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RPA勉強会!RPALT広島~RPA × 職業訓練~ の覚書

 この記事は、2021年1月18日(月)に開催された、RPA Communityのオンラインイベント「RPA勉強会!RPALT広島~RPA × 職業訓練~」で、熱い思いと素直な感想が、あまりに興味深かったので、イベントレポートを作成しました。これは、RPAに限らず、教育や人材育成に参考になる話だと思います。

動画は、Youtubeで公開されています。

◆労働行政の枠組みとRPAの職業訓練

登壇者:株式会社ビットゼミ 吉田豪

 2020年9月16日から2021年1月15日の4カ月間行われた、RPA職業訓練についての情報です。

1.労働行政の枠組み

 労働行政は、マクロな産業構造の変化に対応して、労働者の知識技能の習得を支援し、労働移動を可能にし、このよう安定を目指します。

 職業訓練の対象も多様であり、求職者向けだけでなく、在職者向け、教育機関で実施するもの、企業内のOJTとして実施するものもあります。今回実施したRPA初級エンジニア養成科(定員20名)は、委託訓練という枠組みで実施されました。

 職業訓練は、急激な社会変化によって、需給のミスマッチが発生することが危惧されています。これから目指すべき職業訓練は、自ら新しい技術を学習し続けて、就業先の業務に適応したのちに、自ら改善していける人材の育成だと考えています。そういう意味で、事務職の未来像である市民開発者や、RPAを使用する業務担当者の育成というのは、この方向性にフィットしたものだと思います。

 突飛な理想論かもしれませんが、将来新たな職業を定義しながら新しい労働市場を創造することを目指せないかと、夢を大きく支援をしているところです。

 最終的には、すぐに人材が欲しいという企業にも、採用を少し待ってもらい、求職者もすぐに働くのでなく少し学んでから働くという、ともに価値があると思っていただける職業訓練が私の課題と考えています。

2.今回実施した訓練

 訓練は、幅広い職種に対応できるように基礎力を習得し、応用力は実務についてから学習するとを前提にしていましたが、RPAやVBAの学習は、基礎と実務の段差が大きすぎて、もう1ステップ学習期間が必要だと感じています。その受け皿として、ユーザーグループやユーザーコミュニティの役割が大きいと思います。

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 「使える証明が欲しい」ではなく、「使える実力が欲しい」というのが訓練生の声で、ツールを使えるようになる楽しさを感じていただければ、自然とコミュニティの活用とか、継続学習に向いていくものだと、訓練生から教わりました。

 あるべきカリキュラムとして、受動的な「知識技能習得型」から回答のない課題の解決に取り組む訓練への転換を図って、時代の要請に答えられるようにしていきたいと思います。

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 最後に、広島県高等技術専門校の池宗校長先生のお言葉です。

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◆RPA教育の実際

登壇者:おーいのぶよし (simplework ワークデザイナー)

 RPAの推進は、本業を抱えながらやるのは難しい。これからは、地方でも専属のRPAエンジニアが必要なのではないかと考えていたところ、職業訓練でRPAエンジニア育成の講師のオファーがあり、10日間、60時間のカリキュラムを作成しました。ツールは、BizRobo!を使用しました。

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1.業務の本質の理解
 「業務効率化」「業務改善」「業務見直し」と、改めて”業務”とは何かということを説明しました。業務は、インプットからアウトプットまでがあるという業務の構造を伝え、業務改善にあたっては手段を目的としないことを伝えてます。

2.業務プロセスの可視化のまとめ方

 ビジネスプロセスを取りまとめるやり方として、BPMN(Business Process Model & Notation)を簡単にしたものを紹介しています。

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 演習では、ボードゲーム「HANDS」をやってもらい、そのルールをプロセスにしたらうなるのかをやってもらいました。自分でプロセスをまとめるんだという意識をしっかりつけていくようにしました。

3.知識習得のステップ

 ・STEP1 プログラミングの基本動作の理解
 ・STEP2 ツールの利用方法の理解
 ・STEP3 ツールの実装機能の理解(※自分がよく使っている機能を厳選)
 ・演習 ひたすら手を動かして覚える
  (イメージしやすいようにシナリオをしっかり組んでおくのが大事)

 演習では、敢えて訓練生へ手順書の配布はしていません。自分のやり方を見ながら、ついてきてもらうというやり方を行いました。訓練生からは、やり方がわからないとクレームをいただきましたが、私は手順書を見ないとわからない人に育ってほしくないのと、RPAの概念をしっかり理解してほしいので、手順書ではなく、回答ファイルとデータの流れを説明するロボット構成図を渡しました。結果、訓練生の習熟度が上がったなと感じています。

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4.復習&実践演習
 6日目から9日目までは、受講者のペースに合わせて復習あるいは演習に取り組んでもらいました。7日目、8日目は一日中質問対応に追われたのが楽しい経験でした。

豪先生のコンセプト「人間力を究める!」

自走でRPA開発が行えるようになる!

 自走開発というのは、学習の5段階で、考えなくても無意識でできるレベルで、 自分で調べて解決できるところを目指してほしい。

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5.他社ツールの理解
 訓練生には、今後の勤め先で使うのがどのようなRPAツールであっても開発していける能力・マインドの醸成が必要です。

 ツールによって機能の際はあると思いますが、大まかな動きは一緒です。呼び方が違うだけなので、比較表をまとめました。

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6.訓練生の技術習得

 訓練後、RPAの習得レベルとして、「変数の操作」「条件分岐の操作」「繰り返しの操作」は、まあまあ一人でできるレベルまで頑張って上がってもらいました。応用の部分である、文字変換とか正規表現の操作については、もう少し時間が必要かと思いました。

7.最後に

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◆地方のRPA人材の需要と人材業者としての試み

登壇者:松尾茂樹(人材会社)

1.地方のRPA人材の需要

・コロナ禍による圧倒的な変化
 求人の絶対数は下がっているが、即戦力へのニーズは上がっています。育てられるキャパがない会社が増えています。
 慢性的な停滞感、無気力感があることが一番危険だと感じています。

・私見 RPA案件の状況
 既存の業務の自動化は、既存社員で対応するものと捉えているお客様が多いが、使いこなす社員がなかなか育たない。人材業者が対応する方法としては、社員の技術力を上げる支援をする(トレーナー)という方法と、社員の代わりに作る(設計・構築エンジニア)という2パターンあります。
 社内でRPAに懐疑的な方もいらっしゃるので、最も必要なスキルは、ユーザー目線でサポートできるコミュニケーション力が大切です。

・私見 RPA人材の需要
 基本的に、RPAを表面に出した案件はほぼありません。こちら側から提案した案件がほとんどです。隠れているニーズにアプローチする方法が大切。

2.人材業者としての試み

・RPAにこだわらない
 既存のエンジニアのプラスアルファとしてRPAのスキル、あるいはベースのスキルとして考えている。

・オンラインフル活用
 コロナ禍の影響で、一人の求職者に提供できる案件が1つか2つ紹介できればいい方なので、オンラインで、企業と求職者が「ひと」で繋がるプラットフォームづくりに向かいたい。

・一緒に仕事化していきたい
 今後、人材業者はこれまでのやり方では無くなると思っています。人と仕事と企業を結びつけるプラットフォームを一緒に作りたいと思っています。RPAサポートセンターがオンライン上で作れないかと思っています。
 自分がやりたいこと、得意なことを発信し続けることが大切で、人材業者は、セルフプロデュースを支援することが必要だと考えています。

◆受講者全体の実習感想まとめ

生徒:林さん

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 事前にプログラミングに関する知識がほとんどない状態からスタートで、ループ、条件分岐の動きを理解するのが大変でした。手順書がない状態で、1週目はかなりきつかったのですが、2週目になって、質問ができるレベルにRPAがわかってきたという状態になりました。

 演習の内容が、実務でどのように役に立つのかわからないという声もあった。

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 変数という考え方が難しかった。

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◆ PC触ったことのないやつがRPAやってみた

生徒:平澤さん

 エクセルのIF関数も使ったことがなかったが、システム関連の業務にかかわってみたいと思い、受講しました。

 RPAを学んでから世の中を見まわしてみると、色々なものが既に自動化されていることに気が付きました。iOSのショートカットとか、身近にたくさんRPAに似たものがあるので、学び続けていきたい。就活も、RPAで自動化できないかなど、考えることができるようになった。

◆元理系出身販売員がRPAやってみた

生徒:田口さん

 RPAという言葉は、ハローワークで勧められて始めて知りました。

 どうしたら求めたものができるか、考え方や組み方が難しいと思いました。操作の名前の英単語の内容が呑み込めないまま次に進んでしまったりするのが難しいところでした。ただ、大学時代、化学を専攻しており、実験をしてレポートをまとめる力が、RPAの学習に役立ったかもしれません。

 考え方はどこでも使えるものなので、いろんなものを触ろうかなと考えています。

◆ExcelVBA活用OLがRPAやってみた

生徒:林さん

 VBAを使っての業務効率化を進めていましたが、職場にVBAを使える人がいないと、自分の退職後に使われなくなってしまうことがあります。もっともっとみんなが簡単に組めるものがあれば業務の効率化が進むのではないかと思い、学校にきました。

 実際にRPAに触れてみると、誰でもできるものではないなと思いました。1週目では、自分で1から作るのは発想力が大切で、私には難しいなと思いましたが、2週目にはフロー図を見ながら普通に作れるようになりました。パターンを組み合わせていくやり方で、UiPathを使って、自分で作れるようになりました。

◆締めの言葉

おーい先生

 私も、教えてる中で皆さんからすごく気づきを頂いたので、お互いにレベルアップできたのかなと思ってます。

 大事なのは、継続学習というところなので、今後どうやって実現するのかというのも自分たちで考えていかないといけないのかなと思ってます。

 今の環境だから、自分たちがどう動くのかというのも思考していかなければいけないのかなと思います。そういう意味で、興味を持つところからスタートしていくのが大事なのかなと思います。

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