読書めも 松原隆彦著『宇宙とは何か この世界はどこまで本当か?』
私の読書メモを元にしてまとめてみました。実際に書かれている内容と異なる箇所があるかもしれませんが、面白そうだと思われましたら、本書を読んでみてください。
SF小説、漫画、アニメ好きだけど、最新の知識が怪しいという人だったら、ぜひとも読んでほしい一冊です。宇宙理論や、量子論、数学をからめて、楽しく説明されています。
なぜ夜空は暗いのか
ぼーっとしている人には、最初にこのヘンテコな質問の意味がわかりません。(私も含め)
無数の恒星があるのなら、夜空を更に多くの星が埋め尽くし、もっと明るくなるはずです。なぜ、それらの星の光が届いていないのかという問いかけです。
この単純な問から、興味を深めていきます。
宇宙の誕生
宇宙の誕生は「ビッグバン」によるものだと考えている人は、新しい知識を得ることができます。
ビレンキン仮説では、箱に入っていたボールがある一定の確率で外に出てきてしまう量子トンネル効果を元に、無から宇宙も誕生したとしています。また、宇宙同士がぶつかって生まれたというエクピロティック宇宙論などが紹介されます。
宇宙は人間に都合よく微調整されている
自然界には、測定によって初めて決まる定数が存在します。宇宙を形作るパラメータは全部で40個ありますが、その値がどの様に決められたのか、いまだに説明ができていません。
例えば、重力定数や光速度など、その値が今と違っていたら、宇宙は成立しなかったかもしれません。また、水だけが氷(個体)になると、体積が増えて水に浮くという特性は、生物が生き残るために非常に重要な役割を果たしました。
それを説明する試みとして「人間原理」があります。「人間が存在するんだから、宇宙はこうなっていないとおかしい」という考え方です。
「人間原理」にはいくつかの説があり、「最終人間原理」では、「知的な情報処理をするものが、宇宙の中にいつかは存在しなければならず、一旦存在するようになればそれはなくなることがない」と、運命論的な感じがしますが、他の分野でも見られる考え方でもあります。それだけ説明が難しいということだと思います。
マルチバース
SF好きなら、最新の宇宙論でマルチバース(多元宇宙)はどの様に説明されているのか、知っておくことはとても重要です。カオス的インフレーションや、エクピロティック宇宙論などは、基礎知識としておきましょう。
また、ストリング理論(超ひも理論)の説明があります。劉慈欣著『三体』では、11次元が出てくるのですが、超ひも理論では、この世界は10次元または11次元のひもでできていると言います。
楽しい研究
物理学や数学の研究者には、高次元空間を自然に認識し、ぐるぐる回せる人がいるそうです。その能力は、努力や経験による部分もあるでしょうが、一般的な常識を無視して考える力があるからかもしれません。
松原教授は、宇宙の変化を計算するのに、以前はコンピューターのシミュレーションを使っていましたが、最近は手計算で行う方が面白いそうです。研究のやり方は様々ですが、宇宙が好きという気持ちと、イマジネーションをどこまでも広げ、楽しむことがが大切だと思います。
参考図書
ブライアン・グリーン『エレガントな宇宙』
R.P.ファインマン『光と物質のふしぎな理論 私の量子電磁力学』
松原隆彦『図解 宇宙のかたち』
ロジャー・ベンローズ『皇帝の新しい心』