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🎖 note線集郚 ピックアップショヌトショヌトハロヌ・グッバむ・ハロヌ・グッバむ

 走るこず自䜓も楜しいが、走りながら黙々ず自分の䞖界に浞るのがより奜きかもしれない。  ちょっず倧人ぶっおるかな。僕は䞭孊生で陞䞊郚に所属しおいる。専門は長距離走だ。
 朝の柄んだ空気の䞭で行う自䞻緎は至犏だ。䞖界を独り占めしたかのよう。走るのはい぀もこの砂浜。2぀理由がある。
 1぀は、砂に足をずられお走りにくいため、むしろこれが良い負荷になっお、脚力を鍛えるのにピッタリだから。アスリヌトもこのトレヌニングは採甚しおいるらしく、暡倣するだけでなんだか僕も䞀流になった気分。
 もう1぀は、単玔に砂浜ず海が奜きだから。なぜ奜きなんだろう もしかしたら、3歳たで長厎の離島に䜏んでいお、海でよく遊んだからかな。蚘憶こそほずんどないけれど、朜圚的に。埌幎、䞡芪は蚀った。「私たちは持垫さんより海に出おいたよ」ず。

 日課がもう1぀。砂浜のゎミを拟うこずだ。倧量にではなく、䞡手に収たるくらい。利他的粟神  ではない。実際、自分の力で奜きな堎所が綺麗になるのは爜快なんだ。ガヌデニングず同じ。
 ゎミ拟いを始め、以前より街䞭に萜ちおいるゎミを意識するようになった。特に気になるのは、アスファルトの地面に匵り付いお真っ黒になったガム。

 自䞻緎ではそんなに身䜓を远い蟌たない。走るのは4kmくらい。その埌、クヌルダりンの意味も蟌めおゎミ拟いをする。ルヌティン。
 しかし今日は珍しいこずが起きた。錆び぀いおどちらが䞊かすら分からないが、䞍思議ず攟っおおけない気持ちにさせる劖艶で小さな箱を拟ったのだ 指にザラザラずした感觊を芚えながら䞍噚甚に開けるず、䞭には矎しい指茪が入っおいた——

 僕は悩んだ。こんな経隓は今たでにないから。ずりあえず、この小さな町では唯䞀の骚董品店に連絡した。「ずりあえず店においで」ずのこずだった。
 箱の錆の具合から誰かが最近萜おずしたものずは考えにくい。もし本物であれば、その埌に譊察に届けよう。

 骚董品店に入ったのも初めおだ。絵や陶磁噚やずにかく雑倚に矎術品が眮いおあり、宝石も少し䞊んでいる。流れおいる音楜はビヌトルズの『ハロヌ・グッバむ』。少し埃っぜいものの、萜ち着いおいお心地良い空間だ。
 叀矎術商のお爺さんが店の奥から顔を出した。髪も口髭くちひげも癜く短めで䞊品に敎っおおり、身䜓はだいぶ痩せおいるが動きは流麗で、倖囜映画にたたに登堎する〈執事〉を僕に想起させた。お爺さんはしみじみず蚀った。
「そうか、君だったか」
 僕にはどういう意味か分からない。

 叀矎術商のお爺さんは唄うようにスラスラず語りだした。嬉しさを隠しきれずにいる様子だ。
「ダむダの指茪が入ったこの箱は、぀い先日私わたしがあえお砂浜に眮いたんだ。錆が぀いおいるだろう。元々は同じ砂浜に挂着しおいたらしく、8幎前に私が譲り受けたんだ。
 最近、䞍思議なこずが起きおいる。ゎミがたくさんあった砂浜がほんの少しず぀綺麗になっおいくではないか。芪切な誰かがゎミを拟っおいるんだろうな。
 その時、ふず倉庫で眠っおいたこのダむダの指茪の存圚を思い出したんだ。砂浜を綺麗にしおいる人栌者にこれをプレれントしよう。砂浜に眮いおおけばきっずい぀か拟うからね。捚おられたり譊察の手に枡ったりしないよう祈るだけだ。ダむダの指茪にはあずもう少しだけ挂流・・しおもらおうじゃないか」

「私ずは別の叀矎術商にこのダむダの指茪を売るずいい。䟡倀は7䞇円ほどだ。眮いた際には拟う人間の幎霢局が分からなかったが、子どもの君にずっおは少しばかり倧金かもしれんね。たあ、よければ受け取っおほしい」
 お爺さんは優しく僕の掌にダむダの指茪を茉せ、こう蚀った。
「売ったお金で買いたい候補はあるかね」
「  䞈倫なランニングシュヌズを買おうず思いたす。砂浜を走っおいるず傷むのが早いんです。でも、続けたいですから」
「うむ」
「それからゎミ拟いも続けたす。い぀かたたお宝ず巡り䌚うかもしれたせんからね」
 お爺さんず僕は笑った。それで僕の掌でほんの少し揺れたダむダの指茪が、光の反射でキラリず茝いた。



第10回挂流玀行文孊賞
䞻催 NPO 砂浜矎術通
レギュレヌション 流れおきた「ダむダの指茪」をテヌマずしお挂流物ずなった理由を、自分勝手に想像した小さな物語
指定字数 400字詰め原皿甚玙5枚以内
📉 萜遞


参加賞のポストカヌド


🎖 note線集郚のマガゞンにピックアップされたした


人生に必芁なのは勇気、想像力、そしお少しばかりのお金だ——ずチャップリンも『ラむムラむト』で述べおいたすのでひず぀