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福島県のお米「天のつぶ」

福島市は一年を通して、日単位でみても寒暖の差が激しく、美味しい農産物が収穫できます。中でも、お米が美味しい!
今回は、毎回の食事、お弁当、給食にも必須なお米の生産者、ふくしまミラツクProjectで稲刈りを体験するカトウファームについてご紹介します。
カトウファームでは「天のつぶ」の栽培を始め、YellowBeerWorksというタップスペースを開設し、9月からクラフトビールの販売を始めています。

「天のつぶ」は倒状や穂いもちに強く、安定した品質と収穫が期待できる水稲新品種。 成熟期は「ひとめぼれ」と「コシヒカリ」の中間で、県内平坦部(標高300m以下)の栽培に適しています。(参考:うつくしまふくしま米情報センターhttp://www.f-kome-info.jp/tennotsubu/

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祖父から受け継いだ大笹生地区の田んぼ

 福島市大笹生地区は、山形県との県境に近く、最近では米沢へと抜ける東北自動車道のインターチェンジが開通し、道の駅の準備も進んでいます。米沢からの雪が流れ込みやすく、福島市内でも有数の積雪を誇る土地で、果物王国ふくしまの「フルーツライン」も有名な地。ふくしまの果物は、夏は猛暑で冬は厳しい寒さという寒暖差により、香りもよく甘さも際立つ美味しさで有名ですが、それはお米にもいえます。
 その大笹生にあるカトウファームは、福島市最大の農地面積を誇る米農家。もともと祖父の時代では果樹と米を作っていたそうですが、平成8年に福島市で福島北部地区経営体育成基盤整備事業という整備事業があり、前進の大笹生機械利用組合を設立。お米専門の農家となり、水稲栽培、作業委託を中心に請け負っていました。
 現社長の加藤晃司さんは、小さい頃から祖父の作業を手伝っていました。その中で、農業を継ぐということは違和感がなく自然に身についていたといいます。「祖父が『(体調がおもわしくなく)農業ができない』という流れのときに、今まで手伝ってきた感覚があったからこそ『継ぐ』ことを決意しました」(晃司さん)

「天のつぶ」を大笹生のストーリーとともに

 カトウファームは基本的に、夫婦と浪江から避難をしてお手伝いをしている長沼さん3人で広大な田んぼでの作業をしています。
 福島のお米は水が美味しいからこそ、とても良いお米ができます。カトウファームで作っている品種「天のつぶ」は福島県が15年かけて開発した品種で、甘みと粒ぞろいのよさでしっかりした食感が特徴です。絵美さんは大笹生という土地のストーリーとともに天のつぶを広く伝え続け、農業女子の代表としての活躍も幅広く展開しています。
 カトウファームの天のつぶは全て農薬5割減。通常の天のつぶの他に、コウモリの肥料を使った「天のつぶ 其の二」を商品化しており、コウモリの糞を使った良質のリン酸が大量に含まれた「バットグアノ」という淡路島の肥料と、牛の大腿骨を炭にした肥料をまいています。思いついたのはテレビで甘い玉ねぎをバットグアノで作っている農家のことを見たからということから使い始めたそうです。
 お届けする「たねまきうさぎの天のつぶ」は、出穂する頃に地元で採れたフルーツを使用した液肥と、ポリフェノールを含んだ海藻エキスを散布したお米です。
 社長の晃司さんが力仕事の多い作業担当、専務取締役の絵美さんが営業担当と役割を分け、県外へのイベント参加やプロモーションは絵美さんが駆け回っています。

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若手農家と一緒に「オーバーオール」を作り、クラウドファンディングに挑戦

 農業をこれから若い人であふれていくようなイメージで続けたいというカトウファーム。絵美さんが活動する中で繋がった人たちと、今年岡山のエブリデニムとのコラボで、福島県内の若手農家たちと一緒に、農業用オーバーオールを作るクラウドファンディングをしました。「農家がなぜオーバーオールをつくるのかって真面目に聞かれたら、自分でも本当よくわからないです。福島に興味を持ってくれる人が増えていく、確実に増えていくことが必要で、まずは一緒に組んだエブリデニムさんが、今まで福島を『知ってる』、ぐらいだったのが、『よく知ってる』に変化するのもすごい大きな進歩だと思うんですよ。さらに、エブリデニムさんのファンがまた福島をよく伝えてくれたりして(絵美さん)」さらに、このような活動の積み重ねで、日本中の方が福島に向いてくれることが嬉しいと語ります。
 そして今年から、福島の沿岸部南相馬でホップを作ることを始めました。南相馬で作ったホップをどこかの醸造所に委託して作ろうとも思ったそうですが、どうせだったら醸造所も作ってしまおうと、現在醸造所を建築中。海外のクラフトビールを試飲したり、東京や岡山でのビール造りの研修も重ねています。週末だけ醸造に参加したり、日頃の人間関係に疲れたときに少し手伝ってみたり、醸造所でできるコミュニティづくりもしながら、ビールの生産をしたいそうです。

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いち早くグローバルギャップを取得

 2017年12月、世界認定圃場の認定となる、グローバルGAPを取得しました。GAPとは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のことです。福島県内で認定する「FGAP」(各都道府県で認定あり)、日本国内での「JGAP」、アジア圏での「ASIAGAP」、そして今回カトウファームが取得した「グローバルGAP」の種類があります。生産者がどのGAPを認定してもらうかは、想定する販売先次第となります。カトウファームでは、ベトナム・ホーチミンに行きお米とおむすびを販売したり、海外での活動も積極的に行っています。出汁ソムリエの資格を取った絵美さんは、これからおむすびと出汁のような組み合わせを持って、「和文化」を世界や若い人に広めたいと夢を語ります。
 さまざまな試みの発案は絵美さんで、さらにそれをしっかりフォローするのが晃司さんの役割。子どもが4人という大家族ですが、絵美さんが家をあけるときには家族でフォローし合う仲の良さもカトウファームの魅力の一つです。将来は各部門のリーダーに子どもたちが立ち、福島の農業を盛り上げたいという加藤夫妻。お米の消費量が減っている中でも、日本と世界の食糧のバランスを考え、食料が足りない国のことも考えたいとグローバルな視点で福島の米づくりの先端で走り続けています。

 カトウファーム http://katofarm-f.jp
YellowBeerWorks https://yellowbeerworks.com

この記事は、「あづまっぺ。お米を食べる通信」2019.11号から一部引用しました

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