの消し方は非常に良かったと思った。また、仮にライン間へボールが入ってしまってもボールを受ける相手(ルカク、ラウタロが多い)に対してCBのリャンコ、ハーフDFのイッツォ、ブレーメルが的確にアンティチポを行うことが出来ていたと思う。
※アンティチポとは、パスの受け手を背後からマークし、その足下に入って来る縦パスを身体を前に入れて(あるいは足を出して)奪うプレー。

 一方、インテルは敵陣での攻撃においてサイドのエリアでの効果的なポジションチェンジからボールサイドのエリアに部分的な密集を作り出していた。これにより、一部で数的優位を保つことができ(例えば、右サイドでは相手WBが1人で大外のシュクリニアルと内側に絞ったハキミを見なければならない状態となる)、効果的に相手DFラインの背後を取ることが出来ていた。
 また、ボールサイドへの密集のメリットは、ボールを失ったネガティブトランジション時のカウンタープレッシングにも見られ、インテルがボールの即時奪還に成功したという場面が何度か見られた。


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