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プロットとストーリー

リアルの教室と、オンラインで読書作文指導をする生徒の数が増えて、その指導のたびに「おぉ!」とうなってしまうような発見があって、きっと、主催者である自分自身が一番楽しんでいると思います。

しばらく間が空いているので、遡って先週の月曜日、リアルの中3男子の指導においてのお話をシェアしたいと思います。プロットとストーリーについて、僕も一緒に考える出来事でした。

数年前の天声人語について、要約と意見文を書くという課題をやることにしたようで(中1のころから、それをやるように周りの大人に言われていたが、取り組んでいなかったそうで)、初めて要約に取り組んだようです。

要約というと、なぜか文章を短くすればいいと思う人は多くて、抜き出した文をそのまま切り貼りして、意味の通らない文になることが多いです。彼のものもそういう感じでした。

読者の興味を引く導入部分、伝えたいニュース、その経緯と現在の結果、そして筆者の主張という流れでつづられることの多い、新聞の社説欄について、それはそれでやはりひとつの語りとしてきれいに作られたもので、創意工夫のある作品なのだと思います。切り貼りなんてしてとらえることのできるものではないのだと思います。

ここで、僕は、彼にプロットとストーリーという考え方を伝えました。二つの違いについて、プロットは「語られるもの」、ストーリーは「物語の筋」、というイメージです。ストーリーは、たとえば時系列準に出来事を並べたものととらえ、1→2→3→4→・・・という流れです。プロットは、このストーリーの時系列を、読者が面白いと感じるように、順番を入れ替えたりあえ場面を飛ばして描写したり、そういう創意工夫の及ぶ領域です。

『ある名探偵一行が休みを使って山荘にやってきます。そこでいろんな人たちに出会います。山荘の優しそうなオーナー、かわいらしいオーナーの娘、騒がしい大学生グループ、老夫婦、強面のおじさん、包帯で顔をぐるぐる巻きで自室にこもっている怪しい人物、到着の予定がまだきていないという客。夕食を食堂でとっていると、ぐるぐる巻きの人と強面のおじさん以外はいるみたい。強面さんの部屋にいってみると、そこにはサツ害されたおじさんが!ぐるぐる巻きの人の部屋はもぬけの殻。そこにこわいメッセージ。
その後、到着予定が遅れていた最後の客が到着。事件は、最後の客が犯人で、昔の怨恨を晴らすための計画だった。』みたいなのがプロット。

ストーリーとしては、被害者と犯人の間に、怨恨が発生する出来事が起こる→犯人が復讐の計画を立てる→それぞれ登場人物が山荘にやってくる→ぐるぐる巻きの人が実は犯人(すでに山荘にいたというアリバイトリック)→犯人、お部屋にこわいメッセージを書く→被害者をサツ害→遅れて到着のフリをする→いろいろあって事件が解決される、という感じ。

時系列にしてしまうとトリックも犯人もまるわかり。それもシュールで面白いかもしれませんが。プロットとして時系列を入れ替えたり、あえて描写しないところがあることで強調したいポイントやクライマックスを演出することができます。

話を戻して、天声人語においても、筆者の伝えたいこと、思いがあって、それにそって導入があったり比喩があったり、他の研究などと照会してみたりと、プロット的な要素があるのです。要約するとは、このプロットとして為されている部分を理解して、ストーリーにまとめ直す作業に近いのだと思います。だから、本文の順番のままにまとめる必要はありません。主題となる要点を手短に述べて、筆者の思いをまとめる。

「君も、たとえば塾の宿題ができていないとき、怒られたくないがための話をああだこうだ考えるでしょう。それがプロット。事実だけを取り出してストーリーとしてまとめると、矛盾が生じるところがある。それをいつも僕に指摘されるわけじゃない。僕に怒られたくないなら、正直に言ってもらうほうがいいんだけどね。」

彼は苦笑いとも、「あぁ、なるほど」と得心したとも取れるような笑顔を作って、要約をまた試みるのでした。


写真は、なんとなく。「ねぇ、○じめちゃん、この山荘ってコーヒーがおいしいのよね。出来合いのフレッシュミルクじゃなくて、きちんと生乳からオーナーが手作りされたミルクをコーヒーと合うように何回も試作されたんですって。口直しのためのお水も一緒についてきているし、細かいところまでコーヒーを楽しんでほしいっていう感じよね」「フレッシュミルクじゃなくて、オリジナルの生乳・・・。口直しの水・・・。そうか、わかったぞ!○雪!謎はすべて解けた!」
みたいな、何気ない会話から事件解決するワンシーンぽいなと思って。金○一くんすごい。

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