![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/24031506/rectangle_large_type_2_bfa52572ce3a54986ce73bfa492d9a5d.jpg?width=800)
世間の正義がけして自分を救わないと知っている主人公『エル ELLE』(2019)
おっっっっっもしろかったぁぁぁぁぁ。
けど、これは感想が書きにくい。。
しかしまぁとにかく面白かった!
四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1844
以下、思いつくままに。
ある出来事が起こった時に湧き上がる感情は1種類じゃない。
ある人にとっては、怒り4割、悲しみ3割、同情2割、喜び1割かもしれない。
この映画の主人公は単純な感情表現をしない。
常に複雑で意外。
しかしそれが普通の人間。
おそらくこの主人公に100パー共感しながら観られる観客はいないと思う。
あるシーンではこの主人公に8割共感し、あるシーンは2割だけ共感したりする。
たしかにこの世のものとは思えない話が展開するけど、登場人物の心情は「全く理解できないもの」ではないはず。
***
この映画では「レイプ」が一番センセーショナルだけど、それ以外にも人生を揺るがす事件はたくさん起きる。
様々な事件が起きた後のセリフや行動は、主人公以外の登場人物もみんな普通じゃない。
どれも「不謹慎だ!」とネットが炎上しそうなものばかり。
カフェで主人公に残飯を浴びせる人や、主人公の母親に車からピザを投げる人がきっと「不謹慎だ!」とネットに書く人だろう。
レイプに遭った女性は突然「女性代表」「時代代表」「正義代表」を背負わされちゃう。
レイプに遭ったらこうすべきという期待を押し付けられて、それをしないと反社会的だと攻撃される。
***
信仰の話でもあった。
この事件の大元は、信仰心を裏切られたことから始まる。
そして最後、信仰心があることで救われる人と、それを薄ら寒く見る人。
映画全体として〝信仰〟に疑いを持つ感じだったと思う。
***
監督のポール・バーホーベンは、
「幼少期を第二次世界大戦下のオランダのハーグで過ごした。その中で、自分達オランダ人の味方であるはずの連合軍がナチスの軍事基地があるハーグを空爆し、死体が道端に転がっているという日常を過ごしてい」たとのこと。
ハーグの空爆を決断した連合国にも彼らなりの正義はあっただろう。
しかしその正義によって、味方のオランダ国民が殺されていった。
監督はそれを見てきた。
***
主人公は自分がレイプに遭ったことを突然友人との食事会でサラッと話す。
何を期待してそれを話し出したのかはわからないけど、
友人が決まりきったように「警察には?」とか「体は大丈夫?」などを聞いてくる。
レイプに遭った翌日普通に出勤して病院に行って性感染症の検査をした主人公にとっては友人たちのリアクションは期待はずれだった。
だから「言わなきゃよかったわね、ごめんなさい」と話を切り上げる。
主人公が何を期待してこの話をし始めたのかは僕にはわからないけど、「そんなレベルの会話したいんじゃないし、そういえばあなたたちにそれを期待してもムダだったわね」と主人公が思ったのは僕にもわかる。
***
社会の正義が、世間の正義が、けして自分を救わないと知っている主人公だからこそ、あれだけ自立して毅然として自由に生きていたんだとなと思う。
観たことのない人間像だった。
***
だいぶコメディ風味効いてます。
出産シーンなんか観客みんな大笑い。
お母さんも面白いし。
なおかつ全体的にはずっと緊迫してるから、窓がバンッと開くたびにみんな体がビクってなってた。
イベント映画みたいな感じ。
四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1844
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?