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指導記録(SOAP)の書き方 薬学生が抑えるべき要点

 薬剤師の指導記録の基本といえばSOAP形式の記録。多くの薬学生さんもその方式で記録を書くと思います。ただし多くの薬学生さんが思うことは「どうかけばいいんだろう?」ということ。

 なぜそう思うのか、「Sが患者の言ったことで、Oが内服とか検査値で、Aが評価で、Oがプランです」というのは情報として知っている。でも実際に書こうとすると書けない。それは実際の記録をほとんどの薬学生さんが見たことがないからです。例文で書いてあるのを少し見ただけ・・・。そんなレベルでしょう。
 また薬局や、病院でも書き方は違いますし、薬剤師ごとに書き方は異なります。「前の薬剤師はこう書けって言われたけど、違う薬剤師にはそれはダメって言われた」なんて薬学生さんの頭を悩ませることも。

 今回は薬学生さんに抑えるべきポイントや記録の例を書いてみました。
是非参考にしてください😊 

 

 

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1.最低限記載が必要な内容

 そもそも書かなければいけないことはどんな内容なのか?
 見ていきましょう。

<病院薬剤師の薬剤管理指導記録に必要な記載事項>
①.患者の氏名
②.生年月日
③.性別
④.入院年月日
⑤.退院年月日
⑥.診療録の番号
⑦.投薬・注射歴
⑧.副作用歴
⑨.アレルギー歴
⑩.薬学的管理指導内容
⑪.患者への指導及び患者からの相談事項
⑫.薬剤管理指導等の実施日
⑬.記録の作成日およびその他の事項

 かなりありますね。ただし①~③、⑥の診療録の番号は電子カルテであればあえて書く必要はないと思います。
 必要なのはその他ですね、それを順序良く書いていければ最低限算定は満たせるということです。

 ちなみにですが病院での薬剤管理指導は服薬指導もしくは薬学的管理指導を行った患者に対して週1回算定できます。
 1回あたり325点(3250円)、特に安全管理が必要な医薬品(ハイリスク薬)が投薬又は注射されている患者の場合380点(3800円)の算定になります。また退院時薬剤情報管理指導料は90点(900円)を算定できます。
 自分の指導が患者さんからお金をもらっていることも意識して、患者さんに有益になる指導をしていきましょう。

 

 

 

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2.どんな指導記録がいい指導記録なのか?

 これは自分の持論・・・というより先輩からの受け売りですが、いい指導記録とは何か? 必要事項や細かいことは置いておいて、ずばり、
「別の人(第3者)が見ても患者の背景がわかる指導記録がいい」です。
 
 当たり前のことかもしれませんが、他人が見て、何を飲んでいるのかわからない、書いた本人しかわからない、何をしたのかわからない指導記録はいい記録とは思えないですよね。第一にその記録は他の人が見てわかるのか?
それを意識して書くようにしてみましょう。
 つまり他人が見てわかるように書くということは、自分が患者さんのことを理解していないと書けないということです。

 

 

 

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3.主観的情報(S:Subjective)

 それではここから実際の各内容を見ていきたいと思います。まず最初の「S」主観的情報です。主に患者さんからの訴えを書く場所です。

<ダメな例>
 「わかった」「大丈夫」「調子はいいです」など薬学的に関係ないこと
 「昨日の朝は痛くて、とってもつらかったの、でももう大丈夫。今日は痛みがだいぶ落ち着いて散歩もしたの。今日は2000歩も歩いちゃった、汗かいちゃったみたい」などの取り敢えず会話をそのまま書きだす

 このような無意味なものや、ただ羅列するとまとまりがなく、わかりにくいですよね。特に学生さんは言ったことをそのまま書きがちです。
 また患者からほとんど発言がなかった場合なども困りますが、会話ができる人ならば少なからず引き出す努力はしましょう。

<いい例>
 「昨日から痛みは改善、歩行も可」:シンプルにこのくらいでもOK
 「痛み止めは何回飲んでいい?」 :質問でもOK
基本的に、①.薬剤管理、②症状・治療、③質問がいいと思われます。

 

 

 

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4.客観的情報(O:Objective)

 基本的に乗せるべきと思うのは、
①.経過
②.内服薬
③.点滴
④.検査歴
⑤.アレルギー歴
⑥.副作用歴

 +現病歴、既往歴、バイタルなどを載せてもいいでしょう。

 1個ずつ見ていきましょう。

①.経過
一例ですが・・・
<経過>
2022年4月1日 足壊疽で形成外科入院
2022年4月2日 アンプタオペ
2022年4月16日 急性腎機能障害にて腎臓内科転科
2022年5月1日 退院(〇〇病院へ転院)

 こんな感じで特にイベントがあった時は記載しておくとどういう経過をたどったかわかりやすいですね。

②内服
<内服薬>
ニフェジピンCR20㎎ 1錠 1日1回朝食後
フロセミド錠20㎎ 1錠 1日1回朝食後
アセトアミノフェン錠500㎎ 3錠 1日3回毎食後

4/17~
サムスカ錠7.5㎎ 1錠 1日1回 朝食後

<持参薬>
〇〇クリニック
継続
オルメサルタン錠20㎎ 1錠 1日1回 朝食後
ランソプラゾールOD錠15㎎ 1錠 1日1回 朝食後
ボグリボースOD錠0.2㎎ 3錠 1日3回 毎食前

中止
ポリスチレンスルホン酸ゼリー25g 1個 1日1回朝食後
沈降炭酸カルシウム錠200㎎ 6錠 1日3回 毎食直後

とこんな感じです。持参薬まで載せない薬剤師もいるとは思いますが、自分は載せた方がわかりやすいのでこんな感じでまとめてます。新しく始まった薬などはいつからなのか記載しておいてもいいですね😉

③点滴
悪い例
フロセミド点滴静注20㎎ 1A
セファゾリン点滴1gバック 1Kit 1日2回
フェジン注 1A 

 →羅列でいつ使ったかわかりにくいですね

いい例
4/1-14 セファゾリン1g 1日2回
4/3-7 フェジン注 1A  1日1回
4/16-20 フロセミド点滴静注20㎎ 1A/日

 →いつ使ったかわかりやすいことと、補液(生理食塩水やブドウ糖、1号液~4号液)などは理由がない限りあえて記載する必要はないと思います。

④検査値
悪い例
WBC:10000
RBC:340
HGB:8.2
INR:1.02
ALB:3.2
GOT:17
GPT:24
BUN:22
sCr:2.14
Na:142
K:3.6
Ca:9.8
CRP:8.45

 →いわゆる列挙しただけ、又は関係のない検査値をいれている。
 副作用に直結するものを載せるのはOKだと思いますが、必要ない検査値は避けましょう。


いい例
WBC:10000 上昇傾向
HGB:8.2 低下
ALB:3.2
BUN:32 上昇傾向
sCr:2.14 上昇傾向
Na:142
K:3.6
Ca:9.8
CRP:8.45 上昇

 →検査値がどう推移しているのか記載するのはいいですね。これでも載せすぎという人もいます。必要最低限で十分という考えの方もいるのですが、自分は副作用がないという意味で正常値も載せたりします。

また他の記載事項として
<培養>
4/2 創部培養 MSSA
等も載せておくといいですね。

<バイタル> 
HR:60 BP:150/75 BT:37.8 RR:16
SPO2:98(酸素投与なし)
BS:150-180-92

→これも当日よりどうなのか書いた方がいいですね
HR:60前後 変わりなし 
BP:150/75 やや上昇傾向 
BT:37.8 高値継続 
RR:16 変わりなし
SPO2:98(酸素投与なし)変わりなし
BS:4/1 150-180-92
 4/2 122-160-98


⑤.⑥.アレルギー歴、副作用歴
 ここは特に言うことはありません。
 しいて挙げるなら、どんな症状なのか、いつ出たのかなども記載しておくといいかなと思います。
 

 

 

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5.評価(A:Assessment)

 評価は記録で一番大切なところです。その中で良くない記録は、医師の記録を丸パクリすることや行った治療や事実を書くだけです。しっかりと薬剤師の視点で評価しましょう。問題点は疾患に関することだけでなく、コンプライアンスや服薬上の問題点でもOKです。

一例です

#足壊疽#疼痛#DM
 DMにて他院治療していたが、足壊疽にて入院しアンプタオペを施行した。オペ後の感染予防にCEZを使用。創部の培養からMSSAが出ておりCEZを継続する。現在WBC,CRP高値が続き、発熱もしているため、増悪に注意が必要。増悪した場合、抗生剤のescalationの検討が必要。

 疼痛はアセトアミノフェンでコントロールしており、軽度である。自己調節にて問題なく経過、肝機能の増悪なし。

ボグリボースの副作用確認 低血糖(-)、腹部膨満感(-)、肝機能障害(-)


#腎機能増悪
 もともと腎機能が悪い患者。オペ後腎機能増悪傾向である。電解質の異常はないが、K正常、Ca高値よりポリスチレンスルホン酸・沈降炭酸カルシウムは中止中である。明日腎臓内科コンサル予定。腎機能で薬物投与量を変更必要な薬剤は現在なし。

#高血圧
 オルメサルタン、ニフェジピン使用中。血圧はやや高値だが、SBP140-150で推移しており、問題はないと思われる。引き続き経過を確認し増悪するようであればニフェジピンの増量を検討。

#コンプライアンス
 持参薬を確認時、持ち込み数がばらばらであり、飲み忘れがあるとのこと。また患者は薬の内容を把握しておらず、薬の内容を説明し、アドヒアランスの向上を促した。また飲み忘れがないように指導していく。
 本人の理解度は高くないため、退院後はご家族の協力をお願いしていく。


 こんな感じでしょうか。自分は結構書きすぎてしまう方なのですが、さらにシンプルにする方もいます。ハイリスク薬は副作用にも注意してみていきましょう。

 

 

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6.計画(P:Plan)

 最後のプランは今後どうしていくのか、具体的なアクションを書きましょう。 特に治療プラン(Tx)診断・検査プラン(Dx)教育・説明プランEx(Ex)まで分けて考えられるといいです。学生さんはここまで分けずまとめて書いてもいいかもです。

 <Tx> 
 CEZ継続 
 アセトアミノフェンは痛みなくなれば中止検討

<Dx>
増悪するようであれば抗菌薬をescalation検討

<Ex> 
 コンプライアンスが低いため、来院中のご家族(妻)へ説明。内服薬の飲み忘れが多いことから、奥様からも声掛けをお願いした。お薬カレンダーの使用もおすすめした。退院時再度確認する。退院日は未定。 こんな感じです。 

 長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか? もちろん書き方はそれぞれあるのでそれを否定する気はありませんが、記載時の一例としてみていただければ幸いです💦

 最後に「患者の顔が見える記録を書きましょう😊」


https://youtu.be/SK1gikh2ejg

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