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ショートショート

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5秒で結末を迎える140字小説〜中編小説まで「ふふっ」「おおっ」「なるほど」「そう来たか」と思える作品をまとめています!
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2021年8月の記事一覧

『あなたのストレス、お売りください』ショートショート50

「ざっと、30万円ですね」 「30万!?安くないですか!?」 納得がいかなかった。 最低でも100万円にはなると思っていた。 期待し過ぎ、期待外れも甚だしい。 「これまでの方と比べると……このくらいですね」 どうやら私はまだまだらしい。 溜まったストレスを換金してくれるお店。 また換金しにこよう。 ー完ー ■あとがきTwitter用に140文字で作成したショートショートです。 noteとTwitterの違い(面白さ)は、同じ作品でもnoteはタイトルで惹

『1000円カット』ショートショート49

「本当に切って大丈夫ですね?その人との関係」 1人につき1000円で縁を切ってくれる『1000円カット』の店に来ていた。 「は、はい。切ったらどうなりますか?」 「2度とあなたの目の前に現れることはありません」 「……死んじゃうのですか?」 「企業秘密です」 1000円を手に、店を後にした。

『走れメロス2021(冒頭)』ショートショート48

メロスは炎上した。 必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬとツイートした。 炎上した。 メロスには政治がわからぬ。 炎上した。 メロスは村の牧人である。 Instagramに山々と羊たちの写真や羊のミルクで作ったチーズ料理の写真を載せて暮らしてきた。 けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。 きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのシラクスの市にやって来た。 メロスには父も、母も無い。女房も無い。 十六の、陽気な妹と二人暮ら

『嫌い、私』ショートショート47

「たぶん、本当に嫌いなのは私自身」 彼女の言葉が忘れられない。 「嫌い」と発した彼女が最後に残した言葉だった。 あれから3年が経ち、やっとその意味が分かった気がする。 誰かを受け入れられないのは、自分の嫌いなところがその人に映っているから。 誰かを好きになる前に、まずは自分からなのだろう。 ー完ー ■あとがき Twitterサイズ、140文字のショートショートです。 相手の嫌いなところは、自分の嫌いなところであることも少なくありません。 逆に、相手の好きな

ぼくたちの、夏。【#2000字のドラマ】

「やば!遅刻!」 急いで着替えを済まし、自転車をかっ飛ばして学校に向かった。 ジリジリと照らす太陽にやられ、ダラダラと汗が止まらない。気温は30℃。そりゃあ汗が止まるはずもない。息を切らしながらも学校に着いたのは9時10分。予定より10分も遅れてしまった。きっと2人は怒っているに違いない。恐る恐るプールへ足を運ばせる。 プールの近くには野球部らしき坊主頭の少年が1人いるだけだった。なんだ。2人も遅れているのか。僕は安堵した。すると、 「ごめーん!遅れた!」 こんなに

『女児の奇妙な冒険』ショートショート46

「ちぃちゃん、一人でおつかい行ける?」 「うん!」 「じゃあタケシおじさんのお店で卵買ってきてくれるかな?」 「はーい!」 「ただいまー!」 「おかえり!大丈夫だった?」 「なんかね、ずっと誰かに見られてる気がしたの」 時が流れ。 今度は私が初めてのおつかいをこっそりカメラで追いかけていた。

『「、」と呼吸』ショートショート45

「作者が『、』をどこに置いているか意識してみてごらん。その人の呼吸や生き方が見えてくるはずさ」 先生の言葉をその時は理解出来なかった。 それから文章を書くようになって何となく分かってきた。 大事にしていることや一番伝えたいことを。 今感じるのはそんなところ。 たかが「、」されど「、」かな。 ■あとがきショートショートを書いてから、昔noteに「、(読点)」の大切さを書いていたことを思い出しました。 文章を扱う人にとって「、」の扱い方は重要です。

『重い人』ショートショート44【オリチャレ14】

重い人が苦手。 「重い人が苦手と言うならさ、軽い人は得意なわけ?」 「えっと……」 言葉に詰まる。 自分のキャパを超えるほどの想いを伝えられたり行動を取られたりすると距離を置きたくなる。 でも逆に「自分への関心が希薄な軽い人が得意か」と言われたら、どうだろう。 重くても、想いが大事なのかな。 想い人。 ■あとがきTwitterに載せたものを一部リライトしました(140文字以上にしました) 「重い人が苦手と言うならさ、軽い人は得意なわけ?」 どうでしょうか?

『シアワセ』ショートショート43

死合わせ。 「ミーンミーン」と元気に鳴く彼は、明日死んでしまうかもしれない。 仕事で「ウーン」と唸る僕は、明日死んでも良いかもしれない。 「おつかれ!」「冷たっ」頬に缶コーヒーを当てられハッとする。 「いつもありがとな!」と先輩。 ほっとして、生きがいは案外身近にあることに気づく。 幸せ。 ー完ー ■あとがき死と隣り合わせのセミと生について考える僕のシアワセについて書いてみました。 上から読むと生に向かう様子で下から読むと死に向かう様子を示しています。 死