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本を売ってくれない

「平積みの新刊しか買わない」という人なら書店に行って求める本がない、ということはまずないでしょうが、自分のような周回遅れの読者は、むしろ店頭にないことのほうが多いです。

しかたなくネット書店で探しても在庫なし、古書だとびっくりするような高値になっており、あきらめて地元の図書館HPで検索すると一発でヒット、予約をかけて翌日には借りられた、ということもしばしばです。

お金を払いたくないわけではありません。むしろ買う気満々だったのですが、結果的に「読みたい本を読める状態にしてくれる」のは図書館が一番早かったのです。

書店に限らず、お店一般の傾向として、お店側が売りたいものを売りつけることには熱心でも、こちらが探しているものを入手してくれることにはあまり熱心ではないようです。店頭にない本の取り寄せを提案されることもあまりなく、こちらから依頼しても図書館より時間がかかります。書店からすると手間ばかりかかって益がないので店頭にあるものを買ってくれという気持ちなのかもしれません。最近の本は出版後数年でもう入手困難になることが多く、「品切れ重版未定」だったりするとさらに絶望的になります。

自分が図書館員として、利用者の求める本が自館に所蔵されていないときは必ず次の提案はするようにしています。
「○○図書館(他館)ならありますが取り寄せますか?」
「購入希望のリクエストを出しますか?」
その際利用者がどの程度急いでいるのかを確認して(明後日のレポートに間に合わせたいとかよくあるのです)、最短の方法を考えます。実際には「そこまでしなくていいです」となることも多いのですが、とにかく「ありません」「わかりません」で終わらせてはいけない、とは現場でよく言われます。図書館員はけっこう草の根分けても探すので、本館になければ分館、県立図書館や近隣自治体の図書館、勤務先所在地の図書館、専門書なら大学図書館に紹介状を書いてもらうことまで視野に入れると、どこかしらには所蔵があることが多いです。自館で持っていない資料を融通しあうために相互貸借のネットワークを組んでいます。

出版社などから「図書館が無料で貸すせいで本が売れない」という批判は昔からあるのですが、自分からすると「買ってあげたいのはやまやまなんだけど、売ってくれないんだものなあ…」という感じです。せっかく本を買おうと思ってお財布持って書店に来た顧客をむざむざ図書館に横取りされてしまうのは、単に「無料だから」ではない図書館側の努力と強みがあることをわかってほしいな、と思います。

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