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ヤングケアラーの君へ

はじめに

ヤングケアラーという言葉に明確な定義はないようですが、ここでは家族や身近な人の介護を行っている未成年を指すことにします。

こんにちは。
私は小学2年生のころに、兄が右半身不随の知的障害者になり、それ以来、2016年に兄が44歳で亡くなるまでの30年以上にわたって、両親とともに在宅介護を経験しました。
前述の定義でいえば、私はヤングケアラーだったことになります。当時はそんな言葉はなかったですし、そもそも今のようにインターネットも普及していなかったため知る術もありませんでした。

私は今は介護・障害福祉に特化したエンジニアをしています。
詳しいプロフィールは以下をご参照ください。
https://fukumura-kaigo.studio.site/

こんな私が、今のヤングケアラーになにか伝えられないかを考えた結果を本記事にまとめたいと思います。

同じような境遇の人は他にもいます

「友達は自由に遊んでいるのに、なんで自分は家族の世話をしなくてはいけないんだろう」「なんて自分は不幸なんだろう」と思っていますか?私は思っていました。介護している人(私の場合は障害者の兄)を恥ずかしく思って存在を隠し、友達に言うこともありませんでした。

高校生になったとき、たまたま妹さんが障害者である友達ができました。その友達も自分から言っていたわけではなく、共通の友達からなにかのきっかけで聞き、「実はうちも」と話したことは今でも覚えています。私はずっと困っていましたが、同じ境遇でない友達に言っても仕方がないし、この友達ができたときに、障害者家族あるあるを話せて、「自分だけじゃないんだ」ととても心が楽になりました。状況が好転するわけではなかったですが、本当に話せて楽になったことを覚えています。

厚労省や文部科学省にはヤングケアラーの情報が載っています。例えば、文部科学省の最新の「ヤングケアラーに関する調査研究について」では、「家族の世話をしている」と回答した小学生は6.5%のようです。

ヤングケアラーの実態に関する調査研究」より


ヤングケアラーの実態に関する調査研究」より

べつに、「他にもいるんだ。君だけが苦しいんじゃないから、がんばれ!」なんて言う気は毛頭ありません。だけど、私がそうであったように、他にも似たような境遇の人がいると思うと、心が楽になることもあるでしょう。またそうした人がいるなら、なにか自分との共通点を見つけて、それにより状況を好転できないかを考えられるかもしれません。

情報を収集するくせをつけましょう

私の実家の階段には、兄のための手すりを取り付けました。もう30年以上前のことですが、父に聞くと全額自己負担したそうです。当時はどうかはわからないですが、今なら介護保険制度でも障害福祉でも「住宅改修」という助成があります。

この世の中は、「知らないと損」をすることが多々あります。昔と違い、インターネットでなんでもある程度調べることができるので、情報を収集するくせをつけたほうが良いです。
さきほど書いた厚労省や文部科学省でもヤングケアラーで検索すると無数の情報がでてきます。

厚生労働省HP」より
ヤングケアラーの支援に関する令和4年度概算要求等について」より

どういう支援、助成があるかを調べ、ご自分の市区町村の福祉課に相談することもできます。このほかにもSNSやYoutubeなどにも情報をあります(個人発信の情報なので、真偽を見極めることも必要になりますが)。

情報を収集するくせをつけ、UPDATEしていけば、必ずあなたの生活に役立ちます。これは必ずしてください。

将来を考えた場合、介護・障害福祉領域への進路はちょっと待って!

生活環境的に、介護や障害福祉への関心が高くなり、進路をそちらにと考えるのはもしかすると自然なことかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください!あなたの進路はあなたがやりたいことで決めるべきです。ヤングケアラーとして介護・障害福祉領域を身近に感じているあなたが、仕事でも同様の環境にするのは、もしかするとあなたの世界を狭めてしまう可能性もあります。

前述したように、私は今は介護・障害福祉に特化したエンジニアをしています。社会人から一貫してエンジニアはしていますが、30歳過ぎまでは介護・障害福祉に特化していませんでした。
エンジニアを志望した当時は、まだまだインターネットも一般的ではなかったですが、将来性も高そうだし、プログラミングもやってみたら面白かった。正直、エンジニアなら起業しやすいかも、在宅で兄の介護をしながらでも出来るかも、というのは後付けの理由です。
介護・障害福祉に特化するまでは、技術力を高めてより高い報酬を得ようとすることに注力していました。当時の私は「お金があれば、兄の介護もなんとかなる」という考えを持っていました。そんな私が介護・障害福祉に特化した理由は、単純に「仕事が無くなった」からです。当時はリーマンショックにより仕事が激減、単価も著しく下がる一方でした。このとき私は「お金を稼ぐのが難しいなら、知識やノウハウを得よう」と考えました。
私は子供のころから、兄との将来、老後に絶えず不安を感じており、もっと正確にいうと「兄との老後を過ごさないといけない自分の将来が心配」でした。そのために、お金や知識を得ようとした結果、現状は介護・障害福祉に特化したエンジニアになったに過ぎません。

あなたの人生はあなたのものです。介護をしている家族を大事に思う気持ちは大切ですが、あなたの人生を犠牲にする義務はありません。

そのうえで、介護・障害福祉領域に進路を考えるなら良いのですが、何をするかにもよりますが、例えば介護士など現場で働きたいのなら、慢性的に人手不足の業界ですので、ある程度の年齢になっていても、他業界に比べて比較的JOINするのは容易です。

第93回社会保障審議会介護保険部会 資料2」より

「ガツガツお金儲けをしろ」というつもりはないのですが、お金がないと救えない命があることも事実です。少なくとも若いうちは好きなことや、高い収入が得られる仕事に就いたほうが良いです。

まとめ

ヤングケアラーで悩み、苦しんでいる人は多くいるだろうと思います。それは私自身がそうだったからです。
そういった方達に本記事が少しでも助力となればとても嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございます! 家族や身近な人を介護している人に向けて、 介護福祉エンジニアとして有効な情報を共有できたらと思っています。 共感いただけたら、サポート頂けると嬉しいです!