Holy Ground

もう解散してしまったけれど、GARNET CROWは僕の大学時代の一部だった。

エンドレスで聞いていた時代があった。自分があの世に何かCDを持参できるなら、迷わず持っていくと今でも思う。

GARNET CROWは不思議なバンドだった。

Single曲単体ではあまり魅力を感じないのも多いのに、初期のアルバムは完成度が異様に高かった。初めは何とも思わなかったのに、聞き続けているうちに突然に好きになる曲が幾つもあった。

GARNET CROWは不思議なバンドだった。

Single曲は全然好みではないのに、カップリングの曲の完成度が異様に高いことが何度もあった。

むしろカップリング曲を聞くためにsingleを買いそろえた。大学の間、ずっとGARNET CROWばかり聞いていた。

大学1年で大失恋したとき、ふっと聞いた"Holy ground"という曲の歌詞が心に染みた。

~ただ焦がれるように求めてた日々はするり蜃気楼の向こうへ
今日が終われば今日へ、出遭う事ことのない夢を見ては まだ過ごすならば
与え続けることでしか 満たされない聖地へ辿り着こう~

はじめは何とも思わなかったはずなにに、気づいたら何度も聞き返していた。心の整理がつくまで、泣きながら繰り返して聞いた。何度も、何か月も。

そのあと自分が与え続けたとは思わないけれど、不思議な縁で振られたはずの女性(Holy groundを聞く原因となった女性)と結婚した。

GARNET CROWの後期くらいの曲はどうも自分には魅力が薄くなったこともあり、昔の曲を再生することはあるけれど回数はだんだんと減っていった。

その間、色んなことがあったけれど、妻の最初の妊娠をする。

自分の子供だけは健康に生まれると、何故か思い込んでいた。でも、幸せな時間は短くて、妻の最初に妊娠は死産に終わった。夫婦で何日も泣いた。

僕は生きて会えなかった我が子の、小さな小さな亡骸を火葬場で見送りながら、せめて骨だけでもこの世に留まってくれることを泣きながら祈り続けた。そして小さな骨が自分の掌に残ったことを、神に感謝した。

GARNET CROWが解散することを知ったあと、ituneのライブラリを整理中に何気なくHoly groundを再生した。

~不確かな気持ちを抱えながら 家路を辿りながら昇華していく
守るべきもの持たないなら 何を祈ろうか…
深い傷よりもいつの日にか 愛しい気持ちが残るように
明日がくればまた明日へ 優しい方へ倒れこんで行けるように
いつかその足で歩いて行ける 時が来たら聖地へ辿り着ける?~

再生を始めた瞬間から、涙が止まらなかった。

守るべきものを失った日々に絶望しながらも、虚ろな気持ちのまま、ただ使命感のみで僕は仕事を続けた。家では泣きながら朝には普通の顔をして出勤して、そんな毎日を続けながら、ある日僕は壊れた。

聖地が見つからなくても時間は過ぎゆき、心の傷も表面上は見えなくなっていく。そうでなくても、僕たちは歩みを止めてはいられない。どんなに悲しくて、絶望の毎日でも。

仕事が出来なくなって、自分の思っていたような理想の人生を手放して、そこから、もう1回少しずつ歩き始めることが出来た。

何年か経って、小さな幸運を積み重ねて僕たち夫婦は子供を授かることができた。不安要素が多かったけれど、出産のその時まで絶妙なタイミングや僥倖に恵まれ続けた。

「上の子が守ってくれたんだね」と妻と話していた。随分と時間がたって、今は二人の子供の育児に追われても、生きてこの世に会えなかった僕の長女のことは忘れられない。多分、あの子がいるから僕はいつ死んでも大丈夫だって気もしている。

子供たちが物心ついたら、大切なお姉さんのことを娘に伝えたい。生きて会えなかった大切な長女は、今もリビングの一番良い場所で僕たちを見守ってくれている。

いつか、必ず僕も長女のそばに行く。その時には、この数十年傍にいられなかったお詫びと、家族を守ってくれた感謝を伝えたい。そして、今度こそ君のそばに居たい。いつか、どこかの聖地で会える日を楽しみに待っている。

#眠れない夜に


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