懐炉(KAIRO)

懐炉の熱がジョグの振動で極地に達しようとしていた。もう師走だというのに、私の首筋には汗が伝わっていて、呼吸の荒さは隠そうと思っていても顕著である。

何を隠そう、私は今。コンビニでマイペースに立ち読みをしていたら、学校に遅刻しそうになっているのである。

風邪気味な私の身体を案じていた昨日とは一転、私は今日、私を学舎に向かわせる選択をした。

走ると一時的に体温は上昇するが、また暫らくすれば体温はみるみるうちに奪われていく。まさに今がその状態だ。

体調が芳しくない我が身から逃げていく熱に釣り合おうとでもいうのか、背と腹に貼った懐炉が一点を集中して暖め続ける。むしろ熱いわ!!!と叫びたくなるほどに。

全身が冷えているのに各点のみが集中して熱い今の私の状態は、私自身の正確にもよく似ているな、と思った。

普段は眠ったように大人しい私だが、時に役割を持つと、魂に熱を帯びる。

そういう思考回路(KAIRO)であった。

そうして物事に取り組んできたのだった。
目標を遂行した後には、また元の冷めた私に戻る。熱しやすく、冷めやすい。これが私の性格であり、「今まで」であった。

「懐」炉の熱せられながら、私は私を「懐」かしむ。

#短編小説 #駄洒落

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