テラダ一家の宇宙旅行 その4 ◆老化、そして死に向かう下りのエスカレーターとは

マザーヴォイスの
《魂のアンチエイジングをすれば、心のサビが取れ、デトックスできて、身軽になれます。そして生まれた時から誰もが乗っている、死に向かう下りのエスカレーターから、少しのあいだ逆行して浮き上がっていられるのです》
この言葉にグッと興味はわいたものの、まだイマイチ意味がわからないテラダ・ファミリー。

 すると、ピカリィがくるくると回転しながらみんなの前に飛んできました。
 こんなに近くにいて、なにか明るい表情のようなものは伝わるものの、みっしりした光のもやのようなピカリィの身体の輪郭はぼやけていて、瞬間ごとにその形を変え、リズミカルに弾んでいるようにも見えます。

『じゃあ、説明するネ』

 ピカリィの体全体から光が照射され、宇宙の様子を映していた窓からサッと白く変わったスクリーンに、説明のムービーを映し出しはじめました。

『カラダと同じ、タマシイだって、まいにち老化してるヨ。生まれてから成長を続けてピークをむかえたあと、エクササイズをサボっていると、どんどん固くこわばっていくんダ。子供のときみたいに単純にワクワクドキドキしたり、ウワーッて感動できなくなル。そのうち、何を見てもどこに行ってもぴくりとも心が動かない、魂の寝たきり状態になっちゃうヨ』

 ムービーの中では、ハートでイメージされた魂の行列が、バベルの塔のような巨大な塔を登る上行きのエスカレーターに乗っています。
  成長してしばらくすると何の疑念もなく下りに乗り換え、どんどん下に降りるにつれしなびて固くなり、ぐったりと床に横たわったりしています。
「魂の寝たきり状態かあ…………あーっ、なんかわかるな。もしかしたら、パパの上司に、そんな人がいるかも。なんか若手がどんなにおもしろい企画をたてても、リスクはおかすな今までどおりの一点張り。ありゃ、がっちがちの老化状態かもなー。いや、もちろんパパは、そうならないよう気をつけてるけど」
 パパが言うと、ママが、あらっ? という顔をしました。
「でも、逆もあるんじゃない? うちのおばあちゃんなんて、若い男の子のアイドル大好きで、洋服だって派手だし、コンサートにだって行くし、毎日お茶飲み友達とおしゃべりして楽しそうよ?」
 ピカリィは、こくりとうなずくようにふわりと浮き沈みしました。

『スバらしいオバーチャン、魂のアンチエイジングしてルね。こんな感じに』

 大きな画面は、次のムービーを映し出しました。すっかり成長しきった魂がイキイキとエネルギーを放ち、おとなしく下に向かう魂の群れから離れ、ぽーんとジャンプして上に逆走したり、若者用の上行きのエスカレーターに乗り換えたりしています。下に向かう老いた魂たちはうらやましそうにそれをながめていますが、疲れているのか、自分たちも逆走しようとは試みません。
「たしかに、おばあちゃんのパワーはハンパないよね。それにくらべて…………」
 ケンタは、口をへの字に曲げます。
「ボクはコドモだけど、さいきん、すっごくワクワクドキドキしたことなんてないや。塾とならいごとと学校でへとへとだよ。そりゃ、ゲームは面白いけど、サッカーをしてた時に感じた感動ほどじゃないかも・・・」
 うなずくように、ピカリィは光を点滅させました。

魂も身体の若さも、じっさいの年齢とは、必ずしも一致しないヨ。魂のほうが、肉体よりも振れ幅がオオキイ。魂のアンチエイジングを続けていたら、いくら年をとったって人生は楽しみに満ちテル。逆に、よどみを放置してたら、子供だって老人レベルになっちゃウ。魂のアンチエイジングに、早すぎることも遅すぎることもないヨ』

 ピカリィがくるりと宙返りすると、ふわりと黄金の渦、風が巻き起こります。

じゃあ、いまからピカリィとミナサン、一緒に宇宙旅行に出よウネ。そして、魂のエクササイズ!! このツアーが終わるまでに、魂のよどみがツルピカになっているのを目指そウ!』

 パパ、ママ、マコ、ケンタの四人はどうしようか、と顔を見つめあいました。
「宇宙に行くなんて、ちょっとこわい。けどなんだかわくわくするな」
「そうね、もうここまで来ちゃったし、悪い人? じゃなさそうだし、ママは若返り、ちょっと興味あるわね」
「うーん。じゃあ、せっかくだし、魂エクササイズがんばっちゃう?」
 最初の疑念もどこへやら、なにやらみんな乗り気になっています。
 もしかして、このノリの軽さのおかげで、テラダ家がこの旅行のメンバーに選ばれたのかもしれません。

 さあ、あなたの魂の準備はOKですか?
 これからみんなと一緒に、魂のアンチエイジングの旅の始まりですよ。
 どんよりしたよどみを捨て去り、ツルピカの魂を取り戻しましょう。

 そうして、もうひとつ、大切なこと。

 人生でもし、思いどおりに行かない、とてもとてもつらい目に遭ってしまったら。
 自分から魂が感じることをやめて、冷たく、しなびていくことを選びそうになったら。
 悲鳴もあげられない、助けも求められない。
 そんな時には、ぜひ、ココロの救急箱をあけてください。
 魂のアンチエイジングパワーを、サバイバルのツールとして使うのです。
 生き延びていくために。
 カラダだけではなく、自分のココロを救うために。

 それは、ピカリィの別の顔、日本語ラップのメッセージで。
 癒しのアンチエイジングと、サバイバルのレスキュー・ラップと。

 この旅では、その二つを体験していきますよ。

その5 ◆ステップ1 月への旅 1.Mind maintenance【魂のアンチエイジング】


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