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【レポート】結果が出る!「肩の投球障害」セミナー〜機能改善から予防まで〜

こんにちは!大山ふみあき(@ThanksDailylife)です。

2021年9月19日(日)、TerraceJ治療協会セミナーにて「結果が出る!肩の投球障害〜機能改善から予防まで〜」と題してお話ししました。

*TerraceJ治療協会はこちら

今回はそのご報告。見逃した方もぜひご覧になってください。きっと臨床での投球障害へのアプローチにお役立ていただけます。

“肩はわからない”?を解消する思考法

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“肩は治りにくい”、“肩はわからない”ー。

スポーツによる障害のなかでもとかく「肩」に関するものは扱いにくいと思われがち。

それは肩が複合関節として機能し、全身の動きのなかで肩が負うリスクを考慮しなければいけないから。形態解剖学や機能解剖学の知識と考え方が総動員されます。


ですが、「肩の名医」として知られる筒井廣明先生は著書の中でこのように述べています。

症状を出している損傷部位は、パフォーマンスを遂行するうえで他の部位の能力低下のツケを払っているようなもので、「それがあるから」と責めるのではなく、むしろその部位に無理をかけ続けてきた「沈黙している怠け者」に対して上手に対処してあげることが良い結果を生む。

つまり症状の原因としての病態診断よりもむしろ、病態発生のストーリーを構築することが治療方法選択のポイントになる。

(『投球障害肩こう診てこう治せ ここが我々の切口!改定第2版(筒井廣明、山口光圀、牛島和彦)』より)

つまり選手の肩に負担をかけ続けた「物語(ストーリー)」を構築し、原因を把握。次に“「物語」をつくりなおす”ことが、治療法選択や再発予防につながります。


本レポートでは、選手におこった「物語」を理解するうえで必要な「5つの視点」をご紹介します。

投球障害から選手を救う「5つの視点」

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【病態鑑別】

肩の投球障害における病態鑑別の意義は、「手術療法の適応か否か」を判断するため。投球障害の9割は保存療法で対処されますが、なかには重大な組織の破綻があったり、保存療法に抵抗したりする場合には手術療法が選択されます。

もし構造的な破綻や急性の炎症があれば、「患部を守る」ことが最優先事項になります。肩の投球障害でとくに注意すべき病態はこちらのnote記事をご参照ください。

【機能障害の評価】

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病態鑑別と痛みの性質がわかったら、続いて患部(肩)の機能障害を推察します。

投球のほかにバレーボールやバドミントン、やり投げなど、腕をふりあげる競技(オーバーヘッドスポーツ)に特徴的な肩の機能障害は主に次の3つ。

・挙上位での肩関節内旋可動域の制限
・外旋可動域の過度な拡大
・腱板筋の相対的な筋力低下

それぞれの原因組織や痛みとの関連についてはこちらの記事をご参照ください。

【痛みの発生機序】“物語”をみつける

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通常、スポーツ障害の原因を考える際には、「個体要因」「トレーニング要因」「環境要因」にわけてみるのが有効です。

今回は個体要因にしぼって、身体的な面から障害発生にいたった「物語(ストーリー)」を構築していきます。


投球障害の患者さんは、構造的な破綻はみられないが、動作時に痛みを生じる場合がほとんど。その発生機序は次のように考えられます。

上記したような機能障害があることで、投球動作時の肩甲上腕関節の運動軸にブレが生じる。
 
関節包内運動が乱れ、微細な振動(メカニカルストレス)が発生。その振動を「痛みのレセプター(ポリモーダル受容器)」が感知して、痛みを感じる。

【問題解決の手法】

絆創膏、手当

痛みを出している組織とその機序がわかったら、次にその原因となる組織損や機能障害を解消しましょう。

具体的な手段は、緊張の高まった筋に対するストレッチや物理療法、関節運動を正常化するモビライゼーション、テーピングなどが選択されます。

機能改善を定着させるには、本人が行うホームエクササイズも必要です。

【再発予防&パフォーマンスアップにつなげる戦略】

ヒーロー

いよいよ、「投球障害を招いた物語」を、「投球障害をおこさない物語」へとつくりかえましょう!

ここで必要なのは、投球動作を成り立たせる力学的な知識です。


そもそも投球動作は下肢・体幹から上肢、ボールへと「力(エネルギー)」を順々に伝達していく流れ。

コンディションが崩れ、力を伝達できない状態(=力の伝達障害)にあるのに、無理にパフォーマンスを追及するあまり、特定の部分(肩や肘)に負担が集中して痛みを生じます。

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実際、私も臨床で対峙する投球障害肩の患者さんのほぼ100%に体幹や下肢の問題を抱えています。

つまり投球障害を根本的に解決するには、「力の伝達」をスムーズに行える身体環境に整えるのが肝心です!


「力の伝達」に関わる身体機能でとくに重要なのが、「胸郭」のはたらき。胸郭には「重心」が存在し、ひとの姿勢制御において中心的な役割をはたしています。

胸郭をしなやかに動かせることで、肩甲骨→肩→肘→手→ボールへとスムーズに力を伝達。安全でかつ高いパフォーマンスを発揮することができるようになります。

胸郭のしなやかさを回復するエクササイズがこちら(YouTube)↓

まとめ

TerraceJ治療協会セミナーのレポートとして、肩の投球障害から選手を救う「5つの視点」をご紹介しました。

まとめるとこちら↓

1 選手の肩に何が起きたのか?〈病態鑑別〉
2 肩にどんな「不具合」が起きているのか?〈機能障害〉
3 どうして痛み・障害を招いたのか?〈発生機序〉
4 どうやって痛み・障害を改善するか?〈対処療法〉
5 再発予防&パフォーマンスアップにはどうするか?

5つの視点でみることで選手の問題点を把握し、的確な解決策を導くことができます。

ぜひ明日の臨床でご活用いただければうれしいです。

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