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都市・建築雑感

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都市と建築に関する雑記
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記事一覧

なぜ建築を競わせるのか?─『みんなの建築コンペ論 新国立競技場問題をこえて』

なぜ建築を競わせるのか?みんなを束ね、社会を高める建築コンペの価値を問いなおす。 *** 著者らは「白紙撤回」がなされた新国立競技場コンペに対し「なぜこの建築をつくるのか」が社会全体で十分に思考されなかったことに言及する. 本書では,新国立競技場コンペの経緯を解説した上で,これまで世界中で開催された代表的なコンペの分析を行う. 分析によるとそれらのコンペでは選定された案の「アイデア」が社会に広く共有され,時には議論や混乱を巻き起こしている(たとえば,ロシアからの独立直後

バーチャル空間で建築見学!─メタボリズム・クオンタイズド ~旧都城市民会館3D Digital Archive~ワークショップレポート

菊竹建築設計事務所が設計し、1966年に竣工した旧都城市民会館。 老朽化などを理由に、惜しむらくは昨年解体されてしまった本建物ですが、有志によって実測が行われデジタルアーカイブとして残されています(経緯は下記のnoteに詳しく書きました)。 本プロジェクトは第23回文化庁メディア芸術祭(以下、メ芸)のエンターテインメント部門審査で委員会推薦作品に選ばれるなど一定の評価も得た、これからのデジタルアーカイブ活用において先見的なプロジェクトと言えるでしょう。 この度、デジタルア

未来のファッションモール「アバターショーケース」を建築視点で見てみる

みなさん、FUKUKOZYです。 この度、バーチャライターとしてバーチャルマーケット4のワールド紹介の記事を書くことになりました。 来場者が会場に展示された3Dアバターや3Dモデルなどを自由に試着、鑑賞、購入できる、バーチャル空間最大のマーケットフェスティバルです。 バーチャルマーケットは、その開催を通じて「バーチャル空間を発展させ、豊かにする」ことを目指します。 バーチャルマーケット4のテーマは「パラリアルワールド」。物理世界とバーチャル世界を自由に行き来できるようにな

建築学生がチェックしときたい「新建築データ」掲載プロジェクト

建築専門誌「新建築」の2005年からの掲載プロジェクトの誌面が検索・閲覧できるウェブサイト「新建築データ」が5/14まで特別無償公開されています。 自宅待機で時間を持て余してるかもしれない建築の学生などはこれを機にじっくり眺めてみるのも良いかもしれません。 ただ、2005年からといっても閲覧できるプロジェクト数が3,000以上。何を見ればいいか分からないという方もいるかもしれません。 そこでまずは、建築業界の主要な賞で評価を受けているプロジェクトから見ていくのが良いかもし

バーチャルマーケット3の思い出─空間構成について

バーチャル空間上展示即売会「バーチャルマーケット3」が9/30で終わりましたね。 普段、VRChatはひとりでワールド黙々と巡っている僕は今回も自分のインスタンスに閉じこもって黙々と回っていましたが、非常に楽しかったです。黙々と回っていると、より一層ワールドの空間構成などに目がいきます。 そのあたりはいろいろ議論があったようですが、ロジカルに組み立てられていることが明かされたりと、ちゃんと思想が持ってつくられたことが表明されています。 こういうワールドがつくられるのはとて

建築の3次元デジタルアーカイブの未来はどこへ?─『旧都城市民会館』3DDAトークセッションレポート

菊竹建築設計事務所によって設計され,1966年に竣工した都城市民会館. 変わらない部分と社会の変化や技術の発展によって変わっていく設備などの部分を分け,屋根は部品化された部材を用いて,交換可能なものとして設計されたメタボリズムの思想が取り込まれた建築である. 鉄筋コンクリートの基壇の上に鉄骨屋根架構が載る特徴的な形態を持ち,まるで昆虫のような独特な姿が印象的だ. 旧都城市民会館の「残る部分」 竣工してすぐに掲載された建築専門誌『新建築』の解説で,菊竹氏は「残る部分」につ

建築は、浮かぶ、歩く、変容する─アーキグラム「建築を情報に還元する」

本記事はVR空間デザインコンテスト「VRAA01」のために執筆された記事を転載したものです. 「VR Architecture Award(VRAA)」では、 “Architecture” は狭い意味での建築ではなく、空間の「アーキテクチャ=構造・仕組み・設計思想」を表します。 ここ「知る」のページでは建築の世界の過去の試行から「Architecture」について考えてみたいと思います。 *** 建築界のビートルズ 建築とは、おそらく、われわれをとりまく日常の世界にたい

“Alles ist Architektur” すべては建築である

本記事はVR空間デザインコンテスト「VRAA01」のために執筆された記事を転載したものです. 「VR Architecture Award(VRAA)」では、 “Architecture” は狭い意味での建築ではなく、空間の「アーキテクチャ=構造・仕組み・設計思想」を表します。 ここ「知る」のページでは建築の世界の過去の試行から「Architecture」について考えてみたいと思います。 ●あるひとつの「世界」を想像、創造する試み “Alles ist Architek

「ノートルダム大聖堂をいかに再建するか──リノベーションの創造性を考える」五十嵐太郎×加藤耕一メモ

2019年6月4日にゲンロンカフェで開催された五十嵐太郎氏と加藤耕一氏によるイベントの内容メモ. ※筆者解釈なので、事実誤認等ありましたらご指摘ください 2019年4月15日(現地時間)に発生したパリのノートルダム大聖堂の大規模火災は、フランス国内にとどまらず世界中に大きな衝撃を与えた。 12世紀に建設が始められた初期ゴシック建築の傑作である大聖堂は、その美しさは勿論のこと、ナポレオンの戴冠式やユーゴーの名作『ノートル・ダム・ド・パリ』の舞台になるなど、建築的にも文化的

都市を味わい尽くす─『MOMENT1:-able City』

MOMENTはあらゆる地域・分野を横断しながら、新しい都市のあり方を探索する人たちのためのトランスローカルマガジンです。 *** シンク・アンド・ドゥ・タンク「Re:public」が新しくスタートしたローカルマガジン「MOMENT」を読んだので,軽く雑感を. 「トランスローカル」MOMENTの目指すところは新しい「都市」のあり方を目指す,ことであるらしい. 創刊にあたって寄せられた文章によると,インターネットやウェブによって世界の距離が縮まった一方,新たなクローズド

複数の世界を横断する─点群、自動運転、フォトグラメトリ、ゲーム

機械が認識するための世界、限りなく現実に似ているけど「楽しさ」を追求されるようになった世界、現実の雰囲気だけを取り出したような世界...etc 現在、私たちの肉体があるこの「現実世界」を起点として、さまざまなバージョンの世界が生み出されるようになっています。 世界が複数あることをきちんと認識し、それらをうまく享受しながら複数の世界を横断的に楽しむ、そんな時代がくるのではないかと思わされます。 最近、VRChatで体験してきたふたつの「ワールド」から、そんなことをゆるゆると

リアルとバーチャルの境界はなくなっていく─「第0回VR建築コンテスト」レポート最終回〜VR建築の未来をみる編〜

こんにちは。 FUKUKOZYです。 先日2018年12月16日に結果発表が行われ、大盛り上がりのうちに幕を閉じた「第0回VR建築コンテスト」の連続レポートを三編に渡ってお送りしております。 第一編「〜はじまるまで編〜」では、コンテストの企画から概要公開まで 第二編「〜はじまってから編〜」では、登録・提出受付始まってからワールド公開までを 追ってレポートしました。 ワールド公開後は「バーチャルお宅訪問」や「結果発表配信」など、提出している人もいない人も、皆が楽しめるよ

現れ始める「VR建築」─「第0回VR建築コンテスト」レポート〜はじまってから編〜

こんにちは。 FUKUKOZYです。 先日2018年12月16日に結果発表が行われ、大盛り上がりのうちに幕を閉じた「第0回VR建築コンテスト」。 前回の記事では、コンテストが公開されるまでのさまざまな検討を紹介しました。 今回は、登録・提出受付が始まってからを描く「はじまってから編」。 公開後も、質問対応や中間お宅訪問などさまざまな人に軽率に参加してもらえるように動いた運営チームの色々な努力をレポートしていければと思います。 2018年10月28日に満を持して公開された

軽率にやってみたらVRと建築が生み出す新しい未来が見えてくる─「第0回VR建築コンテスト」レポート〜はじまるまで編〜

こんにちは。 FUKUKOZYです。 先日2018年12月16日に結果発表が行われ、大盛り上がりのうちに幕を閉じた「第0回VR建築コンテスト」。 僕もこのコンテストの運営を末席で微力ながらお手伝いしていました(そして、しれっと作品も出しました)。 VRと建築が生み出す新しい未来に軽率に触れてみようとの思いで開催された本コンテスト。 運営メンバーや出展者の方々などさまざまな人が協力し合って、無事コンテストを終えることができました。 運営参加メンバー いつもは雑な備忘録