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推しのおじさん

毎日、喫煙者が消費するタバコの本数ほどの自慰行為をしなければ精神が保たず、火照った身体を持て余し続けるだけの生活

独身。一人暮らし。会社員。彼女いない歴イコール年齢。借金有り。20代も後半に差し掛かって久しい。

アラサーにして遥か北からほっぽり出された僕は、東京で生活をすることとなり、頼るツテはなく、にっちもさっちもいかない日々にセーフティネットは存在しない

趣味はお笑い芸人のYouTube動画を見ることと、おませちゃんブラザーズというYouTuberを推すこと

モテない独身男性の趣味といえばアニメ、野球、政治、アイドルあたりが相場なんだと思うけど

政治はエンタメ的に詰まらないし、アニメ特有の言い回しは少し抵抗があった

アイドルを推そうかと思って坂道アイドルの動画を見てみたのだけど、すぐ「nkd46(中出し46)」を作ってアイドルを孕ませたり、それで出来た子供で学校を作って性春高校みたいにする妄想に脳をジャックされてしまい、話にならなかった。

事実、僕は妄想に脳をジャックされたままテレビの画面にアイドルを垂れ流して見向きもせず王様ゲームのアプリをダウンロード。

僕と坂道アイドルの王様ゲームをする妄想で自慰行為をすることとなる。



アプリのルーレットを延々と回し続け、「僕が与田の股間についた粉砂糖を舐めとる」という激レアのクンニリングス罰ゲームを引き当てたところで昇天した。

興奮を抑えきれずズボンを脱ぐことすら忘れ、久しぶりに床オナでフィニッシュを迎える。


ユニットバスに備えつけてあるフライパンほどの小さな洗面台に水を溜め、中性洗剤を掛けた。

スペルマの染みがついたスエットを洗いながら、「アイドルなんて推すんモンじゃねえな」と負け惜しみの言葉を吐いた。

その後も、楽器を弾こうとしてみたりスポーツをしようとしてみたり、色々な趣味を試してみたけどダメだった。

どんな景色も他人の言葉も、アダルトビデオの中にあるハウススタジオに成り下がってしまう。

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性欲しかない僕も人間ではあって、自慰行為をしていない時間については「何かを考え」たりもする。

その「なにか」は、できれば無条件で面白いものがいいし、ちゃんとした人間関係を築けた人生じゃなくても楽しめるものがいい。

だから僕の趣味はお笑い芸人のYouTube動画をみることだったり、いまやもう死語になりつつあるサブカル好みするようなエンタメを摂取することに落ち着いた。必然だと思う。

そんな僕が2、3年ほど前に出会ったのが、おませちゃんブラザーズというYouTuberだった。

おませちゃんブラザーズは、サブカルチャーを解説する30代のおじさんYouTuberで

僕の感想に説得力があるかは疑問だけど、編集や構成にもすごく凝っていて、「ちゃんとコンテンツの魅力や自分たちの気持ちを伝えよう」という意気込みを感じる人たちだ

YouTubeをバズるための道具じゃなくて、自分たちがコンテンツを届けたいユーザーを探す場所として使っている人たちだと僕は思う。

おませの動画を初めて見たとき、僕はサラリーマンを辞めてYouTubeの編集代行をしていた。

上の指示で動画を編集する下請け業だから収入も少なくて、日給1万円もいけば万々歳

法律上は自営業ということになるけど、実質はフリーターのようなものだった。

誰でも知っているような登録者100万人やら200万人やらのYouTuberの動画素材を編集するんだけど、まあ、なんというか。

僕の主観からして詰まらない動画だった。それでいて、世間にウケる理由もちゃんとある動画だった。

脱サラして動画編集を初めた僕は、なんというか絶望していた。

自意識過剰であることは分かっているんだけど

なんだか、自分が、たくさん排気ガスを出す燃費の悪い外車になったような気持ちになっていた。

そんな中でも僕が動画編集を続けてこれた理由のひとつ。大きな理由のひとつが、おませちゃんブラザーズだった。

こんなYouTuberもいるんだなあと。動画編集を続けてみようと自分を麻痺させなが生きて来れた。

結果的に僕は、エンタメ業界に排気ガスをたくさん出すような仕事を今もまだしているんだけど

でも、なんとか今、たくさん自慰行為をし続けられているのは、おませちゃんブラザーズのおかげだと思っている。

そんなふうに、自分にとって思い入れのあるYouTuberというものが初めて出来た。

おじさんYouTuberに出会って、コンテンツに感謝して

僕は、歳上のおじさんYouTuberを推してみようと思った。

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おじさんを推してみると、これがなかなか心地がいい。

女の子を推すときに生じる劣情のようなものが湧きようもないし、この子に承認されたい!!という気持ちも薄い。

ただただ幸せを願える。それでいてアイドルのように結婚して物語が終わることもなく、とても気持ちが安定する。

若い女の子を推すよりも(そんなに本気でアイドルを推した経験はないけれど)

挫折を味わったりしているおじさんを推す方が報われるものもあるし、同性だから性欲が関わってこないのが本当に大きい

僕のように性欲と自意識が肥大化していなくても、若い女の子に認めてもらいたい。みたいな欲求を追い求めなくてもいい心地よさは魅力的なのではないだろうか

おじさんにこそ、おじさんを推すことをオススメしたい。マジで精神が安定する。

アイドルを推すときに生じるオタク同士の競争とかオタクのヒエラルキーの感じとか、そういうものと「関係がなくなる」気楽さがそこにある

結婚をして、恋愛市場のようなものから脱出した気持ちって、こんな感じなんだろうか。

ただモテないだけなのに、独身なら「陰キャ」で結婚していたら「真面目な旦那さん」にステータスが変わるような感じ

僕はなんの努力もしていないし、人間としてなんの成長もしていないのに、対象や自分を置く場所を変えるだけでステータスがガラッと変わる。

僕という人間はなにも変わっていないのに、女の子を押していたのでは得られない気楽さを享受できている。

おじさんの推しって最高

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