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アンサングシンデレラ10巻発売   葵は実習生とどう向き合うのか

 今回は石原さとみさんが主演でドラマ化もした、「アンサングシンデレラ」の第10巻が4/20発売されたので、その感想と実際の病院と違うのかについて話していきたいと思います。

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⚠️注意⚠️
 今回はアンサングシンデレラの内容に触れます。なるべくぼかしてお話ししようとは思いますが、まだ読んでいない方ネタバレが嫌な方はこれより下は読まないでください😌

1.あらすじ


 『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』は、荒井ママレさんによる漫画です。『月刊コミックゼノン』(徳間書店→コアミックス)にて、2018年7月号より連載中です。

 病院薬剤師の主人公が、自身と薬剤部のメンバーを中心として、医師、看護師、外部の薬剤師などの医療に関わる役割の人物との間に起こる問題に向き合っていく内容です。

 タイトルにある形容詞のアンサング(unsung)とは、日本語で「讃えられない」の意味です。2020年7月16日から、石原さとみさん主演でテレビドラマ化されました。

 今回10巻の内容は主に実習生の内容です。9巻では葵が務める薬剤部に初めて実習生が2人(男女)が来ました。女の子(ひまり)は気弱で自信がない、男の子(夏央)の方はそつなくこなすタイプでありながらもやる気はなく、「ほどほどに頑張ろう」というような感じでした。しかもこの2人は付き合っています。
 ひまりは内分泌内科の病棟を、夏央は婦人科病棟を担当することになりました。ここで9巻は終わっています。

2.登場人物

葵みどり(あおい みどり)
 本作の主人公。主に小児科を担当しており、快活で物怖じしない性格。チャームポイントは頭の高い位置にふんわりと大きめに作ったおだんごヘア。ドラマ化で主演の石原さとみさんもこの髪型でした🥰

 優れた味覚と嗅覚を持っており、僕から見ても以上です😂

瀬野章吾(せの しょうご)
 主任薬剤師。5年前に転職してきた。愛想がいいわけではないが、実直で堅実な仕事を心掛け、主人公葵に信頼される先輩薬剤師。
 ドラマでは田中圭さんが演じました。

刈谷
 ベテランの薬剤師。以前は調剤薬局で店長をしていた。生真面目な性格で整理整頓を徹底しており、薬剤部で管理する余剰在庫を最小限に抑え、経費削減の成果を収めている。

豊中
 
救急救命部に所属する救急看護師。瀬野や葵のことを評価している。
今回の実習生の話には関係ないのですが、僕の病院でも共感できるところがあったので後でご紹介します。

丸川 ひまり
 実習生の一人。自信がなく、おどおどした性格。病院薬剤師にも興味はないが、実習自体は真面目に取り組む。患者にも真摯に向き合っている。

室井 夏央
 実習生の1人。婦人科を担当し葵と共に指導する。医者の兄を持ち、薬剤師である自分にコンプレックスを持つ。実習自体もやる気はなく(実習自体は優秀でそつなくこなす)、「ほどほどに頑張ろう」とひまりに言うシーンもある。

⚠️注意⚠️
 改めてここからはネタバレ含みます。ご注意ください

3.実習生ひまりの場合

 今回10巻のメインは夏央の方なのですが、ひまりの方もとてもいい話だったのでご紹介します。
 今回ひまりは糖尿病患者のインスリン指導を行うことになりました。自信のないひまりは家で枕を患者に見立てて練習します。夏央からは「(練習なんかしなくても)大丈夫でしょ」「治療がうまくできなかったら自己責任でしょ」と言われます。
 実際に指導は緊張しながらも、患者さんからは優しい声がけもあり無事終了。
 その後患者さんの数値はよくなっているものの、謎のめまいやだるさがありました。ひまりは毎日通い、インスリンの手技を確認しながらもめまいやだるさについて調べました。患者さんも仕事からかだんだんと気持ちが落ち込んでしまっていましたが、ひまりの励ましで少し元気を取り戻します。

 最終的に彼女のひらめきで患者さんのめまい・だるさの原因をみつけ、解決し患者さんは無事退院します。
 ここでは自信がなくコミュ力に不安を抱えていた彼女の成長が見えます。特に真面目な性格もあり患者と真摯に向き合うことで、治療をより良くできることを学んだことが彼女の成長へとつながったと感じました。

 特にここで感じたのは実習生の実習態度です。
 僕は実習生は遠慮せずどんどん指導もして、患者さんとの会話になれるのが必要だと思っています。これは僕もコミュニケーションが苦手で、実は病院実習では1~2回くらいしか指導ができず、いざ働いたらなかなか指導に苦戦した苦い記憶からも来ています。

 特にひまりの担当薬剤師からの言葉で、
「わからないことは素直にわからないという」
「さばく数(ここではおそらく薬剤部から課されている指導数ノルマ)を考えずに患者に時間を割けるのは今しかない」
「薬剤師の仕事は事なかれ主義でもある程度成立していまう。自分が1歩踏み出さないと何をすべきか見えない」
 
 これには僕もぐっとくるものがありますね。
 まず実習生の時、「わからないことを聞かれたらどうしよう」、「わからなかったらどうしよう」と考えてしまいます。僕も先輩から言われましたが、わからないことはわからないと言う。それで後で調べればいい。
 本当にその通りで当たり前のことなんですが、なかなかできないんですよね。最悪実習の時はわからなければ担当薬剤師が対応してくれるので積極的に指導してほしいと僕も思います。

 次に時間を考えずに患者に時間をかけられるのは今しかない、ということですが、本当にその通り。病院薬剤師は少なからず病院運営を維持しなければなりません。指導で点数を稼いだり、調剤はなるべく早く片付けなければいけなかったりとやることがたくさん。そのため1人の患者に割ける時間はかなり少ないです。実習生にはそれがありません。なので今回みたいに毎日患者の部屋に訪問できたりするわけですが、実習の時に時間をかけて調べたりすることの大切さを学んでほしいですね。

 そして薬剤師は事なかれ主義でもなんとかなる。ということですが、これもその通り。薬剤師が何もしなくても治療は終わるし、薬剤師が何もしないで何かあっても薬剤師には関係ない。責任が薄いと言ってもいいかもしれません。しかし担当薬剤師が言うように自分が1歩踏み出すことで患者さんの治療をより良くすることができます。本当に気づかれませんが、薬剤師によって処方間違いや、副作用を未然に防いでいることはよくあります。
 僕も今後の薬剤師は調剤や疑義照会だけする薬剤師ではなく、提案できる薬剤が大切だと思っています。事なかれ主義にはならないように気を付けないとですね。

 めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、続いて夏央についてご紹介します。

4.実習生夏央の場合

 夏央は前回9巻で患者から怒られてしまうシーンもありました。また知り合いが婦人科で入院し、出産ということで知人からはよろしく頼むと言われるシーンも前回はありました。
 しかしその知人の奥さんは子宮内胎児死亡(ICFD)となりとてもショックを受けます。ちなみにプレグランディン膣錠というとても特殊な薬を使いました。「こんな時どうすればいいか教わっていない」と困惑し、知人と会うことはありませんでした。
 もう一人受け持つ患者で妊娠性痒疹に悩む人には「どうしようもない」と言って患者さんを突き放すような言動をとってしまいます。
 看護師からは葵と一緒に怒られ、葵と面談します。そこでは「なんで僕は産婦人科担当なんだ」「男が出産の不安なんて本質的に理解できない」と言ってしまいます。
 葵からは「自分がわからないからって行動しないのは逃げだよ」と言われます。
 なんと夏央はこれを機に実習に来なくなってしまいます。
 (やばいですね、今はどうか知りませんが、僕の時はインフルエンザでも合計で10日か2週間休んだら単位取れないと言われていました)

 その後夏央に兄が会いに来ます。ここで夏央は医師の兄に今までのコンプレックスや実習中の出来事について打ち明けます。兄からは「自分を認めてもいいんじゃないの」と言われ実習へ戻ることとなりました。

 戻ってから最初に瀬野と刈谷から面談を受けます。そこでは学生であり、無事実習を終えることだけを優先してもいいと言われます。しかし夏央は自分が薬剤師という仕事に向き合っていなかったことを反省します。自分と向き合うために今まで通り実習を続けることとなりました。
 その後は知人とも会い自分が力不足であることを自覚しながらも、知人(夫側)が気持ちを抑えがちなことを考え、何かあれば自分を頼れと言いました。今までの彼なら出ないセリフですね。

 その後の症例報告会の資料作成では遅くまで居残りして作成する姿に、ひまりからも「あの夏央が残っている」と驚かれるシーンもあります。発表会も無事終わり打ち上げして終了となりました。

 今回はこの夏央君の成長が見えますね。まぁやる気を出したというのが正しいかもしれません。やはりやる気は大切です。僕も下手に知識を持っているよりやる気があるこの方が教えがいがあるなぁと思ってしまいます。

 まず最初からですが、知人の奥さんがICFDとなり、実習生がショックを受けないわけがないですね。これはなかなかのイレギュラーケースです。薬剤部としても彼のメンタル面に関してはフォローすべきところかもしれません。
 しかし別の患者で突き放すような対応はよくないですね。確かに、もうどうしようもないってときはあるのですが、それも言い方ですね。看護師からも怒られていましたが、あきらめるような言い方はよくないです。
 そしてなんで男性が婦人科なんだということですが、これは僕もわかるところがあります。もしかしたらいろんな病棟を回っているとは思いますが、やはり男性が婦人科というのはなかなか触れにくい領域なんですよね。

 そして実習に来なくなってしまう・・・ということですが。そんなこと実際あるの? と思ってしまうかもしれません。僕も普通ないと思います。
 しかしです、実はあるんです。僕の病院でも実習生が途中でいなくなるなんてことがありました・・・(その時はかなり焦りました)。中には薬剤師ともめて途中で別の病院へなんてこともあるみたいですが。
 彼は立ち直った後は、良かったですね。ヤンキーが雨の中猫を拾うような話かもしれませんが、真摯に向き合う姿勢は感動しました。

 また長くなりましたが、最後に葵の言った
・学び続ける姿勢
・正確な技術
・責任ある行動
・患者さんの人生に関わるという覚悟
これが医療従事者には必要というシーンは、感銘を受けます。(本当に)

 仕事が忙しいと、学ぶ時間が確保できない、時間がないと業務が雑になって間違えたり、なかなか責任ある行動というのも難しいですね。
 しかし患者さんの人生に関わるという覚悟は、仕事だからというだけでなく、自分の行動が患者の人生を変えるかもしれないという覚悟をもって挑む姿勢が大切だと再認識しました。

5.当直について


 最後はちょっとした話ですが、当直についてです。この話はめちゃくちゃ同感しました。
 よく当直明けなんです。というと「薬剤師も当直あるの!?」と言われるのですが、病院ではあります。当然ない病院もあります。
 病院で働きたいかどうかという時に夜勤があるかないかもかなり重要なポイントとなります。
 ちなみに当直と夜勤がありますが、別物です。葵たちは当直ですね。
当直は、基本的に朝~翌日朝まで(葵は朝8:30~翌日朝8:30まで)
夜勤は、夕方~翌朝まで(僕の病院では16:30-翌日朝9:00)まで

手当とか、振替休日とかいろいろあるのですが、今回は関係ないので省略します。また改めて夜勤業務についてお話はしたいと思います。

 まず当直ですが、マジでやばいです。基本的に非常事態の対応。いわゆる電話が鳴ったら対応ぐらいのイメージ。昔調べたら業務時間の2割くらいを実労働時間となるような勤務を当直というようです。なので労働基準法にも当たらないとなっていますが・・・これは実際とは異なります。
 入院患者の処方・点滴に、救急外来の対応までを1人でするので正直日中業務と忙しさはさほど変わりません。しかも1人しかいないので寝れないことも多々あります。そしてこの手当がめちゃくちゃ安い。葵の病院は知りませんが僕の病院は最低レベルです。
 ちなみにカップ麺食べようとお湯を入れたら呼ばれて、戻ったら面が伸びるというのはあるあるです。僕は夜勤中にカップ麺は食べないようにしました。
 
 そして今回あったのは病棟から点滴を作ってほしいと電話があったにもかかわらず、すぐに救急外来に呼ばれてしまい、そのまま払い出すのを葵は忘れてしまいました。看護師から責められますが、ここで登場するのが優秀な救急看護師の豊中さん。葵のことは「ミドリン」と呼んだりもします。病院薬剤が忙しいことを伝え、同じ病院の仲間として協力しようと話します。

 これが本当に同感なんですが、まず病棟から急ぎでもない点滴の電話を頻回にされ、忘れたり、間違ったりというのは多々あります。当然忘れたり・間違える方が悪いのですが、この理解がある看護師とない看護師でだいぶ違いますね。もちろん病棟の看護師も大変だと思いますが、互いに協力し合いたいですね。
 そして豊中さんうちの部署にほしい。

長々となりましたが、アンサングシンデレラとても面白いですし、薬剤師としては同感できる部分が多々あります。かなり現実に沿っていると思います。また薬学生さんもためになるので是非読んでほしいです。

それではまた😄
 


最後まで見ていただいてありがとうございます。 もしサポートいただければ、今後の活動の経費にあてたいと思います。よろしくお願いします😊