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ゲイを公表した俳優たちが総出演 名作リメイク『ボーイズ・イン・ザ・バンド』(2020)ネタバレあり

The Boys in the Band。 Bandは絆という意味。


ボーイズ・イン・ザ・バンド(2020年製作の映画)
The Boys in the Band
製作国:アメリカ / 上映時間:121分
監督
ジョー・マンテロ
脚本
マート・クロウリーネッド・マーテル
出演者
ジム・パーソンズ ザカリー・クイント マット・ボマー アンドリュー・ラネルズ チャーリー・カーヴァー


「僕たちがこんなにも自分たちを嫌わないでいられればいいのに。そうなれれば楽なのに。」


お前らみたいなもんは自分を憎みながら死んでいけっていうメッセージを発していた映画を先日観て
まだ心が呪われたままだったので

こう言う映画を見て浄化できるのはありがたい。

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主要人物9人を演じるのが全員ゲイの俳優さんなんですね。

マット・ボマーとジム・パーソンズがゲイを公表してるのは知ってたけど
そう言えばザカリー・クイントもかぁ。

他の人たちも自然だなぁ上手いなぁと思ってたら
他の6人もそうなんですね!


なんかすごいですね、アメリカは。。

『真夜中のパーティー』(1950)のリメイクやるぞ!
っつって
全員ゲイの俳優でやるぞ!
っつったら

ちゃんとスター俳優が3人集まるし
他の俳優さんも演技がうまくて見た目も良い人をちゃんと揃えられる。。


スター俳優がゲイを公表して
それが成功して
後に続く才能が現れて
どんどん層が厚くなって
こんなにも豊かな作品を作ることが出来る。。。


まずはこの事実が持つパワーがすごい。。


進むべき道を照らしている。

先日見た映画と大違い。

先日観た、
「社会規範から外れた人間はみな非業の死を遂げる映画」とは大大大大違いっ!

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「オカマが自殺するとは限らない。芝居とは違う。」


「既婚者は必ずノンケ?」


今作は1968年の舞台、
1970年の同名映画『真夜中のパーティー』のリメイクとのことだけど、
話自体が今でもほんとに面白い。


前半キャンキャンキャンキャン喋りまくるのはちょっと辛いけど、、
電話ゲームが始まってからの地獄展開が良いですね。


主人公はゲイである自分を憎んでいるマイケル。
そのマイケルが電話ゲームを仕掛ける。

ゲイを謳歌してる男を痛めつけたいし
ゲイを隠してノンケのフリして生きてる男も暴きたい。

とにかく自分がゲイなのにゲイを苦しめたい。

なぜなら自分がゲイであることに苦しんでいるから。

普通に生きてたり、
ましてや幸せそうにしてるゲイが憎い。

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もとの『真夜中のパーティー』(1970年)は観ていないのですが、

80.03.05放送「真夜中のパーティー」 https://youtu.be/k3AoCpiDq08
 ↑ ↑ ↑
大塚隆史さんが1980年のラジオ「スネークマンショー」でパーソナリティーをやられていた時の録音を聴きますと、

大きな改変はないようですし
割と寂しい感じでラストも同じようですね。

ただ今回のラストは
パーティーが終わった各人の様子をコラージュで見せていくんですが
なかなかそれぞれに含みがあって面白い。


とくに
マット・ボマー演じるのドナルドはソファで本を読むんですけど
それが女性解放運動の本なのです。

それを読んでスッと部屋の外を見る。

「僕たちゲイもまだまだ大変だけど、彼女らもどうだろうか?」とこの部屋の外にいる〝女性たち〟へ視線を送る。

こんな繊細な演出も元の映画にあったんだろうか。
やっぱ観てみないとなぁ。

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字幕担当者の力量(愛?)もすごい。

電話で
ハローって3回繰り返すだけなのに

1回目は
もしもし

2回目は
デルバード(相手の名前)

3回目は
ねえ

ものすごく登場人物の感情に寄り添った訳。

素晴らしい。
ありがとう。



ラストネタバレは以下に。


マイケルは、アランは大学時代の友人ジャスティンのことを愛していたと主張。

マイケル「ジャスティンは言っていた。アランと何度も寝たことがある、と」

アラン「それは嘘だ」

マイケル「今ジャスティンに電話して、愛してると言え」

アランは電話をかける。

そしてアランは電話に出た相手に「愛してる」と言った。

マイケルは受話器を奪って
「ジャスティン、聞いたか!このクソ野郎は君のことを愛してる、と…」

しかし、電話の相手はアランの妻だった。
アランは妻に電話して「愛してる」と言ったのだった。

アランは電話を切り、部屋を出ていく。

ハロルド「マイケル、君はゲイである自分を憎んでいる。どれだけ神に祈ろうとも、カウンセリングを受けようとも、君は永遠にゲイだ。死ぬまでずっと。」

ハロルド、カウボーイと一緒に退出。
タクシーでいい雰囲気のふたり。

エモリーとバーナードも退出。
バーナードは電話をしたことを後悔している。
コーヒーショップでふたりでコーヒーを飲む。
エモリーが鼻血を流す。

マイケル、パニックになる。
ドナルドがマイケルを抱きしめる。

マイケル「誰の言葉だっけ。〝幸せなゲイがいるとしたらそれは死んだゲイだ。〟」 

ドナルド「そんなの誰が言ってた?」

マイケル「僕たちがこんなにも自分たちを嫌わないでいられればいいのに。そうなれれば楽なのに。」

ドナルド「わかるよ」

ドナルド「アランはどうして泣きながら君に電話してきたんだろう」

マイケル「父が死に際に言っていた〝人生が分からない〟」

マイケルは一人で深夜のミサへ。

ハンクとラリーは仲直りしてセックス。

アランはバーで一人、頭を抱えつつ酒を一口飲む。

ドナルドはソファに寝転びながら本を読む。
1962年に出版されたドリス・レッシングの「ゴールデンノートブック」。
女性の自立をテーマにした作品で女権拡大運動のバイブルになっていた、とのこと。

ドナルドは本を読みつつ、窓の外に目をやる。
苦しいのはゲイだけじゃない。
この部屋の外にいる女性たちもだ。

マイケルは、ここにはこたえはないとばかりにミサを早々に抜け出し、夜の住宅街を走る。
道の真ん中を走る。

終わり

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